Gunosy がAI技術開発で重要視する「チームトポロジー」体制 | キャリコネニュース
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Gunosy がAI技術開発で重要視する「チームトポロジー」体制

株式会社Gunosy VP of Engineering加藤慶一さん(左)人事部 高松藍さん(中央)、執行役員 最高技術責任者(CTO)の小出幸典さん(右)

2013年に情報キュレーションアプリをリリースしたのを皮切りに、現在ではニュース配信アプリ「ニュースパス」、ポータルアプリ「auサービスToday」やゲーム総合情報webサービス事業や投資事業まで手がける株式会社Gunosy。同社サービスの根幹を成しているのがAIや機械学習といった最新テクノロジーだ。 開発を進めるためには有機的な組織が必要と考えている同社。その体制や運営の仕組みと構成する必要人材と採用の現状について同社執行役員 最高技術責任者(CTO)の小出幸典さんとVP of Engineering加藤慶一さん、人事部の高松藍さんにお話を伺った。

AIは「情報の推薦」を支えるテクノロジー

−−まず御社が誇るテクノロジーの特徴についてお話を伺いします。御社のプロダクトを支えるニュースの出し分けを担うAI技術で、ユーザーはどのような恩恵が受けられるのでしょうか。

(小出さん) まず我々の事業は、情報を世界中の人々に最適化して届けるという会社理念のもとにやっております。グノシーであったりニュースパスであったりauサービスTodayといったプロダクトを通して実現したいのは、これまでは情報を手に入れるには、欲しい情報を探し出すテクニックみたいなものが必要でした。それを得意にやれる人もいればできない人もいる。得意でない人であっても欲しい情報が行き渡ると社会になるよう開発を続けてきました。その中で我々が手がけるAI・機械学習という分野で、特に力を入れているのは「情報の推薦」です。

例えばニュースであったりラジオ音声であったり動画であったりとさまざまな情報ソースがありますが、アプリケーションを利用してくださっているユーザーさんがどういうことに興味があってどういった情報を得たいのかという要求に対して、機械学習によって鍛えられたAIが推薦アルゴリズムを用いて、ユーザーに代わって大量にある情報の中から最適なものを収集してきます。

――ありがとうございます。情報の推薦ですが、AIがどうしても望んだ結果を返してくれないとか、AIがまだ判断できない情報などはどう処理をされているのでしょうか。

我々のアプリは知りたい情報を知りたい人に届けるという側面がありつつ、一方で社会や災害についてなど誰しもが知っておくべき情報も伝える責任があると思っていて、実際にアプリ内で上の方に表示させる時は人の手によるオペレーションを行うケースもあります。将来的にはこういった部分もAIをよりブラッシュアップして自動化できるようにする目標もあります。

ブラッシュアップなどで新しいアルゴリズムを試す時にはまずヒューリスティック(経験則的な判断)なルールベースでスタートしてそこから自動化していくケースも多いです。実際に推薦のアルゴリズムモデルを作成する前にはいったん人の手で「これはこういうルールで」というイメージを手動で学習させてから実装していくっていうパターンもあります。

開発と運用をチームとして一体化 リリーススピードとクオリティ両方を担保

エンジニアの役割分担

――時代の先駆けと言える御社のAI・機械学習のテクノロジーですが、開発体制としてはどのようになっているのでしょうか。

(小出さん) 現在は、ユーザ向けメディアサービス、広告配信サービスを開発するプロダクト開発部門、データ分・データ基盤、記事や広告の配信ロジックを機械学習で改善するGunosy Tech Lab、プロダクトの品質・信頼性を担保する技術戦略室と大きく三つの部門で分担しています。

エンジニアには大きく開発チームと保守・運用チームの2つに分かれるケースが多いと思うのですが、弊社ではあえてそこを分けていません。 開発チームとしては、自分たちの作ったものを早く出したい、早くユーザーさんに届けたいという思いが強く、運用チームとしては障害を発生させたくない不具合を発生させたくないという思いが強く出るというインセンティブの構造になってしまうことがあります。そうすると、開発チームはアクセル役、保守・運用チームはブレーキ役として対立が生まれてしまいます。 グノシーの開発組織の方針としては開発と運用を別けるのではなく一つのプロジェクトチームが開発も運用も両方やるのを前提として、この時は開発スピード優先、この時はシステムの安定性向上を優先といったように、自分たちが状況に応じてハンドリングできる組織を目指しています。

チームトポロジーを実践したエンジニア体制

――御社のエンジニアにはSRE(Site Reliability Engineering・Googleが提唱した)チームとDRE(Data Reliability Engineering)チームが存在しているとお聞きしました。他社とは少しこう異なった思想でチーム組成をされたとのことですが教えていただけますか。

弊社ではチームトポロジーを意識した組織作りを目指しています。 エンジニアのチームタイプとして、ユーザに価値を届ける中心となる「ストリームアラインドチーム」、特定領域のスペシャリストが集う「イネイブリングチーム」専門知識でパーツ開発をおこなう「コンプリケイテッド・サブシステムチーム」社内の各チームに対して内部プロダクトを提供する「プラットフォームチーム」の4つに分けられます。

SREは「イネイブリングチーム」に該当します。技術戦略室に所属し、エンジニアが作業する時の負担を減らし、効率化する役割を担っています。ただソリューションを提供するのではなくエンジニアが自分達で自立してコントローラブルになるように支援します。

DREはGunosy Tech Labに所属し、機械学習、アルゴリズム、AIにおいて利用されるデータプラットフォームの提供を行っています。エンジニアが新しいデータが欲しいとなった時に、エンジニア自身が動くのではなくDREが支援することによって作業時間の短縮や作業負担の軽減を行います。チームトポロジーでは「プラットフォームチーム」にあたります。 このように、ストリームアラインドチームを中心に据えつつ、それをサポートするように体制を取っている点が弊社の特徴だといえます。

−−ひとりのエンジニアが開発から運用まで担当するということは知識を網羅的に習得する必要があると思うのですが、それをサポートするための教育体制はありますか。

(加藤さん)日々のタスクをこなすためにも会社側が指定した時間で知識の習得を行ってもらうというのが現実的ではないという理由で各個人の自主性に任せていますが、工夫してやっているようです。ひとりでキャッチアップするよりもチームのみんなで同じ本を読みながら理解を深めるみたいなほうが効率的だということで週一回勉強会を開いて持ち回りで気になる論文を共有したり、新しい言語を使ったプロダクト実装を検討するためのワークショップ開いたりしています。

(小出さん) 社内でいろんなメンバーがそれぞれ勉強会を運営しています。機械学習の論文読み会もあるんですが、一部ゲーム的な要素を入れてみんなでワークショップでやってみましょうみたいなものがあったり、そういった社内有志による勉強会が各所で行われていまして、社内の共有のカレンダーに登録してもらうことでエンジニアの誰もが好きな時に自分の気になるものに参加してよいとしています。

技術を使うのが目的ではなくユーザーに価値を届けるためにどの技術を使うのか

――採用についてお聞きします。応募者のどういうところを見て評価されているのでしょうか。特に重視されているのはなんでしょうか。

(加藤さん) 中途採用においては面接回数を3回設けていまして、最初の面接では現場で一緒に長く働くメンバーを中心にアサインさせてもらって、技術力やコミュニケーションの部分でチームにマッチするかどうかを見させてもらっています。

二次面接では基本的に私と小出が、最終面接では所属予定の事業責任者が面接官させていただいていますが、二次面接では現場と事業責任者の間にいることもあるため、一次面接で聞き漏らしていることはないか、もう少し突っ込んで聞きたいことがあるかというのを確認して質問するようにしています。また所属する事業部における会社のミッションに共感しているかどうか、開発者として所属するプロジェクトに考えがマッチしているかというのを見させていただいています。やろうとしている事業に対する理解と共感はもっとも重視しているポイントです。特にテレワークが一般化したここ数年は、入社後のギャップを減らすことがより大切だと認識しています。

(小出さん) 一緒に働きたいのはどういった方かというお話をさせていただくと「Gunosy Pride」という価値観を大切にしていただける方です。「三方よし」「サイエンスで機会を作る」「百年クオリティ」「逆境に熱狂せよ」というこの4つの価値観に共感していただけることです。 また、特にエンジニアについては、面接で「どういう人と働きたいですか」と応募者の方から質問されたときに「Gunosy Pride」に加えてお話させていただいていることが2点あります。

ひとつに「バウンダリレス」の話をさせて頂いています。 例えば自分はサーバーサイドエンジニアだ、自分はアプリのエンジニアだ、と自分で自分にラベルをつけて動き方を制限するようなことはしてほしくなくて、プロダクトを利用してくれるユーザーさんに対して価値を届けるには自分が何をしたらいいのだろうかと逆算して考えてアクションができるっていう方と一緒に働きたいです、とお話させていただいているのが一点。

もう一点は、新しい技術を使うことが目的になってはいけないことをお話させて頂いています。今後もいろんな新しい技術が出てきますが、ユーザーさんに価値を届けるためにどの技術を使えばより大きく、早く価値を届けられるのだろうかという視点で技術を選ぶ。もちろん新しい技術を使う場合もあれば古い技術を使うときもあります。どんな技術を使うかはユーザーさんにどう価値を提供できるかを出発点に考える必要があり、技術を使うこと自体が目的になってはいけないのはエンジニアとして大切な価値観だとしています。

――最後に御社の採用面での困りごと、課題について採用ご担当者からお話いただけますでしょうか。

(高松さん) まずは市場全体のエンジニア不足です。また、SRE、DREという職種はまだまだ広く知れ渡っている職種ではありません。それゆえに、本来であれば募集要件に当てはまっている方なのに、ご本人がそれに気づかず応募してもらえないというジレンマもあります。 そのためにも、まずはプロダクトのクオリティが良くなっていることや新しい事業が始まっていることなど、Gunosyの魅力をもっとたくさんの方に知ってもらう必要があり、採用担当としてどうやったらGunosyの良さがうまく伝わるだろうかと思案の日々です。 Gunosyの技術力に興味を持ってもらえるエンジニアさんに、技術力以外の魅力もたくさんお伝えできると嬉しいです。

【プロフィール】 小出幸典(こいで・ゆきのり) 執行役員CTO 兼 技術戦略室室長。アクセンチュア㈱にて分析基盤や機械学習の実業務への導入支援を担当し、2014年当社参画。全社横断でのインフラ責任者、グノシー、ニュースパスの開発責任者、メディア事業横断での配信アルゴリズム開発責任者等を経て、現在は社内全体の技術責任者を担当。 慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了。

加藤慶一(かとう・のりかず) VP of Engineering兼メディア事業本部メディア開発部副部長。グリー㈱にてソーシャルゲーム運営全般、㈱フリークアウトにてデータエンジニアリングを担当し、2015年当社参画。ニュースパスを新規開発した後、現在は開発のマネジメント全般を担当。早稲田大学基幹理工学研究科修了。

高松藍(たかまつ・あい) コーポレート本部 人事部 採用担当。新卒でweb広告代理店に入社し、セールス担当としてスマートフォン向けメディアのチーム立ち上げから売上拡大に従事。2017年に人事に異動し、その後2019年に採用担当としてGunosyに入社。ハイクラスからエンジニア、ビジネス全般のほか、新卒採用と幅広い採用業務を担当。 第10期全社表彰にてCEO賞・BEST CORPORATE AWARDをダブル受賞。

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