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与えられた枠を飛び越える──イマドキ女子が第一種電気工事士免許を取得したワケ

2015年に中途採用でアイベステクノ株式会社に入社した池田 はるひ。姫路工場の業務や設計補助業務に従事し、2021年4月に総務部業務課の主任に就任しました。女性比率5%以下という圧倒的な男性社会である電気業界で、果敢に取り組む池田のキャリアストーリーを紐解きます。【talentbookで読む】

ゆっくり自分のペースで。未知の業界へ飛び込んだきっかけとは

鉄道はなく、バスが数時間に1本という間隔、新しくコンビニがオープンすると、ちょっとした騒ぎになる──

そんな兵庫県の山間部の、のどかな田舎で池田は生まれ育ちました。のんびりマイペースな性格やゆっくり朴訥な話し方も、その影響かもしれません。

大学卒業後にいくつかの職場でキャリアを積んだ後、2018年4月にアイベステクノに入社した池田。制御盤や高圧盤と呼ばれる装置を、設計から製造・納品までを一貫して行うアイベステクノにおいて、電話対応や来客対応、書類作成や備品管理などの一般事務から、設計者の補助的な業務までを担っています。

前職は歯科医院の受付をしていたという池田。異業界からの転職は、初めて目にするものばかりだったといいます。

池田 「前任者が産休に入るため、事務職を募集していたのが当社を知ったきっかけでした。引継ぎ期間が1カ月にも満たない短期間だったのと、畑違いの仕事ということもあり、はじめは戸惑うこともありましたね」

姫路工場には、2022年8月現在18名の設計者が在籍しています。設計者といえども設計業務のみならず、その後工程となるさまざまな部署に対しても指示を出し、自身が設計した製品が出荷するまでは常に関わっていなければならないため、必然的に業務範囲が広くなります。そんな多忙な設計者たちを池田がアシストしています。

池田 「設計補助業務は多岐にわたります。お客様へ提出する事務的な書類作成がメインですが、時には専門的な内容を扱うこともあります。

たとえば、耐震計算書といって、当社で製造した盤を設置するのにあたり、地震発生時に盤に加わる力に耐えるためにはどのくらい強固なボルトを何本使う必要があるか、ということを算出するための書類作成があります。

また換気風量計算というのもあって、盤の中の部品に電気を流したとき、それぞれの機器や部品が何ワット発熱するかを調べ、盤の中が高温になることがわかった場合は、どれくらいの風力をそなえた換気扇をいくつ取り付けなければならないか、を算出します。補助とはいえ、自分が担当した計算結果が、実際の設計内容に反映されることもありますので、気が抜けません。

それから、アシスタントはメイン担当者の代理という立場なので、私のところで滞ったり躓いたりするわけにはいかず、確実に遂行する必要があります。日ごろから、どんな仕事でも丁寧に、確実に終わらせることを心がけています」

みんなの一助になるために。知識ゼロからのキャリアアップ

業務をこなし、環境にも慣れてきたころから少しずつ変化が現れたという池田。当時をこう振り返ります。

池田 「入社して数カ月は、専門知識の要らない単純な事務作業でも、指示通りにこなすのに精いっぱいでした。その後少しずつですが、自分が任される仕事がどう役立っているのか、本当に求められていることは何なのか気になりはじめたんです。設計者たちとのやり取りに頻繁に使われる専門用語がわからなくて、ついていけないことが、悔しくて情けなく思うようにもなりました。

自分の意見をいうのが苦手で、積極的に行動できるタイプではありませんが、指示通りにこなしているだけでは物足りないし、多忙な設計者たちの一助にもなれるよう、自分でアクションを起こして受け身をやめようと思いました」

思い切って設計上長に相談し、自分がどんな業務をしたいか、どうなりたいか、何ができるかを伝えた池田。その結果、丁寧な指導を受けて専門知識を必要とする仕事も少しずつ任せてもらえるようになりました。

池田 「ただあれをやりたい!これをやりたい!では任せてもらえない。安心して任せてもらうためにはどうすべきか──そのときに思いついたのが資格取得でした。

当社は電気関係を扱うので、電気工事士資格を取得している人が多くいます。電気工事士の資格取得のために勉強すれば、電気の知識も身に付くし、認めてもらったり安心してもらったりする足がかりになるかもしれないと考えたんです。文系出身で電気の知識はありませんし、数字も数学も苦手な私でしたが、毎日勉強を積み重ねて少しずつ知識を習得していきました」

周囲の支えが心の支えに。働きながら勝ち取った合格

池田の目指した電気工事士とは、電気設備の工事や取り扱いの際に必要となる国家資格で、筆記試験と実技試験のどちらも合格する必要があります。実技試験では専用の工具を扱い、電気器具などへ配線した完成物が採点対象であることから、実際の練習は避けて通れません。目にしたこともない工具を扱い、イメージすらできない配線方法に苦戦する池田でしたが、Web動画を参考にしながら練習を重ねました。

業務以外の時間や休日を使って一人で勉強に励むものの、わからないこともたくさんある中で、高い壁を前にしても乗り越えることができたのは周りの支えがあったから。

池田 「設計の先輩方に、本当によく助けてもらいました。業務で多忙なのに、『頑張る人には時間を割いても勿体なくない』と言ってくれて、私が理解できるまで何度も根気強く教えてくださったんです。

すでに知識も経験も十分豊富であるはずの先輩方も、常に勉強されていて努力を続けているのだから、自分はその何倍も頑張らなければ、という気持ちになりました。私以外にもさまざまな資格取得を目指す人が大勢いて、職場全体が前向きに突き進んでいる感じがしますね。心の支えになっています」

自身の努力と周囲の助けにより、2021年には第二種電気工事士に、翌年には第一種電気工事士にも一発合格した池田。主任への昇進以外に、資格取得で得たものとは。

池田 「まず、ある程度の電気の知識は身に付いたと思います。そして、自分に自信も持てるようになりました。とはいえ、試験勉強で学んだことは広い範囲の中のごく一部に過ぎません。まだまだこれからです!」

やりたいことをできるように、なりたい自分になる

徐々に増えてきつつあるものの、全体としてはまだまだ女性が少ない電気業界で、コツコツと知識と自信を積み重ねてきた池田。今後の目標について聞いてみました。

池田 「まずなりたいのは、有能なアシスタントです。どんな仕事にも対応できるようになりたいですね。そのためには、設計者と同等の知識を身につけなければならないと思っています。 そしてゆくゆくは、盤を設計できるようになりたいんです」

たゆまぬ努力を重ねてきた池田の言葉は、それが単なる理想で終わらない重みを持っています。さらにこうも続けます。

池田 「社歴が長くなるとともに必要になってくる、後輩の育成にも力を入れたいです。2022年8月現在、姫路工場において、設計者のアシスタント業務を担当しているのは私だけですが、仕事に対する姿勢は所属している部署に関係なく伝えられるところですし、後輩にも良い刺激を与えられたらいいなと思います。文系だからとか、元々何をしてきたかは関係なく、自分がどう動くかで状況は変えられる。失敗を恐れず積極的に動けば、知識や経験が培われ、なりたい自分にどんどん変われるんです!」

仕事を楽しむために努力する、楽しくなるからさらに努力する。 人懐っこい笑顔の裏に秘めた熱い想いを胸に、池田の挑戦は続きます。

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