海外で堂々と渡り合いたい。商社として価値を提供できる新ビジネスを作るのが目標
蝶理の営業、今関 陸は取材当時入社2年目。1年目は貿易関連のデスクワークを経験。現在はコロナ禍で世界情勢が混乱する中、商社パーソンとして海外出張に行く日を心待ちにしている。今回は、充実した日々を送る今関に商社の営業マンとして数字を追いかける大変さと面白さ、人と人をつなぐ商社の魅力などを語ってもらう。【talentbookで読む】
物流を学んだことで把握できた商社の業務。目標はオールマイティな存在
創業160年以上の歴史を持つ蝶理は、中国をはじめとするアジアを中心に現地法人や海外事務所を多数展開する専門商社。新型コロナウィルス感染症の影響で本格的な出社が遅れ、2020年6月となった今関は1年目、初期配属で化学品物流部に配属された。
今関 「1年目は社内処理が中心でした。各部署の売上や仕入等の実績をシステムに反映するほか、化学品の輸出入に必須である法令関係を管理する業務にも携わっていました。危険品輸送に必要となるラベルの作成等が主な業務内容です」
蝶理の化学品本部では、入社1年目の社員は基本的に化学品物流部に配属され、物流業務を通じて貿易の流れや知識を身に付ける。営業業務以外にも、社内処理や輸出入に関わる事務処理などを経験することで、貿易実務の全体を把握していくためだ。今関は物流部を経て、化工原料部第1課に配属された。現在はアルミ電解コンデンサの営業担当として勤務している。
今関 「現在扱っている電解コンデンサはパソコンやiPhone、家電、エアコンなど、電子機器全般に使われています。緑色の基盤を思い出してもらうとわかりやすいかもしれません。充電・蓄電・放電を行う電子部品で、さらにノイズを取り除き、電気の流れを安定化させていくものです」
電解コンデンサに使われるアルミに、電解液などさまざまな化学薬品を使用する。その化学薬品もセットで今関が担当している。
今関 「物流や船積み書類の作成、IS(蝶理の独自システム)処理など、事務処理的な面にも対応。我々が行っているのは委託加工貿易で、私のお客様はコンデンサを作る部品メーカーさんです」
化工原料部第1課のメンバーは10人。今関は、物流を学んだことで理想の姿に近づけたと振り返る。
今関 「商売の流れを把握して、何でも自分でできるようになるのがまずは目標ですね。商社は原料調達、製造加工、最終的な製品の販売まで一手に引き受ける複雑な仕事です。前任者から引き継いだ業務内容をしっかり行うことが第一です」
商社なら1人で大きなことを実現できる。若手社員を交えた座談会で確信
今関の性格は「独立独歩」という四字熟語が最適な表現である。学生時代から商社で働くことにこだわり、自己分析の結果からも「自分が一番活躍できるのは商社だ」と確信を持って就職活動をしてきた姿を、話の端々からうかがうことができる。
今関 「物流業界や金融業界も考えましたが、商社は何でもできるイメージがありました。いろんなことに関われる仕事だと。私は何でも自分でやってみたいタイプなので、どんどん前に出て1人で大きなことを実現したいと考えていました。そこで、商社が向いていると思い就職活動をしていました」
就職活動中、蝶理の若手社員を交えた座談会に参加し「若手でも大きな仕事を任されて、周りのサポートを受けながら活躍できる職場だ」と聞いたことが今関にとって強く印象に残ったという。
今関 「就活中はいろいろな人の話を聞く機会を持ったのですが、入社間もない人でも、裁量権を持って仕事を任されているとはっきりとわかりました。元気で熱意を持った人が多かったようにも感じます。私が入る会社はここしかない、とピンときましたね」
今関の価値観の根幹には、小学生から始めたバスケットボールが大きく影響している。
今関 「高校に入るときも、大学に入るときも選ぶ基準は1つ。自分の活躍できる場があるかどうか、でした。自分自身が試合に出場し、活躍したいタイプだったからです」
今いる場所での満足感、達成感こそがこれまでの今関の原動力となり、大きく成長することができたと振り返る。
今関 「私にとって、大きな大会に出ることや結果を残すことも大事ですが、それ以上にその時その時で自分が全力を尽くすことのほうがずっと重要です。大学卒業後、バスケットボールからは少し遠ざかっていますが、ずっと続けてきて本当に良かったと思っています」
数字を追いかける商社の仕事──語学力も磨き、即戦力として成長したい
今関が考える商社のイメージは入社前後で変わっていないというが、コロナ禍によって思い描いていた像と実情にギャップが生じているのは、紛れもない事実だ。
今関 「座談会では、若手社員が1人で海外出張に行くことも多かったと聞き、自分も近い将来、海外へ行けると思っていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による世界的な混乱の中、海外出張にはストップがかかっています。国内出張もままならず、デスクワーク中心ですが、そのギャップは仕方ないかな、と今は受け入れるしかないですね」
そして入社後、今関は数字を追いかける商社の現実を目の当たりにした。
今関 「厳しさは想像していましたが、数字を出さないといけません。けれども、頑張れば頑張るほど数字を出せる世界。プレッシャーもありますが、それ以上にやりがいを感じています」
出張に行けずに、もどかしい想いをしているのは今関だけではない。だからこそ、今のうちに自分にできることのひとつが、語学力に磨きをかけておくことだと今関はとらえている。アルミ電解コンデンサの原材料の輸入先は中国。輸出先は中国を含めたアジア各国ゆえ、中国語も英語も不可欠だ。
今関 「自分の場合、入社してからTOEICを初めて受けたんですよ。蝶理は選考時には人間性を中心に見ています。選考や入社の時点で必須の語学レベルはありませんが、業務を行う上で、外国語を使う機会は非常に多いですね」
蝶理には海外トレーニーの研修制度が用意されており、1年間の語学習得を含め、現地のビジネスを学ぶことができる。また、研修先が中国の場合は、語学留学の制度も兼ね備えており、3カ月間中国の大学に通い、語学勉強に専念することもできる。
今関 「本来だったら、私は中国に行っているはずでした。見知らぬ土地で知り合いも誰もいない環境は不安ですが、実績を残さなければいけない。中国語はなかなか難しいですから、一生懸命今は習得に励んでいます」
商社は人と人、会社と会社の間に入るのが仕事。営業になって最初のころ、今関はあることに気付き、改善したという。
今関 「最初のころは、聞かれたことをそのまま伝える、向こうが気になっていることをそのまま質問する。ということが多かったです。でも、どうして聞くのだろう、何を知りたいのだろうと真意を考えるようになったのは大きな転換だなと自分でも思います」
「苦労を経験しろ」祖父からいわれた成功法則を胸に、しっかり数字を残したい。
独創的なアイデアでビジネスを立ち上げるだけでなく、海外での競争に1人で堂々と渡り合い、勝てる存在であることが求められる蝶理の風土。
今関 「蝶理の求める人物像に近づけるように、少しずつですが手ごたえを得ながら前進しているところです。デスクワークではまだわからないことも多いのですが、前任者に聞いて対応しています。今のところこれといった成功体験はまだないのが実情ですが、目の前の仕事と誠実に向き合えていると感じています」
目下、今関が今後チャレンジしたいことは、出張と新規開拓だ。
今関 「海外も国内も含めて、出張に1人で行けるくらいになりたいですね。蝶理の代表としてお客様と向き合い、最終的には数字を残したいですから。新規に関しては、好きにやっていいというのが蝶理のスタイル。今までになかったようなビジネスをしていきたいです」
今関は、新しいビジネスを模索中。「価値」の提供ができるビジネスの立案は、商社の営業の醍醐味ともいえる。
今関 「貿易の知識を活かして、商社的なサービスを提供できるようにしたいです。間に入って右から左に流すだけでなく、間に入ることで価値を持ちたいのです。サプライヤー的な立ち位置でなく、コンシューマーとしてのビジネスを立案したいというのが今の展望です」
新しいビジネス立案にこだわるのは、祖父のある言葉が影響していると今関は語る。
今関 「祖父は一般企業に勤めていて、平社員から成り上がり、最終的に社長になりました。たたき上げの社長だった祖父からは、『遠回りになってもいいから苦労を経験しろ』といわれてきました。遠回りになると逆に細かい所に気を付ける人間になれる、というのが祖父の持論。細かい仕事を誠実にやっていって、確実に実績を残していきたいです」
尊敬する祖父の言葉通り、苦労を経験するために、あえて未知の分野に挑戦しようとしている今関。今はそのための土台作りの時期。仕事を覚え、英語と中国語を身に付けることから始めている今関がさらなる実力をつけて、海外で堂々と渡り合える日もそう遠くはないはずだ。