挑戦は文化から生まれる ──社内に初めてのオブザーバビリティ(次世代監視)を導入させる | キャリコネニュース - Page 2
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挑戦は文化から生まれる ──社内に初めてのオブザーバビリティ(次世代監視)を導入させる

オブザーバビリティという言葉をご存知でしょうか。「Observe (観察する)」と「Ability (能力)」が組み合わさった言葉です。時代変化にともないシステムが複雑化してきた結果、オブザーバビリティという概念が注目されています。このオブザーバビリティを5年目の私がIMSで初めて導入しました!【talentbookで読む】

オブザーバビリティとは ─オブザーバビリティは大きな可能性を秘めている─

企業がビジネス環境の激しい変化に対して、データやデジタル技術を活用して、競争上の優位性を確立することをDX(デジタルトランスフォーメーション)といいます。三越伊勢丹のDXに関わるサービスは幅広く、それらを支えるシステムは多種多様なものとなっています。そのため、三越伊勢丹のDXを実現するためには、新しいシステムだけではなく、古いシステムも組み合わせる必要がありました。その結果、新旧さまざまなシステムが関係し合い、とても複雑なシステムデザインとなりました。

そこで、オブザーバビリティの登場です。システムが小さく単純な場合は、異常時にアラートを発報するよう仕掛け、発報した際は都度対応すれば影響は大きくならずに間に合います。しかし、システムが複雑になるとそれでは身体が持ちません。アラートが発報されてから調査を行う際、システムが大きければ大きいほど、そして複雑であればあるほど時間も労力も要します。対応が遅れればユーザーへの影響は肥大化し、信頼も落ちていきます。

そのため、オブザーバビリティでは、システムの稼働データを収集・可視化・分析し、システム改善や効率化といった先手を打つことで障害発生率を下げ、ビジネス価値へつなげています。また、収集されたデータを多角的に分析することで、コスト削減や新たなビジネスアイデアの創出へもつなげることができ、オブザーバビリティはビジネスに大きな価値をもたらす重要な要素として成長する可能性を秘めています。

IMS初のオブザーバビリティ導入の苦労と成長 ─新たな技術と文化の変革への挑戦─

オブザーバビリティの導入は本当に手探りでした。そもそもオブザーバビリティが何なのかがわからず、それらの勉強はもちろんのこと、実際に構築してみても失敗ばかりでした。その上、社内に有識者もおらず、IMDL(三越伊勢丹のグループ会社)のメンバーと一緒に試行錯誤の結果、なんとか形にしていきました。その結果、動くものは作れるようになったのですが、そのままオブザーバビリティ導入へとすんなり舵が切られたわけではありませんでした。

オブザーバビリティはこれまでのIMSの運用保守の文化とは大きく異なる概念です。「お金や手間をかけてまでオブザーバビリティを導入する必要があるのか」。システムに関わる人だけではなく、ビジネス側の人たちもオブザーバビリティの必要性を実感しないことにはオブザーバビリティが受け入れられることはありませんでした。

私はオブザーバビリティを勉強していく中で、IMSにはオブザーバビリティが必要になる確信があったため、どうしても浸透させていきたいと思っていました。そこで、みんなが「便利だ!」と実感できる仕掛けをひたすら作っていき、その都度チームに共有し、その効果を感じてもらうことを繰り返すことで、徐々にオブザーバビリティが信頼されていきました。現在では、メインシステムのほとんどにオブザーバビリティが導入されています。

そして、私はIMSで最もオブザーバビリティに詳しくなり、社内での勉強会だけではなく、社外のユーザー会などで発表もしています。

苦労はたくさんありましたが、この経験から2つ学んだことがあります。

1つめは、「仕事に対する素直さの重要性」。不安点は先延ばししてもその不安は解消されません。分からないことは素直にわからないとオープンにする勇気が大事でした。

2つめは、「とにかく試してみる行動力」。やってみないと状況は変わりません。側で判断するのではなく触れてみて中身を知ってから判断する行動が成功へとつながったと感じています。

少数チームでの開発 ─チーム開発の楽しさが、働きやすい環境と成長への挑戦につながる─

IMSの開発は、10名以下の少数のチームで実施することが多いです。

DXに関する技術は日々進歩しています。そのため、DX系開発のチームは、初めて触れる技術や開発スタイルが必要になることも多く、トライ&エラーの意識が自然と備わっています。新しい挑戦でも深いことは考えすぎず、「まずやってみよう!」という姿勢で挑んでいるので、失敗を責めるのでなく、「なぜ失敗したのか、次はどうするか」ということを深堀することに重きを置いています。

また、IMDLと共に開発を進める機会も多く存在しているため、IMS内部だけでなくIMDLのメンバーからも多くのアドバイスや知識共有をしてもらえます。わからないことを相談することや、こういうことをやってみたいと発信することなど、自発的に動くハードルはかなり低いです。発信すれば「こうするとおもしろいよ」「こんなツールもあるよ」と多角的にバックアップしてくれます。日々失敗を恐れず挑戦し、成長を実感できる環境。エンジニアにとってこれほど働きやすい環境はありません。

普段のコミュニケーションも、仕事内容だけの淡々としたものではなく、チャットでふざけあったりすることが日常茶飯事です。もちろん、仕事は仕事として責任をもって進めますが、仕事だけではないさまざまなやり取りを積み重ねていくことで、互いの信頼感が高まり、仲間になっていくと思っています。役職や先輩後輩の関係を超えてそういった関係性を築けているため、チームや社内の雰囲気がフランクなところが気に入っています。

このようなコミュニケーションは業務にかなり活きました。業務の中で「言いづらい」という状況になることは少なくないと思いますが、そのようなことはなく、気軽に相談や依頼ができました。また、新たな取り組みを行う際も、良好な関係性が築けていることからかつてのチームメンバーが協力してくれ、強力なバックアップとなっていました。

オブザーバビリティの浸透は簡単ではありませんでしたが、このような関係性に救われることも多くあり、この関係性なしではオブザーバビリティの導入はより遅々とした状況になっていたと思います。

オブザーバビリティの今後と私が実現したいこと ─新たな文化の浸透と成熟─

試行錯誤を繰り返し、信頼を得てきたオブザーバビリティですが、まだまだやらなければならないことが多くあります。文化として、より浸透させ、成熟されたものになっていかなければなりません。環境を整備し、個々が理解を深め、スキルを伸ばしていく必要があります。現状はメインシステムへの導入が完了し、メンバー個々のオブザーバビリティの重要性への理解が少しずつ深まってきているのみで、伸びしろは多く残っています。

そのためにはこれからも挑戦をし続けないといけません。足を止めずトライ&エラーをし続けることで常に新しい景色を求め、提示し、オブザーバビリティをIMSにフィットさせた形で最大化していきたいと思っています。

また、挑戦をすることはオブザーバビリティの浸透、成熟化だけではなく、挑戦しやすい風土をより広げ、新たなものを取り入れやすくすることのハードルを下げることにもつながります。これはIMSの今後としても重要な要素になります。

IMSのオブザーバビリティはまだ始まったばかりです。大事なのは今後です。やっとここまでこれた、と思っている面も正直ありますが、文化醸成は簡単な話ではなく、短期間動きがなかっただけで以前と同じ状況に逆戻りすることもあるかもしれません。

常にIMSになくてはならない要素として存在することができるよう、時代と組織に適応する形で常にアップデートを続けていきたいと思います。

そして、その先のユーザーへ早く、良質な状態でサービスを提供し続けることができるよう、新たな顧客体験となる鍵をオブザーバビリティの取り組みから発生させ、実現につなげることができるよう、走り続けていきたいと思います。

株式会社三越伊勢丹ホールディングス

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