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大丈夫という言葉を胸に。誰もが「助けてもらえる」、「なんとかなる」社会を目指す

▲ビックイシューでの活動

▲ビックイシューでの活動

大学時代に経験した路上支援から、支援者としての道を志した原田 詩織。2020年現在、任されているのは、ゼネラルパートナーズの就労支援事業所「リングビー秋葉原」での生活支援員です。手助けをする立場と手助けをされる立場の両方を経験してきた原田が、これまでを振り返りながら、想い描く社会の姿を語ります。【talentbookで読む】

好奇心が起点。ビッグイシューとの出会いから路上支援をスタート

幼少のころから、誰かの役に立ちたいというよりは「どんな人がいるのか知りたい」という好奇心から人と関わることが好きでした。

大学では社会心理を専攻し、大学のフィールドワークでホームレス問題の解決に挑戦している『ビッグイシュー』について調べたことをきっかけに路上支援に興味を持ちました。

ビッグイシューの事務所を訪問した際、食べかけのパンが受付にぽつりと置いてあり「なんて自由気ままなんだ」と感激しました。その後、さまざまなボランティアに関わるようになったのも、出会う人がみんなおもしろく、不躾な表現ですが興味深いと感じたからでした。

路上という現場での活動は、貧困や障がい者差別に対する問題意識という大きな概念に比べ、多くの人々の「生の在り方」に関わることができます。

路上支援では週に1回、夜回りや炊き出しを行い、ホームレス状態の方に声をかけていきました。ホームレス状態の方は過去のトラウマを抱えていたり、不安ややるせなさを感じていたりする方が多くいます。そのため、アパートへの勧誘を試みるも断られたり、路上のコミュニティから離れ寂しくなったり、他にも様々なご本人なりの難しさがあり、ホームレスに戻ってしまったりします。

しかし、大切なのはその人自身の意思を尊重して、声をかけ続けること。彼らの人生にささやかながら関わり、彼らが必要とするものを適切に提供できる存在になりたいんです。

私は個人主義の性格で「自分は自分、他人は他人」と割り切っています。そういった面が周りからドライに思われてしまうときもありますが、路上支援の活動にはマッチしていたみたいです。

路上支援の中で得た気づき。ゼネラルパートナーズで感じる支援者のあり方

▲学生時代の映画サークル

▲学生時代の映画サークル

大学を一年休学して、ビックイシューの活動にのめり込みました。路上支援を行っていて気がついたのは、ホームレス状態の方は何かの障がいを持っているが高いということ。それに気づいた大学5年生のときから、福祉系の授業を積極的に受けるようになりました。

調べてみると、貧困にも障がいが深く関わっているケースがあることがわかりました。不利な境遇にある人が、貧困に陥りやすいんです。そこで、将来的に貧困支援の現場に関りたいと考えたとき、障がい者支援のスキルが必要だと感じました。

障がい者支援・就労などで企業を調べていたとき、ゼネラルパートナーズ(以下GP)に出会いました。「キラキラしているベンチャー」それが、最初にGPに対して抱いた印象でした。

キラキラした職場は自分には合わないかなと感じましたが、とりあえず応募してみることに。そして、面接などでGPの社員と関わっていく中で、自分に合っているのではと思いはじめました。服装が自由で社員がのびのび仕事をしている様子が、ビッグイシューの事務所に初めて訪問したときの印象と似ていたからかもしれません。

そして2020年4月に新卒で入社し、発達障がい専門の就労支援事業所「リンクビー秋葉原」の配属になりました。ここで生活支援員をしています。通所する利用者の相談を受けたり、日々の様子を観察してフィードバックをしたりしながら、発達障がいを持つ利用者が就職した先で自分らしく働けるように支援しています。

路上支援の中で、ビッグイシューの方たちやNPOの職員、無償医療のボランティアをしていたお医者さんなど、福祉の専門職ではない人々の支援を見てきました。さまざまな経歴がありながら、彼らの支援の根っこにあるものは共通しているように見え、その支援者としてのあり方に憧れを抱いていました。

今の職場は、路上支援の現場とは支援の内容は違いますが、支援者としてのあり方は共通する部分があるように思え、憧れていた支援者の人たちと自分が同じ仕事をしていると思うとやりがいを感じます。

また、リンクビー秋葉原の支援員は、利用者自身の力やその人らしさを引き出すことを大事にし、まずやってみようと働きかけています。さまざまな人と出会い、学びを感じる毎日です。

黒子として手助けする気持ちを大切に──支援員としての理想の姿

▲職場の「リンクビー秋葉原」にて

▲職場の「リンクビー秋葉原」にて

入社して8か月が経ちましたが、失敗もあります。私の出会った発達障がいの方はエネルギッシュな方が多く、怒りや楽しさの感情をストレートに伝えてきます。最初はその姿に圧倒されてしまいました。

利用者さん同士の交流の場で、周りの利用者さんや職員に不満を感じ、怒りを露わにした利用者さんに対し、上司が毅然と、真摯に向き合っている姿を目にしました。そこで、本気で向き合い、利用者さんがなぜそのような発言をしたのか分析することで、その先の課題が見えてくると学びました。

私が理想とする利用者さんとの関係は、私と話すと勇気が出て、物事の整理ができると感じてもらえることです。

以前、うつ症状が強く、事業所に来ることができない利用者さんを担当しました。そのときは、Zoomで対話をしたんですが、あるとき私が言った「大丈夫!」という言葉に利用者さんが「そういってもらえて安心した」と言ってくれました。その経験から、「大丈夫」と言ってもらえるだけで勇気が出る人もいることに気づいたんです。

また、利用者さんが精神的に混乱して不安になっているときに、支援員が対応して感情を整理している場面がありました。それを見たときは、自分も利用者さんの感情を整理してあげられる存在になりたいと思いましたね。そのためにも、常に利用者さんの意思を尊重して、手助けすることを大切にしています。

私の職場に向いている人は、人を気にかけつつも謙虚に接することができる人だと思います。 “助けている”という想いが先行してしまうと、自分のエゴをぶつけることになりかねません。「人を気にかけつつも謙虚に接する」という姿勢は、私がリンクビー以外の現場で働くことになっても目指したい姿でもあります。

2020年11月現在、働く上で意識しているのは、本当にその人のためになっているのか問い続け、その人が前に進むのを阻まないことです。路上支援で培われた精神で、自分は黒子として手助けすることを大切にしています。

どんな境遇の人でも「助けてもらえる」「なんとかなる」と、思える社会へ

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GPに入ってから頂いた上司の方の言葉で、印象的な言葉があります。

“未来への不安に目を向けるのではなく、今やるべきことをする”──

「私たちが生きているのは、まさに過去でも未来でもなく今です。でも、人って案外今を生きていません。

私は、自分が生きている今を一所懸命生きるよう、昔から母に言われてきました。そして、それを実践してきた結果、今をしっかり生きていれば、おのずと自分の道が開かれていくということが経験としてわかってきたんです」

これは上司が、利用者さんに向けて発している言葉でもあります。

私事ですが、ここ5年で相次いで私の身近な人が亡くなり、先日は父が倒れてしまいました。

そこで、2020年10月から父の病気療養のため、鹿児島の実家でリモートをしながら時短勤務をしています。GPでは、父が倒れてすぐにリモートで仕事ができるよう対応してくれました。

「数日前まで元気だった人がこんな簡単には死ぬんだな」とやるせない感情になり、 人生は思い通りにならず、何が起こるかわからないことを実感しましたね。改めて、理想や形にこだわらず、今に集中することが大切だと思うようになりました。

幸いにも、容態を案じた父の大学の同期がボランティアで父の仕事を手助けしてくれることになりました。その際に、大変なときには周りの人が助けてくれるし、手を差し伸べてもらえる嬉しさを実感しました。

だから今度は私が、つらい想いをしているのに周りから「助けてもらえない」と感じている人、「大丈夫」と自分自身で思えない状況にある人が「大丈夫」と自分で思えるように、関わりたいと思っています。

自分の軸は持ちつつ、人生に身を任せることが私のスタンスです。今の私は、いろいろ問題があっても「助けてもらえる」「なんとかなる」と思えます。だからこそ、何があっても大丈夫だから人生に身を任せようとも思えます。そう思えるってなんて幸せなんだろうと感じますね。

差別や貧困は、形が変わってもなくならないかもしれませんが、どんな環境でも「助けてもらえる」「なんとかなる」と思えることも大事なのではないかと考えます。そう思えないことは、理不尽で寂しいです。そう思えないことが、社会構造によるものであるなら、変えていかなければ自分の首も絞めることになると思います。

どんな境遇の人でも「助けてもらえる」「なんとかなる」と思える社会をつくるために、これからも今を大切にしていきます。また、そういう社会にしようと奮闘している支援者を多く見てきたので、私も何らかの形で力になりたいです。

株式会社ゼネラルパートナーズ

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