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日本をもっと元気に!持続可能な街づくりに向け、地元の方と一緒に考え、未来を創る

▲アメリカへの農業留学時の様子

高校生のときに惹かれた「農業への道」。福地 達貴はそこから大学、アルバイト、社会人と農業に携わり続けます。仕事やいろんな人との関わりを経て、日本の農業はもとより、地域や日本全体を元気にする必要があるのでは、と自身の考えに変化が生まれます。現在、北海道神恵内村に出向する福地が考える持続可能な街づくりとは。【talentbookで読む】

農業への強い想いと迷い。視野を広げたいと思った矢先に見つけた出向の公募

現在、富士通Japanから神恵内村に出向している福地。神恵内村への出向に至った理由をひも解くには、高校時代までさかのぼる必要があります。

「高校生のときに電車通学をしていて、そのときに本や漫画をよく読んでいました。そのうちの一冊に、農業高校を舞台とした漫画があって。読んでいるうちに『農業っておもしろそうだな』と惹かれていきました。そこから大学は農学部に行こうと考え、それまで住んでいた関東を離れ、親戚がいた長野県の大学に進みました」

大学在学中は、アルバイトでも農業に携わっていたという福地。

「農家さんのところで一日中作業をすることもよくありました。農作業の後、農家の方と一緒に食卓を囲んで食べるご飯は最高で。魅力あふれる場所で、とても充実した時間を過ごしていました。

ただ、農家の方からは、高齢化や後継者不足への課題をよく聞き、『こんなすてきな産業なのに。なんとかできないか』と考えていたんです」

大学では座学で農業を学び、研究をすることがほとんどだった福地。現場で起きている課題を解決するには、違う角度からの学びが必要だと感じ始めていました。

「どうにかしたいと思っていたとき、ちょうど大学の掲示板にアメリカへの農業留学の募集がありました。日本とは違う農業を学ぶことが近道になるかもしれない。その想いから、2年間休学してアメリカに向かいました。

アメリカの農業は日本とはまるで違い、驚きの連続でした。とくに驚いたのが、データ活用と分業が進んでいることでした。これを日本の農業でも生かせないか、社会人となってどう関わるとそれが実現できるのか、悩みましたね」

最終的に民間企業に就職し、ICTの側面から農業と関わることを決めた福地。入社した富士通では、帯広の地からそのキャリアをスタートさせます。

「私は農業の生産管理システムのバージョンアップに携わりました。また、AIを活用した病害虫診断システムのPoC(概念実証)を行っていて。試験農場で写真を撮って、どの虫なのか、どのくらい農薬をまけばいいのか、といった情報を生産管理システムと紐づけるような実験もしました」

農業の道をめざしてから、変わらぬ熱量で携わってきた仕事だったが、仕事をする中で引っかかることがあったという福地。

「もともとアルバイト先の農家さんをなんとかしたい、と思って入社したのですが、実際の仕事では農家の方と一緒に何かする機会はなかなかなくて。もっと現場に近いところで仕事がしたいと考えるようになっていました。

その一方で、関わる人が増えていく中で、そもそも農業だけにフォーカスし続けることが正しいことなのかと考えるようにもなりました。たとえば高齢化といった課題は農業だけ解決しても、部分的な解決にしかならないですよね。そんなことを悶々と考えていた中で、社内で出ていた募集に目が留まりました」

神恵内村への出向。手探りの中で見えた「地域コミュニティ」の重要性

▲高齢者向けの専用端末の提供で不安解消へ

福地が目にしたのは、富士通Japanの中で公募されていた、DX専門人材派遣の告知でした。

「少し視野を広げ、地域の課題を解決していくことは、最終的に自分が解決したい『農業をなんとかしたい』ということにつながっていくのではないかと考えました。社内で10人以上もの人が手を挙げたという話を聞き、選ばれたときは身が引き締まる思いがしました」

2021年6月に神恵内村に出向した福地。初日から驚くことが起きます。

「出向先でやることが決まっていると思っていたら、漠然とデジタル化、DXという話だけがあり、細かいことは決まっていませんでした。そこで、まずは住民の声を聞いて、どんな課題があるのか知ろうと、全世帯へのヒアリングを実施することにしました。

ただ、いきなり見ず知らずの私が住民の家に行っても話してもらえないだろう、ということで、防災無線を流してもらいました。そのときに『デジタル化に関する質問のため、ヒアリングに伺います』と発信したのですが、『デジタルなんてわからないから、答えられない』という電話が何件もかかってきました」

そこで「暮らしに関するアンケート」という形で発信しなおしてもらうことにしたという福地。

「最終的にはどうやってDXを実現するかを考えたいという目的があります。しかし『デジタル』という言葉に不安を持っているみなさんに、いきなりDXや、デジタル化といった切り口で話しても困ってしまうだろうなと。

なので、まずは神恵内村の良さや困っていることなど、住民のみなさんの話を傾聴するように心がけました。その上で、スマートフォンを持っているのか、自宅にWi-fiなどの環境が整っているのかなど、情報の入手方法やICT環境について質問しました。また、私一人で行うのではなく、地域おこし協力隊*1の方々と協力して進めました」

ヒアリングから見えた声を役場や関係する人と整理し、優先度をつけていったという福地。

「ヒアリングから多くの課題が見えました。65歳の方が人口の約半分を占めるので、そこに直結するような交通手段の不足が課題かなと思っていたのですが、一番大きかった声は『地域コミュニティの必要性』だったんですね。

神恵内村で住民の集いの場だった温泉が、老朽化に伴い閉鎖したこと。コロナ禍で村のイベントも中止が相次ぎ、交流が一気に減り、寂しい想いをしていること。そういった話を聞く中で、私としても地域のコミュニティ活性化がまず欠かせないと感じました」

*1 地域おこし協力隊…都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組み。

先行事例から学び、神恵内村ならではの地域コミュニティ活性化を実現

▲地域の警察とともに見守りの一環としても専用端末を活用

神恵内村へのDX推進で注力することになった地域コミュニティの活性化。福地は先行事例の視察にまず向かいました。

「地域コミュニティの活性化という課題に対して、明確な成功イメージを描き切れなかったんです。やみくもにはじめてもいいことはないと思い、すでに運営がうまく行っているモデルを参考にしたいと考えました。そこで、『ささえあいコミュニティ』を導入し、うまく運用されている印象があった、会津若松市に視察に行くことにしました」

視察を通じて、多くの学びがあったという福地。

「会津若松市の職員の方とお話をする中で印象的な話がありました。役場主導でなんでもかんでもやるのではなく、ユーザ、つまり住民が、使いたくなる地域コミュニティの仕掛けを作る必要がある、ということでした。有益な情報があって助かるとか、ゲームみたいなおもしろさがあるといった住民の方々の声も聴くことができ、神恵内村での展開イメージを膨らませることができました」

さっそく神恵内村に戻り、どう進めていくか検討を始めました。

「神恵内村でも役場職員だけでなく、住民をどう巻き込むかを重要視しました。また10年後の村をビジョンマップで描き、関係者で共有することで、自分たちが向かうべき方向を確認するようにしました。

そうして立ち上げたのが、いつでもどこでもオンラインでつながれる地域内SNS『かもチャン』です。ただ、防災無線で『デジタル化に関するヒアリング』というアナウンスをしたときの後ろ向きな反応から、その推進方法には気を遣いました」

とくに意識した点は大きく2つあるという福地。

「1つは、住民のみなさんにとって有益な情報の発信と、高齢者向けのコミュニケーションサポートです。情報発信では、学校での子どもの様子や、未利用魚*2を活用するための入荷情報などを扱っています。高齢者向けのコミュニケーションとしては、家族との通話や、民生委員による見守りなどに使われています。

もう1つが、高齢者向けの専用端末の提供です。スマートフォンやタブレットをただ配布するだけでは操作に不慣れな方々にとっては高いハードルとなってしまいます。専用端末で使いやすく、セキュリティ面の不安などもなくしたことで、好意的に使っていただいています」

*2 未利用魚…食用可能だが、漁獲量やサイズなどのさまざまな理由で利用されていない魚

持続可能な街づくりのために。各地域との協同で本当の課題に向き合う

▲地域おこし協力隊と協力し、地域コミュニティ活性化などの取り組みを促進

地域コミュニティ活性化は、10年後の村を可視化したビジョンマップにおける、一歩目に過ぎません。しかしその大切な一歩目を確実に進めるためには、多くの人の協力が必要だったと振り返ります。

「まず前提として、神恵内村の職員の方との密なコミュニケーションがあってこそだと思っています。また端末導入にあたっては、富士通Japanのメンバーにも助けてもらうことが多くて。住民説明会や個別訪問へのサポートなど、多くの場面で関わってもらいました。

その他にも、地域おこし協力隊の方々や保健師さん、住民の方々みなさんと協同で歩んだからこそ、今の成功へとつながっていると感じています。これからさらに活用していただけるような仕掛けを考えつつ、住民のみなさん自身がどんどん発信をしてくださることを期待しています」

神恵内村に来て2年が経った福地。これからの未来をどう考えているのでしょうか。

「神恵内村の課題は、教育や交通など、まだたくさんあります。また地域は違っても、同じようにDXの推進に悩む自治体の方は多くいらっしゃいます。各地域との連携をはじめ、今後は北海道や国とも一緒に取り組むべきだと感じています。

そして、ここが一番重要なのですが、『持続可能な街づくり』を意識していきたいです。それは、ただの綺麗ごとではなく、実際にやったからこその考えです」

そのためには、2つ大事になると思っていることがあるという福地。

「1つ目はこちらから一方的に提案するのではなく、地域の方の声を聞き、本当の課題が何なのかを街全体で考えていくことです。単発的な提案をすると、そのときは良かったとしても、10年後には不幸な状態になっているかもしれません。長期的な視野で見て、一緒に未来を考え、創っていく。ほかの地域でもそういったことができればと考えています」

もう1つは、いかに街の人自身に積極的に関わってもらえるか、だと言います。

「村役場の方と一緒に課題を深掘りし、新しい企画を一緒に考えていくようにしています。また住民のみなさんに情報発信を行ってもらうことで、鮮度を保ち、有益な情報が集まってくるようにしています。私が出向を終えた後もしっかりと自走できるようにすることで、持続可能になると信じています」

今後も、各地と富士通Japanの協同の連携をすることで、地域に根差した施策を実現したいと語る福地。日本の各地域がより元気になるような活動をこれからも推進していきます。

※ 記載内容は2023年7月時点のものです

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