データが語るメッセージを仲間のために──海外市場を支えるキーマンのチャレンジ | キャリコネニュース
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データが語るメッセージを仲間のために──海外市場を支えるキーマンのチャレンジ

TOYO TIREの売上高は過半を北米市場が占めています。現地では、とくに本格的な大型SUV車両に大口径タイヤを装着することがトレンドで、「OPEN COUNTRY」はその代名詞的なブランドです。この北米での事業展開を日本の本社からサポートするリーダー、半谷 亮伍のこれまでの歩みと展望を紹介します。【talentbookで読む】

経営と販売会社を結ぶ、TOYO TIREの海外営業とは

米州事業推進部で北米チームのリーダーを担う半谷。販売会社の年度計画を管理するとともに、市場動向を見据えタイムリーな商品供給を調整するほか、市場トレンドなどの情報を分析して商品化への道筋を整えていくといった重要業務を担っています。

半谷 「月々の販売計画の進捗状況を経営幹部へ報告する際、販売会社から実績を裏付ける背景の情報をヒアリングした上で要因分析を行い、本社の経営層が的確に状況を把握できるようにフィードバックしています。

また、販売会社からの生産オーダーについては、市場で流通している商品動向の実態を照合し、求められている商品を適切に供給できるように関係部門への調整を図っています。上がってくる新商品の市場ニーズについては、現行品の実績推移や採算性評価はもちろん、サイズ別の市場トレンドなど客観情報を組み合わせ、商品化に向けた検討が進められるようサポートしています」

当社で最も事業規模の大きい北米での販売を支えていくためは、売上高や利益率、商品別の出荷数量といった数字を常に冷静かつ客観的に分析し、経営幹部や販売会社のメンバーに説明する力が必要だと語ります。

半谷 「数字分析は、販売をサポートする私たちが担う大事な役割だと実感しています。経営幹部が毎月、北米市場全体の状況を把握して今後の事業展開の判断ができるように適切な材料を準備することは、たいへん重要な職責だからです。取引先での販売状況、市場動向などの外的要因との関連性なども示唆できるように努めています。

現地販売会社の『こんなタイヤを作ってほしい!』という声を受けて、将来的に市場で必要とされるポテンシャルを見極めるために、ターゲットとする車種の売れ行きや競合品の流通状況、当社内での類型など周辺情報をできる限り多く揃える。そして、関係部署と協議して商品化に向けた検討をより具体化していきます」

何よりも正確な分析をもって対話を進めることを重んじている半谷。その考えは、海外駐在時代の経験から身についたものでした。

活路を拓いた「活用者目線でのデータ分析と共有」

2009年に入社した半谷は、海外販売部でカナダやメキシコ市場を担当。商品の供給や生産要望の調整など、日本で現地の販売活動をサポートしてきました。

入社から5年が経つころ、半谷は、訓練生として海外販売会社の所在する現地で活動をアシストするメンバーに選出され、オーストラリアに赴任することとなります。

半谷 「TOYO TIREには『海外トレーニー制度』というものがあり、グローバルな感覚と幅広い視野をもった人材づくりを目的に、若手の従業員を一定期間海外拠点で研修させる取り組みを進めています。もともと海外で働きたいと思ってこの会社に入社したので、オーストラリアに駐在できたのはとても有意義な経験でした」

しかし、待っていたのはオーストラリア独特の発音、そして前任者はとても優秀だったとの評判。半谷にとって大きなプレッシャーと不安があったと言います。

半谷 「オーストラリアの前任者は営業力があり、英語も堪能な素晴らしい先輩です。一方、私はネイティブの社長が話すオーストラリア独特の英語が聞き取れなくて、最初の3カ月間はまったく会話が成立しませんでした。

苦悩した末、言葉が通じにくい環境下でも職責を果たすため、言葉ではなく『意味のある数字を伝える』ことで意思疎通を図ろうという考えに至ったのです」

これまで、現地販売会社で各スタッフがそれぞれ行なってきた販売の進捗を見て、半谷は全体の損益データはもちろん、出荷状況を顧客別、商品別、商品サイズ別など細かくカテゴライズして傾向分析ができるように抽出。

そして、これらを一つの資料としてまとめて全体共有を図り、今後のマーケット動向の予測を立てて社内プレゼンを行いました。

半谷 「オーストラリアの英語に苦労したので、何かを伝える際には裏づけとなるデータを用意して共有することを意識するようになりました。外から入ってきた私は、それまで当たり前とされていた仕組みも客観的に接することができたと思います。

たとえば、個別に管理されていた情報をつなぎ合わせて編集し、全体にシェアすることで、個別の情報とプロジェクト全体の目的との関連性がそれぞれに理解、意識できるよう働きかけました。

こうして、売れ筋やユーザーがどのようにカーライフを楽しんでいるのかといったトレンドを背景にしながら今後の予測を説明することで、リアリティのあるイメージが広がったようです。仮説にデータが紐づいていれば、曖昧な言葉から伝わる誤りは起こらず、根拠に基づいて立てたシミュレーションにはお互いに納得感も生まれます」

半谷が持ち込んだ新しい仕事の進め方に現地社員も感化され、オーストラリア人社長とも信頼関係を築くことができました。この経験が、次に待つ大きなプロジェクトにも生かされていきます。

「双方に価値あること」を信念に、成立させた大口取引

2年間のオーストラリア駐在から帰国した半谷は、2016年から欧州市場の担当を任されました。

半谷 「オーストラリア駐在を通じて現地事情を垣間見ることができ、海外販売会社に対する思い入れも強くなりました。

ある日、欧州の販売会社からまとまった商品供給の要望が届きました。満額回答したいという気持ちが先行し、社内の関係部署にやや一方的な在庫調整のやり繰りを依頼してしまいました。

基本的に、生産計画は各市場での需要予測に基づいて組まれています。当然、予測とは違う動きも出てきますが、いかに見極めていくかは都度慎重に判断していく必要があります。物流業務の担当者から指摘を受け、全体に目を向けられていなかったことを深く反省しました」

2017年から主力の北米市場を担当することになった半谷に、しばらくしてその調整力が試される大口の案件が舞い込んできました。

半谷 「2019年だったと思います。全米に販売店を展開する大口取引先から冬用タイヤのまとまった数量の取引の話が入っているという連絡がアメリカの販売会社から届きました。

冬用タイヤは季節商品であり、納入時期が少しでも遅れると取引は成立しません。規模も大きくあまり前例がない内容でした。納期までにお客様へお届けするためには、生産部門や物流部門の協力を取りつける必要がありました」

現地と日本のパイプ役として社内の生産、物流体制も考慮しながら各部門と出荷に向けた調整を進める半谷。しかし、心の中には迷いがありました。

半谷 「本件は大口の発注である一方、採算性とのバランス面でやや課題がありました。短期間で回答を準備しなければ取引は見送りになるという差し迫った状況の中、納期だけを気にしてこのまま社内で話を進めていくわけにもいかず、焦りとともに悩みました。

このユーザーは全米での販売網を有しており、季節商品以外の主力商品についても常時取り扱ってもらえるチャンスがあります。この商談が成立すれば、会社にとっても取引先にとってもこの取引以上に価値があることを確信し、自分を奮い立たせました。

現地の販売会社とも連携してこの取引が双方にメリットがあることを裏付けるシミュレーションを進め、構築したシナリオに対しては、社内からもその価値が認められ、対応方針に了解を得ました。現地販売会社がお客様との信頼関係を築き上げ、ようやく当社にオファーが届いたという背景があったので、商談の成立に漕ぎ着けたことはとても達成感がありました。オーストラリア時代の経験が役立ったとも言えます」

奮闘する半谷を見ていた関係部門も協力を惜しまず、無事納期までの出荷を完遂。顧客への回答期限が迫る中諦めず調整をやり遂げた半谷に対し、後日、現地販売会社の社長から直接感謝の言葉が届きました。

半谷 「お客様からの要望にどう応えていくか。現地販売会社とメーカーの間に入って調整を積み重ねることの大切さと責任の重みを感じています。今でもそのお客様と大口の取引が続いているのは、社内のさまざまな部署のメンバーが同じ考えのもとで一丸となって行動したあの始まりがあったからこそだと思っています」

自ら高みをめざし、挑戦の風土を次代へつなぐ

現在、リーダーとしてチームを引っ張る半谷。チームメンバーには積極的に新たな業務へ挑戦してほしいと語ります。

半谷 「TOYO TIREは<めざす企業像>の一つとして『挑戦心と独創的な発想にあふれた闊達な風土を持つ企業』ということを理念に掲げています。

4人のチームメンバーには目の前に新たな業務に挑戦する機会が訪れたとき、自分にできるかどうかという考えは一旦脇に置き、まずはその環境に飛び込んで行動してほしいと考えています。自分のやり方を見つけることや仕事で関係する相手とどう信頼関係を築いていくかは、自分の身をその場に置いて動いてみなければわからないと思います」

半谷自身もこれまでの経験を生かして、次に挑戦していきたいビジョンがあります。

半谷 「オーストラリアでも経験しましたが、実際の商売の現場を見て市場のトレンドを把握することや商談で必要な情報が何かを認識することはとても大切なことです。北米の大口取引の調整に際してその経験が本当に役に立ちました。

いずれは、海外の販売会社の社長として会社に貢献したいと思っています。今までは、販売会社とメーカー本社双方の状況を理解し、パイプ役として海外販売の現場をサポートする立場にありましたが、今後は販売現場の第一線に立ってより深く物事を考え、マネジメントしていくポジションに挑戦し、経営的な視点を養っていきたいですね」

今日もWeb会議で北米の販売会社とこまめに情報交換を行う半谷。コミュニケーションを欠かさず海外現地の販売活動を支えながら、視線の先は次のステージを見据えています。

※ 記載内容は2023年6月時点のものです

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