女性向け恋愛ゲームの礎を築いたデザイナーが、次世代に伝えたい想いとは | キャリコネニュース - Page 2
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女性向け恋愛ゲームの礎を築いたデザイナーが、次世代に伝えたい想いとは

▲前職の仲間と参加した黒板アート

ここ数年で市場規模の大きな成長を遂げてきた女性向け恋愛ゲーム。その中で、キャラクターデザインの礎を築いた大森 まゆこ。サイバードに転職して3年が経過し、次のステップへと向かうことになりました。そんな大森が、これまでの経歴やデザイナーという仕事にかける熱い想い、今後の展望などについて語ります。【talentbookで読む】

足りなかったプロの視点。仕事に打ち込み「キャラクターデザイン統括」へ

2021年7月より、株式会社サイバード(以下、サイバード)のグラフィックデザイン統括部の統括部長を務める大森 まゆこ。

前職もゲーム会社で、キャラクターを担当するデザイナーとして活躍していました。

大森 「大学では教育系の学部の美術学科を専攻していました。学校の先生を目指す人が多い環境だったのですが、私の趣味と言えば寝食惜しんでゲームをすることだったので、就職の際も一番好きなことを突き詰めようと考えました。

就職活動では20社ほどに応募し、オファーをもらった会社にデザイナー職として入社したんです」

子どものころから漫画タッチのイラストを描くことが大好きだった大森は、3Dモデリングが流行し始めた時代に、あえて“2Dのキャラクターデザインをやりたい”という信念を持って会社を選んだと言います。

しかし入社後、自分の未熟さを痛感する出来事が起こります。

大森 「キャラクターデザインをやりたいと言い続けた結果、入社1年目で、あるタイトルのキャラクターグラフィックを任せてもらいました。初回提出では100人くらいのキャラクターを描くことになり、必死で描き上げて提出したのですが、そのうち80人くらいがNGでした(笑)。びっしりとボツの理由が書かれたメモを先輩から頂き、かなりへこんだのを覚えています。

ご指摘いただいたのは、技術的に言えば基礎の部分ばかりだったのですが、私自身、『基礎は曖昧でもイラストは描けるからいいでしょ』と、心のどこかでごまかしている部分があったんだと思います。

慢心をすべて見抜かれ、プロである先輩にはかなわないと思い、心から反省しました」

その後、大森が学んだのは、「デザイナーは自分の我を通す仕事ではなく、周囲の要求に応える仕事」なのだということ。

プロとしての視点を与えてくれた先輩に感謝をした大森は、これまでの価値観を捨てて、仕事に打ち込んでいきます。

大森 「修正、ダメ出しをされるたびに何度も泣きながら歯を食いしばってやってきました。そして、入社3年目を迎える頃、転機となるプロジェクトに参加することになったんです。

社内で初めてプレイステーションで女性向け恋愛ゲームを出すことが決まり、キャラクターデザインは漫画家の先生にお願いすることに。そして、キャラクターグラフィックは私が任されることになりました」

ゲーム制作に関わるメンバーの要求に応えながら、キャラクターデザイン担当の先生の絵を忠実に再現するためPCにかじりつき、がむしゃらにつくりあげていったという大森。

そのタイトルは、シリーズ累計販売本数100万本を超えるヒット作品へと成長していきます。

大森 「女性向けゲームとしては珍しく、ロングランで売れた作品になりました。その功績が認められ、女性向けゲームに関わるキャラクターは全て私に任せてもらえるようになりました」

「キャラクター統括」という立場を任され、約20年のキャリアを積んできた大森は、その後も数々の女性向けゲームを世の中に送り出していきました。

このジャンルを未来に繋げたい──礎を築いたデザイナーとして後進育成へ

▲サイバードのデザイナー仲間との一コマ

そんな大森がサイバードに転職したのは、2018年のこと。

前職で担当していたプロジェクトが一段落したタイミングで、自分自身を見つめ直したことがきっかけでした。

大森 「前職では責任ある仕事を任され、やりがいも感じていたのですが、ひたすら突き進んできたところがありました。一段落したときに、ふとこのまま続けるんだろうかと迷いを感じたんです。

ただ、キャラクターを描くことでお客様に喜んで頂けるという体験をしてきたので、ここで筆を折るのはもったいないという気持ちもありました。女性向けゲームの基礎を築いてきたという自負もあり、このジャンルが衰退してしまうようなことがあれば残念だという想いもあったんです。

私と同じ想いを持っているデザイナーに、今までの私のキャラクターグラフィックに関する経験を伝える場がほしいと思ったとき、もう少しいろいろな会社を見てみようと思いました」

こうして転職活動をはじめた大森は、社員や仲間とのつながりを大切にする社風に共感し、サイバードへと入社。

この会社で後進育成をしようと決心します。

大森 「サイバードのグラフィックデザイン統括部にいるメンバーは、学生時代から専門的な勉強をした上で、よりクリエイティブなことを世の中に発信していきたいという想いがあって、デザイナーという仕事を選んでいるんだと思います。だからこそ、そんな熱意やポテンシャルを大事にしていきたいと思いました」

また、デザイナーという職種の特性に難しさを感じている大森。デザイナー以外の職種の人にその特性を理解してもらうのに時間がかかると、経験上感じていました。

大森 「私としてはデザイナーの持つポテンシャルや発揮できる能力を周囲に理解していただくために、言葉を尽くして発信していきたいと考えています。そうして他のデザイナーも自ら発信することで、周囲との相互協力をより堅固なものにしていってほしいなと思いますね。

どういった事業に貢献できるかを理解し、自ら発信できる組織になっていくことができたら、サイバードの中で他部署ともより良い関係が築けると思いますから」

互いの業務を理解し部署間の連携を高めていくことが、会社の財産になる

▲ゲームはデザインすることもプレイすることも大好きという大森

前職でもキャラクターデザインに関わっていた大森は、サイバードでのデザイナーの仕事の進め方に当初課題を感じたといいます。

大森 「デザイナーと企画職とのやりとりの中で、仕様をもう少し詰めてから制作に着手したほうがよいのでは?と思う場面が何度かありました。曖昧な要件で制作を開始してしまうと、のちに大幅なフィードバックが発生してしまった場合は二度手間になり、時間もコストもかさむことになります。

制作時間も潤沢にありコストも度外視するというのであれば良いですが、会社の事業として管理側の目線で見ると、やはりコスト意識は重要。それなのに、2回も3回も作りなおすことが発生しそうな場面があり、違和感を覚えました。

でも、デザイナーがそうした意見を踏み込んで発言できていないという状況を目にすることが少なからずあったんです」

このほかにも異なる職種の部署間の連携不足からくるもったいなさを感じてきた大森。

その原因が、お互いの仕事に対する理解不足から起きているものなのではないかと仮説を立てます。

大森 「たとえば企画担当の方から、画像制作スケジュール的にはギリギリのタイミングで依頼が下りてくるケースもありました。加えて、そういったタイミングで頂く仕様書は、デザイナーから見て手を動かすための条件が揃っていない場合もあるため、スケジュールの調整が発生することもあったんです。詳しく話しを聞いてみると、企画担当も、どこまでの条件が揃ったタイミングでデザイナーに依頼をして良いのかがわからなかったようです。

そうした相互のミスマッチが起きないよう、お互いに業務理解を深めていった結果、徐々に改善が進んできています。デザイナーだけでなく、企画担当からも『こういうときはどうしたらいいですか?』と事前に相談をいただくようになり、お互いに歩み寄れるようになりました」

実際に、最近のイケメンシリーズの周年イベントでは、相互理解の上に成り立った部署間の連携がスムーズに行われるなど、改善の上にスムーズなスケジュールで進行できている業務も増えてきました。

大森 「周年イベントは毎年行っていて、今年は9周年を迎えたのですが、8周年施策のときから事前に話を始めて、必要なときにすぐに走り出せる状況になってきています。イベントの企画段階からスケジュール調整をしたり、一緒に考えたりと、連携が生まれていることが嬉しいですね」

時代が求めているのは、大きな変化の波を乗りこなせる人材

▲デザイナー組織を率いる統括部長 大森 まゆこ

サイバードという組織に変革をもたらしながらも、メンバーの成長を後押しする大森。

そんな大森が考える「デザイナー像」は、前職での新人時代の経験ももとになっているといいます。

大森 「自分でやりたいものを発信していくのは作家活動。それに対して、クライアントが求めるクオリティや方向性、世界観を導き出して、より良いものを提案していくのがプロのデザイナーだと思うんです。

サイバードが掲げる『「HAPPY」な瞬間を創り出し、世界中にスマイルを届ける』というミッションの実現に向けて、お客様に喜んで頂けるようなものを企画と一緒に考え抜いていくことが重要。それができることに、デザイナーの価値があると言えるのではないでしょうか。

クライアントと良い関係を作って連携して認められることで、デザイナーとしての大きなやりがいや、それこそ生きがいも得られると思います。さらにお客様から予想以上の反響があれば、それは成功体験になる。こういったことを、どのデザイナーにもどんどん体験してもらいたいですね。その環境をつくることも私の役割だと考えています」

一方で、サイバードのデザイナーが持つ、多種多様な特性を活かしていきたいと大森は語ります。

大森 「人材が均質化してしまえば、組織としての優位性がなくなります。人間にたとえるなら、血液は血液の役割を、心臓は心臓としての役割を果たしているわけで、どれも人体には欠かせないものですよね。

それぞれのデザイナーが持つ特技や特性を活かすことで、お互いに高め合い、組織の力でより高い価値観を提供できる部署を目指していきたいと思っています」

その上で、大森がサイバードにジョインして欲しい人材として挙げるのは、変化が速い昨今において、意欲的に新しいことに取り組む人材です。

大森 「今後プロダクトが成長していくと、今の価値観にはない『視覚的な表現』が次々に生まれてくると思うんです。変化のスピードが速く、今は2Dのものが今後は3Dになる、あるいはQRコードからホログラムが出たりするなど、今後数年単位でどんどん進化していく。大きな変化の波が来ていると思います。

そうした変化に対して臆病にならずに、むしろ貪欲に次の世代のグラフィックを担っていきたい、新しいことをやっていきたいと考えている方。そして、そうした意欲を周囲と分かち合っていけるような人材にぜひ来ていただきたいですね」

大森がトップとして率いていくサイバードのデザイナーたち。

今後も多くのお客様に愛されるものづくりをしていくために、個々の強みを伸ばし、周囲との連携を深めながら、成長していくことでしょう。

株式会社サイバード

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