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将棋AIのHEROZ 培ったAI技術でBtoB事業拡大に向け社員60名で挑む

近年、急速に発展しているAI(人工知能)技術。さまざまな企業がAIを活用したプロダクトやサービスをリリースする中、人気将棋アプリ『将棋ウォーズ』でAI技術を培ったHEROZ株式会社は、近年ではBtoB事業にも注力している。

『将棋ウォーズ』のAIといえば、プロ棋士に勝利した経験を持つ『Ponanza』が駆使されていることが有名だが、BtoB事業において、同社のAI技術はどのように活用されているのだろうか。また、同社ではどのような人材が活躍しているのか。ビジネス部門責任者の菊地修さん、採用・広報責任者の小林武文さんにお話を伺った。(聞き手・文 藤間紗花)

BtoB事業ではソリューション、パッケージ提供も視野に

HEROZ株式会社の菊地修(左)さんと小林武文さん(右)

HEROZ株式会社の菊地修(左)さんと小林武文さん(右)

ーー「将棋ウォーズ」といった、AI技術を活用したアプリを通じて知名度を獲得した御社ですが、昨今はアプリなどのAI BtoC事業にとどまらず、AI BtoB事業にも注力されています。AI BtoB事業をはじめられたのはいつ頃ですか? 

菊地さん:AI BtoB事業がスタートしたのは2016年ごろからです。当時BtoC向けにAI活用をしていた頃にバンダイナムコエンターテインメント様と出会いお声がけをいただいたことがきっかけとなりました。

現在は、エンターテインメント業界だけでなく、金融や建設といった業界でも、業務提携や共同開発をさせていただいています。

 

ーー御社のAI技術は、金融・建設業界ではどのように活用されているのでしょうか?

菊地さん:建設に関しては、竹中工務店様と資本業務提携をするにあたり、構造設計や空間制御システムにおいて共同開発させていただいており、AI構築の一部を我々が請け負っています。

また、金融では、SMBC日興証券様の「AI株式ポートフォリオ診断」と「AI株価見守りサービス」で、2019年から運用していただいています。BtoBtoCサービスとして提供しておりまして、こちらについてもAI部分を当社が開発しています。

「AI株式ポートフォリオ診断」についてもう少し詳細にご説明しますと、こちらは主に個人投資家の方がご自身で投資額や市場、リスク許容度を設定できるもので、画面のガイダンスにしたがって入力すると、ファンダメンタル指標やテクニカル指標等といった情報を学習したAIが、その人に最適なポートフォリオを予測し提案します。

また「AI株価見守りサービス」は、お客様が保有している国内株式の株価をリアルタイムで見守り、投資戦略に基づいた売却タイミングをお知らせするサービスです。同社の投資戦略のひとつであるロスカット&プロフィットホールド戦略と、当社と共同開発したAIによる高精度な株価トレンド予測を組み合わせることで、高度な投資戦略に基づいた株式投資をサポートします。専業の投資家であれば、いわゆる塩漬け株(売り時を逃して長期保有している株)をつくらないように常に株価の状況を追い続けられると思うのですが、それが困難な会社員など日中お仕事をされている方向けのアシスト機能です。ただし、AIが売りか保有かの最終決定を行うことはありません。

ーーAIは人に対して判断材料を提供するのみで、独断で何かを決定することはないのですね。

菊地さん:住宅ローン専門金融機関のARUHI様では、不動産住宅ローンを申請する際の審査に当社のAIを活用いただいていますが、最終的な判断は人間が行う仕様になっています。

こちらは、長期固定金利住宅ローン、フラット35という自宅を購入する際に適用されるローンにおいて、第三者に賃貸する目的の物件などの投資目的による購入者における不正利用を防ぐための審査を行いますが、全件を人の手で行うと大変な時間と労力を要します。そこで最初のフィルタリングの部分のみ、疲れ知らずのAIが担当します。

「ヒューマン・イン・ザ・ループ(AIによって進んだシステムに、あえて人間の判断を介在させる)」という概念がありますように、当社もクライアントの方々に「人間とAIの共存」という形でご提案することが多いです。AIは予測を行うことができても、何かあったときに責任を取ることはできませんので、最終的には人間が確認して判断するという作業が必要だと考えています。

ーー今後、エンタメ、金融、建設といった分野以外でも、BtoB事業を拡大させていく予定はありますか? また、そのために新卒採用など、新しい人材を採用することもあるのでしょうか。

プラント設計を補助する「AI for U」 のデモ画面(東洋エンジニアリング株式会社と共同開発)

プラント設計を補助する「AI for U」 のデモ画面(東洋エンジニアリング株式会社と共同開発)

菊地さん:当面はエンタメ、金融、建設にフォーカスし、各々の業務知見を蓄積し、他社との差別化が可能な領域で事業の拡大を狙っています。現在は企業様ごとに構想策定から開発・運用に至るご提案をメインの事業としているため、人的リソースが重要になります。その意味で、業界での汎用的なソリューションを提供できるように考えています。事業効率を考えると、手離れの良いプロダクト、サービスを持ち、リカーリングビジネスを構築していくことがマストです。2023年度は、新たにLLM(Large Language Model)グループを設置し、大規模言語モデルのサービスを展開していきます。エンタメ・金融・建設という3つのインダストリーに特化した上で、更に差別化したご提案を目指し、社会実装に貢献していきます。

小林さん:BtoB事業の拡大は当社の成長をどう加速させられるかを決定づけるものであり、今がその重要なタイミングであると考えています。ですから、人材採用においては、即戦力となる方を必要としています。当面は中途採用や第二新卒採用に力を入れていく予定です。

BtoB事業の地盤が固まり、あまねく企業様に提供できるようになってきたら、計画的に新卒採用の枠を広げていくこともあり得ます。ですが、多くの若い人材を採用するとなると、それなりに育成や経営の体制も考えなくてはなりませんから、見切り発車ではなく、一歩ずつ着実に進めていきます。

ものづくりを愛する技術者たちと、プロダクトを社会に届ける人材によって生まれる価値

同社内に設けられたフリースペース

同社内に設けられたフリースペース

ーー現在、御社で活躍されているのは、どのような方ですか?

小林さん:まず、当社の人材の職種から説明をさせてください。当社の人材は、現在、大きく4つの職種に分けられています。1つめが、菊地も所属しているセールス職、2つめがコンサルタント職、3つめがエンジニア職、そして4つめがバックオフィスの役割を果たす私たちコーポレート職です。当社では、エンジニア職が一番のボリュームゾーンであり、全体の約半数を占めています。どの職種にも共通しているのは、不確実性が高い状況を楽しむベンチャーマインドとビジネスにおける課題解決や価値創造に強い好奇心を持っている人材が非常に活躍しやすい現場であるということだと思います。

当社には、前職では大手企業の研究開発や新規事業開発でエンジニアやプロジェクトマネジャー務めていたという人や、中央官庁で機密情報のデータ解析をしていた人、AIに特化した分野で教員をしていた人など、さまざまな経歴を持つ人材が集まっています。早いスピードの中でどんどん注目を集めているAI業界において、自分の持つAIの知識を活用して、テクノロジーの力で挑戦したい、社会の変化をつくり出したいという強い気持ちを持つ人材が集まり、活躍しているAIという専門分野に特化した会社だと感じています。

ーーちなみに、社員の方々は、どのようなルートで入社されていることが多いのでしょう?

小林さん:ルートはいくつかありますが、この1年を振り返っていえば、メインのルートはダイレクトリクルーティングで、全体の7割ほどを占めています。

活躍されている方は、全国のさまざまなところにいらっしゃるので、全国にわたってお声がけをして、その方のキャリアに対する考えをうかがい、当社でどんなことに携わりどんな挑戦ができるかというのをお伝えしながら、じっくりと時間をかけて採用活動をしています。

ーー現在、AI業界が急速に発展する中で、AIエンジニアはどの企業も必要としている人材かと思います。御社では、優秀なエンジニアをどのように獲得されているのでしょうか?

小林さん:おっしゃる通り、優秀なエンジニアはどの企業も欲しがっています。引く手あまたなエンジニアの方に対して、私たちは当社ならではのポジションと転職のメリットを正しくお伝えするようにしています。

当社はベンチャー企業という位置付けで、社員も約60名しかいない小さな組織ながら東証プライム市場に上場しています。AI技術を導入した自社の将棋ゲームアプリ事業で安定的なマネタイズを担保しつつ、BtoBでは大きな仕事ができます。AI業界で、この立ち位置はかなりユニークだと思うので、まずはしっかりとそれをお伝えしています。

また、社員数の多い大手企業との違いとして、レイヤーがとても少ないということもあります。例えば、私の上司は、当社の役員です。ですから「こんなことをやってみたい」と提案すれば、すぐに検討されて実行できます。私も以前は大手企業に勤めていましたので、自分の提案がすぐに上に通るというスピード感には感動しました。自身の経験も踏まえ、「あなたのアクション次第で、すぐに新たな挑戦ができる」というのを、当社ならではのメリットとして丁寧にお伝えしています。

ーー確かに、自分自身の技術を活用して新たな挑戦がしたいという人材には、風通しの良さとスピード感は魅力に感じられるでしょうね。

小林さん:その通りです。現に、当社のエンジニアには「自己研磨が大好き」という共通点がありまして、休日にもAIの分野でコンペに出場しているような人がいます。また当社所有のGPUサーバーに社員ならいつでもアクセスでき、プライベートでも使用できるという制度を福利厚生として設けているのですが、それも彼らにとって大きな魅力になっていると思います。個人では金額的に購入の難しいものですし、このGPUサーバーがあることで、AIプログラミングのパフォーマンスが向上しますから。

AI開発はものづくりです。ただ「ものづくり好き」という人材がたくさんいても、世の中に提供できなければ何も生まれないわけでして、これは当社のこれからの成長フェーズにおける課題だと捉えています。世の中に良いプロダクトやサービスを提供して、反応が返ってきて、そうしてビジネスが成立する。それによって彼らが自己研磨してきたことの価値が認められるわけですから、採用や広報、セールスマーケティングが一体となって力を合わせていくことがとても大切だと思っています。

ーー福利厚生においては、社員の方が希望する講習への参加、論文・図書購入、資格取得等に必要な資金を支援する「スキルアップ支援金制度」も設けられていますね。実際に、こちらの制度を活用して、業務に役立てている方もいらっしゃるのでしょうか?

小林さん:こちらは2022年8月にリリースしたばかりの制度なのですが、社員からはかなり好評です。人によって活用の仕方はさまざまですが、例えばエンジニア職に関していえば、海外の研究者が発表した論文を購入して、新しい技術の習得に役立てたり、コンサルタント職では、「機械学習」に関する講習を受けて、業務オペレーションの作成やご提案に役立てたりしている人もいます。

みんな誰かに強制されることなく、自分から受けたい講習や資料を見つけてきたりして、この支援金制度を活用しています。こうした向上心を持つ社員が集まっていることが、まさに当社の特徴ではないでしょうか。

【プロフィール】 菊地 修(きくち・しゅう) HEROZ株式会社 Business Success Division, Division Head 25歳で総合音響機器メーカーにて営業所長として管理職のキャリアをスタート。インターネット時代の幕開けとされた1995年、アップルコンピューター(現Apple Japan)に入社。激動のIT業界にて27年間にわたり営業管理職に従事し、新規事業の立上げや組織改革に携わる。2022年5月にHEROZ株式会社へ入社、2022年11月より当部門グループマネージャーを担当。

小林武文(こばやし・たけふみ) HEROZ株式会社 Human Resources Division, Recruitment & PR Group, Group Manager 2009年に東証プライム企業のデジタルマーケティング部に新卒入社。その後、HR系大手で新規事業の法人営業を経てHR系ベンチャーに転職。BtoBマーケティングと採用支援のカスタマーサクセスを経験し、HEROZ株式会社の採用兼広報マネージャーとして入社。

 

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