「LINE NFT」始動 独自ブロックチェーン上でユーザー本位のサービスを目指す
デジタルアート作品などの売買や取引ができるNFTマーケットプレイスは、海外で認知が進んでいる地域があるものの、日本国内では一般に認知が広がっているとはいいにくい。そんな中でLINEグループのLINE Xenesis株式会社(旧:LVC)は2022年4月、NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」のサービス提供を開始し、NFTのサービスを国内で一気通貫に担う仕組みを完成させた。
投機性ばかりが注目されるNFTに新たな世界観を――。そう話すのは、ブロックチェーン事業を牽引する事業部長の上遠野大輔(かどおの・だいすけ)さんだ。「LINE NFT」のサービスの特徴を紐解くとともに、事業を推進していく上で必要となる人材像を伺った。(文:千葉郁美)
NFTに馴染みのない人にも「LINE」から気軽に接点ができる
――御社が提供を開始されたNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」のサービスの特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
私たちの強みは、LINEグループの連携を通じて一気通貫に全てのNFT体験を提供していけるところにあると思います。
LINEグループにおけるブロックチェーン技術開発は2018年に始まり、現在はNFTの取引に欠かせないウォレット、暗号資産「LINK」なども含め、技術、基盤の全てを自社で揃えています。そうした、一気通貫に提供できるところは他社にはない部分です。
また、特異な点はやはりLINEの膨大なユーザー数ですね。日本国内で9,200万人が利用するLINEでサービスを提供することで、これまで暗号資産やNFTとは縁遠かった人でも簡単に触れていただけるというところです。しかも暗号資産「LINK」に限らず、日本円でも売買ができるので、利用の障壁はかなり低くなっています。
――暗号資産やNFTを知らない人でも、LINEのアプリから接点を持つことができるんですね。一般の方にとっては、とても身近な「NFT体験」が実現しそうです。
我々LINE Xenesisとしては、NFTの投機以外の世界観を提供していけると考えています。NFTはデジタル資産の所有者を明確にするものですが、グローバルなマーケットでは主に投機目的で利用されています。投機などに関心がなければNFTにたどり着くまでの動線がかなり複雑ですし、そもそも投機目的だけでは、日本で浸透させていくのは困難だと思うんですね。
LINE NFTでは、NFTをプロフィールアイコンに設定できたり、今後はNFTをLINEスタンプに活用したりと、ファミリーサービスとの連携によって、売買だけではないNFT事業の価値をしっかり提供していくことができると考えています。
また、コンテンツを持つ企業様やファンを持つクリエーターの方々にとって、気軽にNFTという新しい商材、ビジネスにチャレンジしていただける環境を整えることができたと思っています。一気通貫なサービス提供をするために日本国内の法令にしっかりと遵守した環境を整えることができていますので、これまで参入することに難があった企業様などには気軽にチャレンジしてもらえると思っています。
――「LINE NFT」が正式にスタートして、2ヶ月余りが経過しました。手応えはいかがですか。
現在は、すでに国内でいくつかNFTプラットフォームがありましたが、そこにやっと肩を並べることができたかなと思っています。販売コンテンツについては、全部で22のブランドがローンチしまして、一部では即完売して非常に順調な滑り出しになりました。今後も当社の独自性があるものを次々生み出していきたいと思っていますので、より一層期待していただけたらと思っています。
先進技術への理解以上に「ユーザー向き合いしたサービス」への意識が重要
――グループのジナジーによって広がる可能性に期待感が高まります。さらに事業を推進していくには人の力が重要かと思います。LINE Xenesis社では実際にどのような人が活躍されているのでしょうか。
私たちのブロックチェーン事業部は、すでにある「LINE Blockchain」の基盤上でプラットフォームをユーザー向けのビジネスとして構築する、運用するための知見や技術の備わった人たちが揃っています。
新たな領域であるNFTやブロックチェーンに対する知識が必要には違いありませんが、それ以上に大事なのはユーザー向き合いをしたサービスに関連する経験かもしれません。私自身もLINEグループの「エンタメカンパニー」の中でコンテンツビジネスに長年関わってきたという背景があります。いろいろなバックグラウンドのある人たちで、新たな領域でチャレンジしたい、NFTやブロックチェーンを活かして発展させていきたいという熱意を持ったメンバーが集まっています。
――別領域から参画するとなると専門性の高い知識をインプットする必要が生まれるかと思いますが、教育体制についてはいかがでしょうか。
LINEグループとしての教育体制がありつつ、LINE Xenesis社の事業に特化した教育体制も個別に実施しています。当社は金融の領域でもありますので、コンプラインアンス研修やリーガル研修などのいわゆる金融業としての研修が複数あります。
ブロックチェーンやNFTに関する知見をインプットする研修も並行して実施していますが、私は細かなブロックチェーン技術を理解する必要はないと考えています。そもそも一般の方に対してブロックチェーンやNFTの複雑な技術を説明するわけではないですからサービスを作っていく上で最低限知っておかなければならないことを理解してもらえるようにと思っています。
――実際の採用事情や戦略についてお聞きします。御社の採用活動はグループ全体で実施されているかと存じますが、どのように取り組まれているのでしょうか。
現在、エンジニアとエンジニア以外の領域で中途採用、新卒採用ともに大きな目標数値を持って進めています。具体的な進め方としては、採用担当が部門ごとのニーズをヒアリングしてスピードを意識した調達をするべく、さまざまな手段をボトムアップで提案し部門へ提供していく進め方をしています。
採用枠に対してどういう職種から優先順位を高くして採用をしていくか各採用担当と部門の担当者がすり合わせしながら採用活動を柔軟に進めています。
――昨今ではどの企業でも優秀な人材の獲得には苦心されていますが、採用活動に工夫されていることはありますか。
そうですね、当社も例外ではなく苦心しているところです。しかも今は、昨今のコロナ禍の経済影響を受けて各社が採用を見合わせていたものの跳ね返りで、コロナ前に比べても各社の求人が増えてきているなと実感しています。
我々としては、一人の人材に対してスピーディに進行することはもちろん、ご応募いただいた候補者様へ丁寧にコミュニケーションを取りながら選考を進めていくことを心掛けています。また、面接では一方的に評価をするのではなく、評価されるという意識も持ったうえで、候補者様の意欲醸成につなげられる情報提供の場としての位置づけとして対応をしております。
――今後、さらに事業を発展させていくにあたって、必要とするのはどのような人材ですか。
現在はLINEグループとの連携のほか、外部パートナー連携による新たな事業の企画についても、多岐にわたるご相談をいただいています。そういった当社の実情からも、BtoBのやりとりやプロジェクト進行をしっかりと進めていただける人を必要としています。
また、我々の事業の大きな課題は、ブロックチェーンやNFTに一般の方が触れてみても「わかりにくい」ということを解消することにあると思っています。そこをきっちりと噛み砕いて、UI/UXを含めて、ユーザーにむけてわかりやすいサービス設計をしていただける方には非常に期待していますね。
とはいえ、NFTやブロックチェーンのバックグラウンドがないと「NO」ということは全くありません。先にお話ししたとおりインプットする場も社内にありますので、こうした技術を活用して新たなチャレンジをしたいという方に、興味を持ってもらえれば嬉しいなと思っています。
【プロフィール】
上遠野大輔(かどおの・だいすけ)
LINE Xenesis株式会社 ブロックチェーン事業部長
LINEでは、エンタメのコンテンツビジネスを軸に、通信向けのエンタメサービスに携わる。
LINEのNFT事業への参入を機に、LINE Xenesisにジョイン。ユーザービリティーを第一に考え、日本におけるNFTの普及を目指している。