創業以来受け継ぐ“種播き精神” 舗装材料トップシェアの「ニチレキ」を徹底調査【企業研究】
道路建設の調査から設計、材料、施工までを行うニチレキ株式会社(東京都千代田区)。1949年に創業し、アスファルト乳剤をはじめとした舗装材料の分野で国内トップシェアを誇ると言う。創業者は池田英一氏で、個人資産を寄付して静岡・伊東に「池田20世紀美術館」を設立したことでも知られている。一体どのような会社なのだろうか。キャリコネニュース編集部が事業内容から売上、年収まで徹底調査した。
舗装材料で業界トップシェア 「ニチレキ」ってどんな会社?
■道路舗装材料の製造・販売・施工を行う会社
生活道路や幹線道路、高速道路のほか、橋や飛行場等にも欠かせないアスファルト舗装。ニチレキは舗装材料メーカーとして業界トップシェアを誇り、人々の暮らしを支えている会社だ。「道創り」を通じて社会貢献するべく、進化を続けている。
■昭和18(1943)年創業。創業者は池田英一氏
ニチレキを創業したのは埼玉県出身の池田英一氏(1911~1982)で、1943年に前身である「日本瀝青化学工業所」を設立。関東大震災や第二次世界大戦の時代を生き、代用アスファルトの開発・研究に心血を注いだ。
池田氏は美術愛好家としても知られ、1975年には日本初の本格的な現代美術館である「池田20世紀美術館」を創設している。建物や所蔵作品の多くは池田氏自身が寄付したものだと言う。
日本瀝青化学工業所は、合資会社を経て1954年に日瀝化学工業株式会社へ。事業拡大とともに次々と拠点を増やし、1970年に東証二部上場、1974年に東証一部上場。1994年に「ニチレキ株式会社」に商号変更している。
■本社は市ヶ谷駅そば。中国・シンガポールにも事業展開
ニチレキの本社所在地は「東京都千代田区九段北4-3-29」。都営地下鉄新宿線、東京メトロ有楽町線・南北線の「市ヶ谷」駅より徒歩5分という立地。
また、栃木県下野市に技術研究所、埼玉県越谷市に道路エンジニアリング部があり、北海道から九州まで全国に支店展開。その他にも、48事業所、15工場を構えている。
「日瀝道路」などの舗装工事会社をはじめとした子会社が国内に28社あり、海外展開にも積極的。中国・シンガポールにも拠点がある。
2014年には、中国で5社目となる合弁会社「上海城建日瀝特種瀝青有限公司」の技術研究院を開所。中国市場にあわせた最新の特殊改質アスファルト、補修材料等の研究開発を行っている。
■創業者 池田英一氏から受け継いでいる「種播き精神」
ニチレキが創業以来、一貫して大事にしているのが、「種播き精神」。
ニチレキの公式HPに掲載されている企業理念は以下の通りだ。
『種を播き、水をやり、花を咲かせて実らせる』
たゆみない努力の積み重ねによって絶えず新しい仕事を創造していきます。ニチレキグループは、「道」創りを通して社会に貢献するため、
・優れた機能とコストを満足する道路舗装材料ならびに工法の提供
・国民の共有資産である「道」をいつも見守る高度なコンサルティング
・顧客から信頼される施工技術
これらを完全に一体化し、株主をはじめ幅広い顧客の皆様から信頼される「道」創りになくてはならない収益性に優れた企業グループであり続けるとともに、社員一人ひとりが能力を発揮でき、働きがいのあるグループであることを経営理念としております。
安全性、信頼性が求められる「道」に携わっているからこその真摯な姿勢や、常に時代やニーズに合わせた道づくりを追求していくチャレンジ精神がうかがえる。
道路建設の全てのプロセスに関わる 「ニチレキ」の業績&事業内容
■2018年3月期の売上高は605億7000万円
ニチレキの連結での売上高は以下の通り。
2018年3月期 605億7000万円
2017年3月期 544億3900万円
2016年3月期 487億1300万円
2018年度3月期の売上高の事業別の割合を見ると、アスファルト応用加工製品事業が29.2%、道路舗装事業が70.3%、その他0.5%。道路舗装事業については、原価管理や発注物件の工法提案等を強化し、前期よりセグメント利益を伸ばしている。
経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益(いずれもは連結)も見てみよう。
・経常利益(連結)
2018年3月期 56億2800万円
2017年3月期 58億7200万円
2016年3月期 44億7400万円
2015年3月期 51億5500万円・親会社株主に帰属する当期純利益(連結)
2018年3月期 38億8200万円
2017年3月期 37億6200万円
2016年3月期 26億7100万円
近年、競争の激化や原材料価格の高騰などの影響があるなか、売上高や親会社株主に帰属する当期純利益を着実に伸ばしている状況だ。
・ニチレキ過去10年の売上高・営業利益の推移
(スマートフォンではタップ、PCではマウスオーバーで詳細が表示される)
■道路建設を調査から材料開発、施工まで一貫して担う
ニチレキは、国・地方自治体から社会インフラに携わる企業まで、幅広い顧客を相手にビジネスを行っている。通常、道路建設においてはコンサルタントが調査を行い、道路設計会社が設計し、メーカーが材料を開発・提供し、施工会社が施工するというプロセスを踏む。これらをすべて一貫して担える点がニチレキの大きな強みであり、業界内で信頼を築いている要因と言えるだろう。
では、事業内容をより詳しく紹介しよう。
【舗装材料】
ニチレキと言えば、舗装材料。さまざまな製品があるが、特に”アスファルト乳剤のパイオニア”として知られる。アスファルト乳剤とは、舗装の層と層をつなぎ、雨水の侵入を防ぐ役割を担う材料だ。
1959年に日本で初めてプラスの電荷を持つカチオン系のアスファルト乳剤「カチオゾール」を開発し、現在日本で使われている道路用乳剤のほとんどがカチオン系になるまでに普及。現在もニチレキはアスファルト乳剤で国内トップシェアを誇り、実に約4割を占める。私たちは、知らず知らずのうちにニチレキの材料が使われた道路を通っているのだ。
【研究開発】
舗装材料にも、「低騒音」「安全」「快適」などさまざまなニーズがある。少子高齢化問題や環境問題にも対応しながらオンリーワンの材料を開発すべく、日々研究に励んでいる。
【舗装工法】
室内環境の試験では問題がなくとも、実際には道路は外にあるもの。実際に施工してしっかりと役割を果たさなければ意味がない。そのため、ニチレキでは舗装工法の研究や施工機械の開発にも余念がない。例えば、エマルテック工法(超薄層舗装工法)や視認性が上がり表面を強化できるカラーモードEP工法といった施工法を確立している。
【道路・舗装管理】
安全性を維持するためにも、道路の管理は重要。しかし、そのストック量の多さから、迅速かつ効率的に管理することが求められる。ニチレキでは、ITを活用した道路・舗装維持管理システムを構築しているほか、さまざまな調査計測機器を保有。ひび割れ、わだち掘れ、平たん性を同時に測定できる路面性状自動測定車も。
その他、安全対策のための「ロメンステッカー」(路面表示シート)や、飛行場のエプロン、ダム、河川等に用いられる特殊材料・目地材料等、ニーズに合わせた豊富な製品を開発・提供している。
舗装材料の提供だけにとどまらず、「人」「環境」に配慮したニチレキオリジナルの製品、工法、技術を開発し続け、社会に貢献しているのだ。
三内丸山遺跡にもニチレキのアスウッド舗装が採用された
「ニチレキ」の経営者 小幡学氏ってどんな人?
耐摩耗性に優れたニチレキの「スーパーロメンパッチ」。小規模な路面の補修が手軽にできる
■社長は2015年から小幡学氏
ニチレキの現代表取締役執行役員 社長は小幡学(おばたまなぶ)氏だ。1956年生まれで、東京出身。1982年に日大理工学部を卒業してニチレキに入社し、中部支店長や執行役員、上席執行役員、取締役常務執行役員を経て2015年から社長に就任した。
■小幡社長の発言
小幡氏の発言についても紹介しよう。
・公式HP 「社長挨拶」より
国内外における社会経済の動向により、わたくしたちを取り巻く事業環境は時々刻々と変化します。ニチレキグループは、この変化を敏感に捉え、お客様に満足していただける付加価値の高い製品・工法を常に市場に送り出してまいります。そして、いかなる環境でも持続的に成長できる強い企業体質の形成を目指します。
・第74期 株主通信(平成29年4月1日~平成30年3月31日)より
当社グループを取り巻く環境につきましては、公共投資は底堅く推移しているものの、受注競争の激化や資材価格の高騰など、引き続き厳しい状況にありました。当社グループはこのような環境の中で、中期経営計画『Next 2020』の2年目として「市場の拡大と探耕」を最重点課題とする成長戦略に基づき、各施策に取り組んでまいりました。その結果、当期の連結業績は、営業利益および経常利益は前期を若干下回ったものの、売上高および親会社株主に帰属する当期純利益は前期を上回ることができました。
(中略)
当社グループは中期経営計画『Next 2020』をさらに推進することで、外部環境に左右されない企業体質への改善を図り、グループの持続的成長を目指してまいります。
取り巻く環境がめまぐるしく変化するなかにおいても、新たなチャレンジを怠らない姿勢がうかがえる。
道づくりにやりがいを見出す人々 「ニチレキ」ではどんな社員が働いているの?
■従業員数は単体で378名
ニチレキの従業員数は、グループ連結で797名。単体では378名で、男女比としては男性のほうが多い。
年齢構成割合は45~49歳が約2割でトップ。次いで40~44歳、25~29歳の割合が高い。平均年齢は41.9歳で、平均勤続年数は16.5年だ。
■平均給与は700万円弱。伊東市に保養所も
平均給与は694万7000円。
公式HPの募集要項に掲載されている初任給は、
大学卒 月給 195,000 ~ 211,000円
修士卒 月給 210,000 ~ 226,000円
となっている(2018年4月実績、地域により変動あり)。
この他、家族手当、住宅手当、通勤手当、技術手当などの各種手当がある。昇給は年1度4月に実施され、賞与は6月、12月の年2回。
福利厚生は以下の通りだ。
各種社会保険、借上社宅制度、財形貯蓄、従業員持株会、従業員貸付金、育児休業、介護休業、保養所(静岡県伊東市)、契約リゾート施設
※従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均給与は、全て2018年3月末時点、ニチレキ単体の数値
■実際に働く社員のインタビュー
BtoBビジネスのため、仕事内容が想像しづらい人もいるだろう。実際に働く社員たちの仕事内容や、働く上でのやりがいも知りたいところ。公式HPで紹介されている社員のコメントを、一部抜粋して紹介しよう。
・施工管理 平野知佑氏(2014年入社)のコメント
施工管理の業務内容は、施工の段取りや現場の判断ですが、それらを支えているのはコミュニケーションの積み重ねだと考えています。一緒に工事を進めるメンバーには職人気質の方も多く、ベテランの集まり。最初は私の伝え方が未熟なばかりに、現場全体の理解が滞ってしまったこともありました。そうしたときのスムーズな連携や相互のサポートは、日頃の人間関係があってこそ生まれるものだと思います。
・技術 西田麻美氏(2013年入社)のコメント
顧客の要望に応えるため、必要な材料や工法を決めるのが技術の主な役割です。路面の状態や実現したい物性は、案件ごとに異なるので、条件に応じて最適な補修方法を提案します。施工前の調査から当日の立会い、施工後の追跡調査も行うため、道作りのプロセス全てに関わる職種です。(中略)お客様はもちろん、ニチレキの全職種、さらには実施工を担当する施工会社とも密に連携を取るので、全員で1つの道路を完成させる一体感を感じられます。
・営業 中村彰太氏(2015年入社)のコメント
官庁や工事会社に向けて材料や工法の提案活動をしています。提案内容によって伝え方に工夫を凝らすことが、難しくもあり、面白いところです。(中略)常日頃お客様に通い、何でも相談してくれる関係性づくりを心がけています。また、官庁の入札情報をチェックするために業界紙に目を通すのも日課です。そうして自分がお客様との接点を創り出し、自社の技術力を伝えることが、多くの現場でより良い道路を生み出す第一歩になると思っています。
・研究開発 大野香澄氏(2013年入社)のコメント
アスファルト乳剤の開発を担当しています。(中略)道は人々の生活に密着したものであるため、その利用者すべてに思いを巡らせて製品設計することが重要と改めて実感しました。現在はできる限り現場に足を運ぶことや、現場施工に立ち会った先輩社員に状況を聞くことを心がけ、現場ニーズの把握に努めています。今後も人の役に立つ製品開発を心がけ、その成果をあっと驚くような道づくり技術の進展に繋げたいと考えています。
■ニチレキ出身者にはどんな人がいるの?
では、ニチレキOBにはどんな人がいるのだろうか。2010年のRoof-net記事には、1983年に当時の日瀝化学工業の常務取締役を退職した山本哲朗氏のインタビューが掲載されている。2010年当時、日本カンボジア協会常務理事や、駐日カンボジア王国大使館特別補佐官、池田20世紀美術館役員を務めている。創業者の池田英一氏とともに日瀝化学工業を支えた存在だ。
“道のスペシャリスト”を育成すべく研修制度も充実 「ニチレキ」の採用・育成関連情報
■ニチレキの募集職種
ニチレキの公式HPで紹介されている職種別人数割合を見ると、営業・事務系が39%とトップ。次いで工事系35%、研究開発・技術等の技術系が26%。
ニチレキの過去の新卒採用 募集要項を見ると、具体的に以下の職種で活躍できるようだ。
・営業・管理系(営業、総務、経理など)
・技術系(研究開発、技術営業、施工管理、生産管理、機械設計管理など)
所属している学部、学科は問わないが、土木系、化学系、文系を積極採用していると言う。
キャリア採用では、以下の職種を募集中だ。
・舗装施工管理 道路舗装工事を中心とした土木工事の施工管理
・営業 舗装材料や舗装工法の営業
なお、舗装施工管理では、道路舗装工事の施工管理を3年以上経験していること、1級または2級土木施工管理技士の資格があることなどが条件となる。営業に関しては、3年以上の営業経験があれば業界を問わない。業界に関わった経験があり、営業に興味があるという人も歓迎している。
■入社後には手厚い育成制度も
担当する業務内容にもよるが、高い専門性が求められるため、資格取得が必要なケースが多い。
ニチレキではスペシャリストを育成すべく人材育成に力を入れており、新入社員として入社後は1か月間、本社と技術研究所で事業内容を経験することになる。半年間のOJT研修を行うほか、9月にはフォローアップ研修も。
そのほかに、
3年研修、監督者研修、管理者研修、経営管理者研修、職種別研修、資格取得支援
などがあり、職種や階層に合わせてスキルアップできる環境を整えている。資格を取得すると毎月技術手当が支給されるため、モチベーションアップにもつながるだろう。
ニチレキでは、土木と化学の力を掛け合わせ、常に新たなニーズを捉えながら人々の生活を支える”道づくり”に地道に取り組んでいる。
興味がある人は、ニチレキの採用ページをチェックしてみよう。2020年卒を対象とした採用エントリーは、3月1日からスタートする。