日本郵政グループ JPデジタルが牽引する「みらいの郵便局」構想とは | キャリコネニュース
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日本郵政グループ JPデジタルが牽引する「みらいの郵便局」構想とは

JPデジタルは、2021年に日本郵政グループのDX部門を担う会社として誕生した新会社。今回は、日本郵政グループが掲げる「みらいの郵便局」構想の全体像や、日本郵政グループ内でのJPデジタルの役割について聞いた――飯田恭久代表取締役CEOにお話を伺った。
(以下、敬称略)

株式会社JPデジタル
代表取締役CEO
(日本郵政株式会社常務執行役 グループCDO)
(日本郵便株式会社常務執行役員 DX戦略担当)
飯田恭久 
●プロフィール――いいだ・やすひさ 日本郵政 常務執行役・グループCDO、日本郵便常務執行役員DX戦略担当、JPデジタル代表取締役CEO。米国留学後、世界No.1のグローバル企業ジレット社、ウォルト・ディズニー社で日米を跨いでマーケティングに従事。ダイソン社の代表取締役として、日本におけるダイソンのブランディングを確立。楽天グループの上級執行役員に就任、楽天USA社長などを経て、日本郵政グループへ。

株式会社JPデジタル
代表取締役CEO
(日本郵政株式会社常務執行役 グループCDO)
(日本郵便株式会社常務執行役員 DX戦略担当)
飯田恭久 
●プロフィール――いいだ・やすひさ 日本郵政 常務執行役・グループCDO、日本郵便常務執行役員DX戦略担当、JPデジタル代表取締役CEO。米国留学後、世界No.1のグローバル企業ジレット社、ウォルト・ディズニー社で日米を跨いでマーケティングに従事。ダイソン社の代表取締役として、日本におけるダイソンのブランディングを確立。楽天グループの上級執行役員に就任、楽天USA社長などを経て、日本郵政グループへ。

――最近、郵便局のアプリがすごく使いやすくなっていると思います。

飯田 そういっていただけるとすごくうれしいです。新しい「郵便局アプリ」は、2023年10月にリリースされ、本格稼働したばかりです。現在は郵便局のサービスで利用頻度が高い郵便・物流を中心としたサービスを提供していきますが、段階的に日本郵政グループ各社のサービスをワンストップで提供できるアプリを目指しています。

その他にも、日本郵政グループ共通ID・顧客管理基盤を作りました。現状ではID体系はまだバラバラですが、IDの1本化を目指しています。郵便配達関連や窓口業務の連携はもちろん、ゆうちょ銀行や、かんぽ生命保険などのグループ内の主要なWEBやアプリも1つのIDで管理を行うことを可能にし、便利な機能を増やしていきたいと考えています。

――飯田CEOご自身がキャリアチェンジで日本郵政グループに来られたとお伺いしていますが、その理由についてお聞きかせください。

飯田 私が日本郵政グループに来たのは2021年4月です。その3ヶ月後の7月にJPデジタルが誕生しました。JPデジタルはまだ新しい会社でもうすぐ設立3年目を迎えます。

私の場合、米国に留学して以降、海外での仕事が半分以上でした。普通だったら次の転職先も海外案件や外資系企業へとなるかと思います。しかし、海外に長くいたからこそ、日本人としてこの国の役に立ちたいと思いました。

郵便局は日本で生活している人にとって、とても身近な存在です。そういった身近な存在をよりよくすることに「大義」を感じたことが、日本郵政グループへのキャリアチェンジの一番大きな理由です。

「デジタル郵便局」から「みらいの郵便局」へ

――日本郵政グループのDXについて教えてください。

飯田 日本郵政グループとしては、2023年5月には、中期経営計画「JPビジョン2025」が発表となり「リアルの郵便局ネットワークとデジタルとの融合による新たな価値創造」「グループ一体での DX の推進」という目標が掲げられましたが、現在、この中期経営計画の見直しがあり、アップデートされる予定になっています。

大きなところでいうと、「JPビジョン2025」では「デジタル郵便局」という表現を使っていたのですが、「デジタル郵便局って何?」という声が多くありました。まさに先ほどお話した「郵便局アプリ」などを指しているのですが、少しわかりにくい表現でもあったかもしれません。そういったことから「みらいの郵便局」という伝わりやすい表現に変更し、ビジョンをさらに明確にしていきます。

「日本郵政グループのDXとは何か、わかりやすく社内外に伝える必要があると日々感じています」と飯田CEO

「日本郵政グループのDXとは何か、わかりやすく社内外に伝える必要があると日々感じています」と飯田CEO

――日本郵政グループといえば、大半の方は郵便局をイメージされると思いますが、それについてはいかがですか。

飯田 郵便局は150年以上この国で続いており、全国2万4000か所あるユニバーサルサービス、インフラの1つ、日本で生活する人々にとってなくてはならない身近な存在であることは、今までもこれからも変わりません。

その一方で、郵便局と聞いただけで、「窓口に並ばなきゃ!」と長蛇の列をイメージする人も多いのが現実です。いまだに紙の手続きが多いという実態もあります。一部の方にとっては昔ながらの郵便局の方がいいという意見もありますが、アクティブ世代の方にとって郵便局は「できれば行きたくないところ」になっています。これはとても残念なことです。

そのような中で、昔ながらのいい部分は残しながら、時代に合わせて進化、アップデートさせていくという姿勢を伝えたいという思いを込め、「みらいの郵便局」という表現が生まれそれに向かって取り組んでいます。

大手町郵便局を新施策の実証実験郵便局に
https://jp-digital.jp/business/1338/

大手町郵便局を新施策の実証実験郵便局に
https://jp-digital.jp/business/1338/

そこで、私たちがなすべきことは、郵便局にやってくるお客さまの顧客体験価値を徹底的に高めることだと考えます。リアル店舗つまり人に強みがある郵便局にデジタル手段を掛け合わせることによって、今不便に思われているマイナス部分をスマートにDX化することが重要だと考えています。

https://jp-digital.jp/business/

https://jp-digital.jp/business/

――まさにこれがJPデジタルが今取り組んでいる「顧客起点のDX」ですね。

飯田 その通りです。ご存知の通り、いわゆる公社、官公庁としての歴史が長いため、上意下達を重んじる体質が今も少なからず残っています。そのような中、民間の一企業として他の企業以上にお客さま視点でものごとを考えなくてはならないと考えています。そのような背景から顧客起点のDXは生まれました。

また、日本郵政グループには40万人の社員がおり、国内最大級の人員を抱える巨大組織でもあり、社員の1人ひとりの働き方も大きく変えていく必要もあります。今、宅急便を扱う会社で深刻な問題になっている「再配達問題」もあり、そういった部分にも積極的にDXを取り入れ、効率を高め改善していく必要があります。

この「顧客起点のDX」と「社員の働き方変革」を両輪だと考え、「顧客起点のDX」を実現するために、自社のDXも推進していきます。

――「顧客視点のDX」を実現するためにJPデジタルが誕生したというわけですね。

飯田 3年前、民間企業から私が日本郵政にやってきた時、日本郵政本体ではDXは様々な障壁があり難しい状態でした。それは一旦受け止めた上で、約1か月を費やし、日本郵政グループの増田寛也社長に「DXの子会社を作らせてください」と直接お願いすることになりました。

その時増田社長には、会社を作ってくださいというお願いではなく「私に会社を作らせてください」とお願いしました。日本郵政グループが本気でDXをやるのであれば、もっと機動的にスピーディに今までの枠組みに捉われない組織にする必要があるからです。そして、増田社長は子会社設立のGOサインを出してくださり、私が日本郵政グループに入り3か月でJPデジタルを立ち上げることができました。

――すごいスピード感ですね。

飯田 多分、郵便局150年の歴史の中でも、前代未聞のできごとだったと思います。普通に考えると稟議やなんやらと2年ぐらいかかると思います。しかし、新会社を設立するのに2年も待っていたら、その間にもDX化に遅れをとってしまう状況でした。

JPデジタルの設立は、増田社長の理解と現経営陣の支援があったからこそできたことだと思います。

2年以内に外部人材の採用を7割に

――JPデジタルの社員はどのような方が集まっていますか。

飯田 JPデジタルが設立された当初は、グループ内から20名の有志社員が集まってのスタートでした。集まったメンバーは「DX関連業務の経験はないけれど、郵便局をよりよくしていきたい、大義を果たすために一緒にやろう」という若手社員が中心でした。

当社グループでは各個人が業務に関する希望を毎年申請できる制度があり、その中でDXをやりたい、新しいことをやりたいという人に集まっていただきました。2年目からは、組織としてグループ内に設置をされたため、日本郵政グループのDX部門に行きたい、JPデジタルへ行きたいと手を挙げてくれた人たちが集まっています。そして今年度からは、JPデジタルの業務とフィットするかどうかも選考基準になっています。

「データ分析やUXに強いデザイン人材を強化したい」と飯田CEO

「データ分析やUXに強いデザイン人材を強化したい」と飯田CEO

――グループ内異動の方々は出向期間などが決まっていますか。

飯田 一定のグループ異動で来た社員は、原則出向期間2年というサイクルを守っていきます。

イメージとしては、2年間JPデジタルで仕事をし、OJT、最前線のDX施策に取り組むことでスキルを身につけ、出向元に戻るという流れです。これを繰り返していくと、DX施策の経験人材が日本郵政グループ内にどんどん積みあがっていきます。

今は7割がグループ内異動、3割がグループ外からの採用ですが、2年以内にこの比率を逆転させる計画です。私たちが取り組んでいる施策がどんどん高度化しており、よりスキルの高いエンジニアが必要になっています。

例えばPythonを使ってデータ分析ができる人や、UXを高めるためのデザイン的な知識を持つ人材を強化したいと考えています。今後は、各領域の専門人材を外部から積極的に採用したいと考えています。

私たちは日本郵政グループのDXを推進するにあたって「伴走支援」をする存在を目指していて、あくまでも主体は各事業会社と考えています。JPデジタルという子会社ができたからといって、企画から開発まで全て任せてしまったら、何の意味もないと考えています。

常にコラボレーションだし、グループ内の方が来てくれているので、そういった方々がいわゆる橋渡しになってくれています。社内の力でDXをやっていくという姿勢の表れにもなっています。

――日本郵政グループとして、非常に新しい取り組みと思いますが、グループ内から「待った!」がかかったりすることはありませんか。

飯田 JPデジタルが誕生してから後で、反対された経験は1度もありません。

幸いにも中期経営計画でDXを推進するとグループをあげていっているので、たとえ反対意見が出たとしても、グループの中期経営計画の大方針として「DXを推進する」と示しているため、大組織であっても皆が同じ方向を向いています。

経営トップがDXを進めていくと宣言し、全面的に支援していただいているので、JPデジタルとしてスムーズにDX施策に取り組むことが可能になっています。

私はデジタル領域のビジネスに20年ほど関わってきましたが、必ずしも経営トップがデジタルに詳しいわけではありません。自分がわからないから怖くて任せきれないという人も多い中、増田社長は「あなたに任せるのでやってください」といつもいってくださいます。そういった言葉が私や社員たちの大きな励みになっています。

「郵便局らしさ」「日本郵政グループらしさ」を大切に

――今後の展開について教えてください。

飯田 JPデジタルのコーポレートイメージは、「大きな貨物船を引っ張るタグボート」です。私たちは日本郵政グループという大型貨物船を引っ張るタグボートになろう。私たちは大型船に乗り込んで、操縦するのではなく、巨大な船が正しい航路に進めるように導く役割をするタグボートというコンセプトです。

小さなタグボートとしてのJPデジタルが、社員数数万人の大企業になるということはまったく想像しておらず、今後も志をともにする少数精鋭のメンバーで展開していくつもりです。

設立から3年経過した今は社員100名の会社に成長しました。また、今取り組んでいるテーマを考えると100名では全然リソースが足りていないのも現実ですので、さらに仲間を増やしていく予定です。

しかしながら、「郵便局」らしさ「日本郵政グループ」らしさというものがあるとも思っていて、必ずしも最先端を走らなくても良いとも考えています。

郵便局というコンテクストの中で「日本郵政グループのDXは最近進んでいる」「郵便局が良くなった」「社員たちの働き方が良くなった」と実感していただけるよう今後も支援していきたいと思います。

――貴重なお話をありがとうございます。

「大きな貨物船を引っ張るタグボートが、コーポレートイメージになっています」と飯田CEO

「大きな貨物船を引っ張るタグボートが、コーポレートイメージになっています」と飯田CEO

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