短期共創トレーニー制度が教えてくれた、私の価値──「私だからこそできること」とは? | キャリコネニュース
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短期共創トレーニー制度が教えてくれた、私の価値──「私だからこそできること」とは?

デンソーでは、若手・中堅社員の成長を考え、仕事やキャリアにおける可能性を拡げるためにトレーニー制度を導入しています。その制度の一つに、一定期間、社外の方とともに事業創出の経験を積める短期共創プログラムがあり、今回、自らの挙手によって制度を利用しキャリアの突破口を見出した中島 加南子に話を聞きました。【talentbookで読む】

「会社の外に出たときの自分」を客観視したい

2019年に新卒でデンソーに入社した中島 加南子は、シャシーコントロールコンポーネント機器企画室に所属し、当該事業の売上と利益の最大化をめざして、日本地域の年度計画の立案や実績管理など損益管理業務に従事しています。

「会社全体の利益目標に合わせて事業方針は打ち出しますが、私たちが一方的に数値目標を決めるわけではなく、製造・品質保証・技術など各関係部門の活動方針も聞きながら事業全体の年度計画を立案しています」

事業における司令塔とも言える役割であり、発信する一つひとつの情報が関係部門の活動に大きな影響を及ぼすからこそ、関連する他部署の方々と対話する際には、認識の齟齬がないよう内容をすり合わせることにとくに注意を払っています。また、「私たちの見解は明確にしつつ、相手のニーズにも向き合うことを心がけている」と中島は話します。

「対話をしていると、相手が言葉にはしていないけれど無意識に求めている『潜在ニーズ』に気づくことがあります。そうしたときには、個別に1対1で対話するだけではなく、相手の関係者も含めてお話しさせてもらうことを提案するようにしています。

また、メールでの情報共有などでは問題があると感じた場合は、すぐに電話して直接お会いしたりと、関係者の納得感を大切にしながら共に物事を進めることを意識しています。どんなに技術が発達しても、仕事は感情を持った人と人とで紡いでいくものです。対話や信頼関係の構築は欠かせません」

中島は自分の仕事に誠意を持って取り組んできました。しかし、配属されてから3年が経ち、一通りの実務はこなせるようになったものの、次第に悩みを感じるようになったと言います。

「私の仕事は数々の変化がある中でも、他部署に働きかけながら事業目標を達成し、持続的成長につなげる役割。なくてはならない重要なポジションなのは理解していますし、組織の一員として目標達成意識を持っているものの、自分が直接何かを生み出しているという感覚を持ちきれずにいました。そして、『“私だからこそできること”って何だろう』と真剣に考えるようになっていきました」

「自分の強み・弱みは何なのか」「私の付加価値って?」──中島の中で、それらを見出したいという思いが強くなりました。

「何かにぶら下がってしか生きられない自分は嫌なんです。今後のキャリアを考えたときに、これまで自分が培ってきた力が他組織や社外でも発揮できるのかを知りたいと思うようになりました」

キャリアの悩みを相談していた先輩社員から社外でのトレーニー制度を紹介された中島は、すぐに参加を決意します。プログラムの受講中は、業務の負荷を考慮してもらう必要があるため、上司や一緒に働くメンバーにも率直な思いを打ち明けました。

「デンソーでの業務と両立できるか心配ではありましたが、ただ留まって考えているだけではなく、とにかく行動しながら考えようと思っていました。上司や一緒に働くメンバーも私の挑戦を応援し業務もフォローしてくれたので、とてもありがたかったですね」

私の行動を「変えた」仲間からの言葉

中島が参加したのは、社内の通常業務をしながら、半年間にわたって社外のコミュニティに所属して課題解決に取り組む「短期共創プログラム」です。所属する会社や職位、年齢もまったく異なるメンバー構成で、誰も明確な解を持たない社会課題に対して一つの提案を練り上げるものです。

「今回のテーマは、京都に実在する地域密着型企業の課題を抽出し、解決策を提言するというものでした。業務の合間を縫って、実際に京都に赴いて関係者にヒアリングや壁打ちを繰り返し、協議を進めました。通常業務では社外の方に直接ヒアリングする機会はないので新鮮でしたね」

慣れ親しんだ組織での仕事(ホーム)と外的刺激(アウェイ)の行き来の中で提案を練り上げるこのプログラムは、デンソーの人事制度改革の中で初めて取り組むものでした。

中島はその1期生です。

限られた時間の中でも、チームの中でリーダーシップを発揮し、与えられたミッションを達成しなくてはならない焦りが先走り、思うように進行できなかったと中島は話します。

「解がなく抽象度が高い問いに向き合う中でのチームビルディングに苦戦しました。そこには、上司や先輩もいません。年齢が違う対等な立場のメンバーで、進め方から最後の提案まで自分たちですべて決めていくのです。そんな環境下で、議論が思うように進まず自分の荒削りの意見が『それで、いいんじゃない』と安易に収束することに初めてもどかしさを感じました。

今思えば、解のないものに対して全員の想いが始めから合うはずがないんです。ズレが顕著になったのは終盤になってからのこと。いざ提案資料を分担して作成したものの、個々の認識や想いのズレが浮き彫りに…… 。通常業務の?忙期とも重なってめげそうになるのと同時に、序盤に感じていたもどかしさにもっと向き合えていたら、と悔しさがこみ上げました」

それでもなんとか立て直しをはかり、最後まで走り切った中島でしたが、最終日の振り返り会でチームメンバーから言われた言葉が強く心に残っています。

「『気負うあまり、自分をすり減らしているように思える』『忙しいとは“心”を“亡くす”と書くんだよ』と。私にはもともと、ものごとを最後まで責任を持ってやり切ろうとする気質があります。それ自体は悪くないことだと思うのですが、『頑張らないと』という気持ちだけが先走って、まったく余裕が持てなくなる場面もしばしば。『忙しい』が口癖になっていました」

わかってはいるものの変わることができなかったという中島ですが、プログラムに参加し、同じく走ってきた仲間に指摘されたことで、心に刺さったと言います。

「余裕のない私の姿を客観的に見るとどうなんだろう……。チームメンバーが違和感を持っても声をあげづらいときが多々あったでしょうし、もしかすると、デンソーで一緒に働いている方々や後輩たちも同じことを感じている場面があるかもしれないと考えるようになりました」

自分に対し、忌憚なく言葉をくれた仲間に感謝しているという中島。

「忖度なく、本当に私のそのままの姿を見て言ってくれているんだなと感じ、素直に受け止めることができました。私は心を亡くしたくなんかない。自分をすり減らし、『生きる』をなぁなぁにしたくない。だから自分のあり方を実際に行動に移して変えていこうと思えたんです」

私の「強み」をもっと活かせる働き方をしていきたい

プログラムを経て自分自身を客観視できるようになった中島は、少しずつ仕事との向き合い方も変わってきました。

「ポジティブになりましたね。プログラムに参加する以前の私は、何でもかんでも自分でやらなくてはいけないと思い込んでいました。でも、自分の内面に気づくことができた今、初動を早めて積極的に周りの方を巻き込んだり、頼ったりすることが以前よりもできるようになりました」

自分の心にも余裕ができたことで、後輩との接し方にも自身の想いを乗せる余白が生まれてきたと言います。

「忙しさに追われていたときは、なぜこの仕事をしているのかを振り返る機会を逃してしまいがちでした。しかし今では、一つひとつの仕事の意義やつながりを言語化し、自分の中でしっかりと解釈した上で、後輩にも伝え、対話することを意識するようになりました」

また、プログラムを通じた反省が成長につながる一方、プログラムを通じて見えた「強み」も自信となって中島を支えています。

「チームメンバーから、『積極的にリーダーシップを発揮し、自身の考えを開示しながらまとめあげていく力を見習いたい。プログラムが終わって会社に戻っても、ぜひ周囲の方たちを突き上げていってほしい。そうすることで、ますます会社がよくなっていくと思う』と言ってもらえたことが本当に嬉しかったんです。私は求心力を発揮して推進するスタイルが『強み』であり『付加価値』なんだと、認識することができました」

そのスタイルを現在の仕事の域を超えて発揮していきたいと感じた中島。今後の人生のビジョンも少し見えてきたと言います。

「まだ世の中に浸透していないけれど、自分自身がワクワクするような新しい技術や価値観を見出し、周りを巻き込みながら事業化させることに携わりたいと思っています。具体的なテーマはまだ見えてないんですが(笑)。そんなふうに、自分の『強み』をもっと活かした働き方をしていきたいですね」

高みをめざしつつ、自身の「枠」を飛び出し、広げたい

将来のキャリアへの迷いがトレーニー制度に参加するきっかけとなった中島ですが、参加を終えてみて、今では目の前にかかっていた雲が晴れつつあります。

「今回トレーニー制度に1期生として挑戦することは、一つ自分の「枠」を飛び出した行動でした。行動したことで、社外だけでなく同じくトレーニー制度に参加した社内の方とのつながりもでき、『デンソーってこんな前向きにおもしろいことやっている人たちがいるんだ!』と知って衝撃でしたね。

キャリアについても、自分の今見えている範囲だけでいろいろと考えるのはもったいないなと思い、普段関わらない部署の方々とも話す機会を作るようになりました」

客観的に自分を見る視点を身につけた中島。本業である事業企画の仕事における今後のビジョンも見えてきたと言います。

「まずは今の仕事の幅を広げ、さらに日本だけではなく海外グループ会社を含めた連結管理を担うことで、事業全体の将来の方針策定に携われるよう精進していきたいです。そして、将来的には、これまでの社内調整を中心とした役割にとどまらず、外へ積極的に出向き、生きた情報と自身の想いを乗せながらありたい姿を掲げ、航路を描いていきたいと思っています」

短期共創プログラムをきっかけに、キャリアの幅を広げるチャレンジに一歩踏み出した中島。旅は、まだまだ始まったばかりです。

※ 取材内容は2023年6月時点のものです

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