やりたいことが体現できる社風。海外出向で経験したカルチャーの違いを開発に活かす
2010年に日産自動車株式会社(以下、日産自動車)が量産型の電気自動車「リーフ(LEAF)」を業界で先駆けて発売して10年以上。その先進的な会社文化は、新たな技術を次々に生み出しています。磯野 祐希は日産の技術開発を担うメンバーのひとり。海外出向なども経験したキャリアから、その想いを語ります。【talentbookで読む】
新人時代に言われた言葉を胸に、お客さまの感覚を意識する開発を続ける
磯野が所属するのは、自動車の走る、曲がる、止まる機能を制御するシャシー制御の開発を行う開発グループ。制御システムを作る部署でチームリーダーとして、協力会社を含め40名ほどのチームの管理を行っています。
磯野 「私が携わっている業務は量産開発のレイヤー部分。自動車を開発する段階で言うと、先行開発をもとに導入する技術の価値を判断し、量産体制を整えて開発が動き出す段階です。たとえば、この技術はセレナ向けだとか、この技術はエクストレイルに合いそうだとか、先行開発で導入することが決まった技術を、実際に自動車に入れ込んでいく担当をしています」
これまでシャシー制御の開発を行ってきた磯野ですが、当初は量産開発の前のフェーズにあたる先行開発を担当。その後、量産開発へと領域を広げていきました。その変遷の中でも常に磯野の中にある考えは、新人の時代に先輩から教わった教訓です。
磯野 「私たちは自動車のエンジニアとして、細かいところまで日々向き合って開発をしています。そこで何より大切なのは、お客さまがどう感じるかということです。
新人のころに先輩に言われた、自動車エンジニアのスペシャリストになるのはもちろんですが、お客さまの感覚を忘れてはいけない、という言葉は常に意識しています。機能やシステムを最適化して、作り込むことも重要なのですが、この機能はお客さまにとって本当に最適な機能なのかということは立ち止まって考える必要があると感じていますね」
4カ月のフランス・ルノーでの経験が、磯野の視野を広げた
そんな磯野が日産自動車に魅せられたのは、その先進的な企業文化。就職活動の軸に置いていたのは、「新しいこと」に挑戦しているかどうかでした。入社当時、日産自動車は電気自動車「リーフ」の発売から1~2年目のころ。そのプロモーションを目の当たりにして、新しい技術を肌で感じたことが入社の決め手になったと語ります。
磯野 「大学時代は、モーターの最適化設計の研究を行っており、実際にガソリン車を電気自動車に改修して、EV耐久レースに出場していました。その研究のバックグラウンドを活かせる業界を中心に就職活動を行っていたのに加えて、新しいことに挑戦しているかというのも企業を選ぶ上で大切にしていました。
そのころ、大学の先輩に紹介されて、当時発売して間もないリーフのプロモーションイベントに行ったことがあり、そこでリーフに試乗させてもらったんです」
そこで感じたのは、大学の研究との大きな違いでした。
磯野 「大学の研究では、電気自動車としていかに尖らせるかということを意識していました。ところが、実情はその方向性とは異なり、量産の自動車という観点でユーザーがガソリン車から電気自動車に乗り換えたときに、いかに違和感を軽減させるかという方向で開発されていました。
しっかりと考えられた開発を当たり前に作っていることに、とても感心したことを覚えています。電気自動車を量産車として出すという企業は、日産自動車が先駆けだったので、モノづくりの姿勢と先進性に感銘を受けて日産自動車への入社を決めましたね」
実際に入社してからの磯野もチャレンジの連続だったと言います。入社からシャシー制御の先行開発で、新しい技術の価値を見出して、自動車に載せてみるという実験の繰り返しの日々を送ります。
磯野 「最初はブレーキ系の先行開発、2年目からはサスペンション制御の開発に携わっていました。栃木県の実験場で数週間、張り付いて制御を直したり、評価したりしていましたね。今考えると女性としては珍しかったかもしれません。日産自動車の社風だと思いますが、その点は男女関係なくフラットにさまざまな業務に関わることができています」
その後、4年目で社内のグローバルチャレンジプログラムに当選した磯野。4カ月間、フランスの自動車メーカーであるルノーへ出張となります。もともと海外志向はなかったと言う磯野でしたが、この経験が現在でもかなり活かされていると言います。
磯野 「当時、あるシャシー制御システムの制御をルノーと日産自動車で、それぞれが持っていたので、一緒にできるかというタスクを持って渡仏しました。現地で私は、日産自動車とルノーの進みたい方向性をまとめながら、どこが重なるのか、両社の橋渡しをする役割を担うことに。
日産自動車からひとりでルノーに入っているので、孤独感はありましたが、そういった海外経験で、現地の車の使われ方やマナー、ルノー側の考え方、働き方など、まったく日本とは異なるカルチャーを学ぶことできました」
これまで日産自動車のカルチャーでキャリアを積んできた磯野は、ルノーで培った経験から、事象を俯瞰して把握しいろいろな立場のメリット・デメリットを考えられるようになりました。
お客さまに届いている実感を得られるのが量産開発のやりがい
ルノーでの4カ月を経て、ドライブモードの量産開発へ。その時期から、マネジメントのタスクもこなすようになります。
磯野 「ドライブモードの量産開発を担当したのが2017年ごろ。かなりの数のプロジェクトが同時に動いていたので、請負会社や派遣社員も一緒に働くようになり、私はプレーヤーというよりもマネジメント側にまわるようになりました」
開発段階では、ルノーでの経験が実際に活きた瞬間があると言います。
磯野 「ドライブモードの量産開発に携わった当初は、この車種にはエコモード、あの車種にはエコとスポーツモードというように、車種全体の考え方が不明確でソリューションも統一されていませんでした。他の車種にも機能を広げていくタイミングで、どんな車種、どんな国向けにも機能を載せられるように開発の考え方を改めました。
ひとりでも多くのお客さまに提供したいという考えに基づいて、 さまざまなお客様のニーズに合う機能は何か?というあるべき姿を定め、それをできるだけ汎用性のある手段で提供できる方法を作りました。日産自動車だけでなく、ルノーで海外の考え方や暮らしにダイレクトで触れた結果、いろいろな場所にいろいろな考え方を持ったお客様がいることを当たり前に感じていたので、4カ月の経験が視野を広げてくれていたことに気づかされました」
2020年にも再びルノーへ2年間出向した磯野。帰国後は、シャシー制御開発に帰任し、マネジメントを担当している磯野が、業務の魅力を語ります。
磯野 「現在の量産開発では、私たちが開発した機能をお客さまに直接使ってもらえることが一番の魅力だと感じています。e-4ORCEやe-Pedalといったシャシー制御の機能がCMでも取り上げられ、シャシー制御とはという説明をしなくても機能名を伝えることで開発しているものがわかるということは嬉しいですね。ユーザーの反響も耳に入るようになりましたので、しっかりお客さまに届いているという実感がやりがいにつながっています」
教育制度が整っている日産自動車。やりたいことが体現できる企業文化も
入社以来、シャシー制御開発に携わり、フランスでグローバルな感覚を身につけた磯野は、これからも一貫してシャシー制御開発に関わり続けたいと考えています。
磯野 「シャシー制御開発は部品ではないので、目に見えないのですが、お客さまが自動車を運転するときに、少し運転がうまくなったと感じさせてくれるような分野です。そこにおもしろさがあるので、今後も続けていきたいと考えています」
日産自動車は、何よりも教育が整っていると語る磯野。1年目は日産自動車の哲学を沁みこませていく期間ですが、自動車作りがわからなくてもしっかり学べる制度があります。
磯野 「まずひとつに日産自動車の教育が充実しています。振り返れば1年目は、デスクに座っているのは就業時間の2割くらいだったほど、実地研修を受けていました。その研修も“日産自動車の車作りとは”という根本の部分からの教育でした。
座学だけではなく、制御の開発のいろはを知るために、3人ほどのグループになってラジコンを作って制御を実装するという研修も受けました。3人それぞれが、異なった制御を担当するのですが、あわせたときに何かしら問題が起こりがちでした。それは現場に出ても同じようなことがあるので、研修の段階で経験できたことは大きかったですね。そんな教育が3年目くらいまでは続きます。
もちろん中途で入社された方にも研修が用意されていますし、業務でわからないことがあった、業務の内容が変わったなど、必要な教育を必要なときに受けられるしくみがしっかりあるので、自分のやりたいことを伝えるための知識をきちんと身につけさせてくれます。
私が先行開発を担当していた若手時代、部署の部長クラスの方や、実験部の先輩に直接意見することもありました。 原理・原則に基づいた論理的な説明は必要ですが、どういったことをやりたいのか?そのためにどういうことが必要か?を決めないといけないときには、上下、部署関係なく、みんなが対等に話し合う環境が日産自動車にはあると思います」
自分のやりたいことを体現したいという考えの方には、ぴったりな環境が整っていると語る磯野。
磯野 「私は入社からシャシー制御の開発を担当していますが、入社後業務がマッチしていなくても、社内応募制度という違う領域に挑戦する制度があります。人材交流も盛んなので、広い分野の方からいろいろ吸収できる環境です。日産自動車は、進みたいキャリアを体現できるので、目標がある方、目標に向けて実際に取り組める方はぜひ一緒に働いてみたいですね」
日産自動車株式会社
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