工場現場の経験と好奇心でオンリーワンに挑む。日産の技術を法規から支える技術渉外 | キャリコネニュース - Page 2
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工場現場の経験と好奇心でオンリーワンに挑む。日産の技術を法規から支える技術渉外

▲法規文の分析結果の説明をしている齋木

技術渉外に従事する入社6年目の齋木 亮作。工場でのエンジニアとしての経験を経て、現在は自動運転やコネクテッドといった最新の技術領域の法規を担当。プライベートでは社会人修士として大学院で自動運転に関する研究をしています。その飽くなき挑戦の軌跡を辿りながら、技術渉外と最先端技術の関わりについて語ります。【talentbookで読む】

法規がクルマに与える影響を開発部署と一緒に考え抜き、より良いクルマづくりを

齋木が所属するのは、日産テクニカルセンターの法規・認証部。クルマを世に送り出すために守らなければならない安全や環境の法規を扱い、社外と渉外を行う部署です。

「日産自動車株式会社(以後、日産自動車)は世界中で自動車を製造・販売しているため、それぞれの国の法規に従って製品やサービスを提供する必要があります。法規・認証部には、次のような使命があります。

それぞれの国の最新の法規情報を収集、分析し、それを将来販売するクルマの開発に反映させるために関係者に確実に展開すること、将来法規や政策がより良いものになるよう、将来技術動向などを踏まえ、メーカーの視点から関係当局に意見反映すること、実験・設計完了した車両の法規適合性を各国認可当局に申請し、生産・販売の許可を得ること、そして安全・環境に関する全社のCSR活動へ貢献すること。

私のグループは、まだ世に出る前の法規案がクルマづくりに与える影響を検討し、開発部署と共にクルマ開発に確実に反映されるように取り組んでいます。よりよいクルマづくりのために関係当局に働きかけることもあります」

社内に確実に正確な法規情報を展開し、法規をクルマ開発に確実に反映させることこそが、法規・技術渉外グループに籍を置く齋木のミッションです。

チーム内で仲間と相談し、協力し合い、仕事を進めている齋木。仕事のスピードと質を上げるために、大切にしていることがあると言います。

「私のグループはさまざまな国の政策、新しい法規情報や法規の基になるかもしれない情報をいち早く入手し、分析し、正しく伝えることが求められます。しかし、情報の量や入手頻度が高いため、メンバー間の報連相のスピードを高めておく必要があります。私は半年前に異動してきたばかりで、まだひとりでは質とスピード、両方を高めることができません。そこで、すばやく周りの人からフィードバックをもらうことを意識しています。

たとえば、外国語で100ページ以上に及ぶような法規原文のポイントを要約することがありますが、ひとりだと時間がかかってしまうだけでなく、要点の抜け漏れも起こりえます。そこで上司や先輩に早い段階でチェックしてもらうために、たたき台をスピード重視で作成しています。チームを巻き込み協力を得ることで、ひとりで考え込むよりも、高品質な成果物をスピーディーに完成させることができ、結果としてチームとしてのパフォーマンスを上げることにもつながります」

高山の凸凹道を5万km走っても故障ゼロの信頼から入社。入社4年目には大学院へ進学

▲ボリビア時代に家族で乗っていたNissan X-Trail (標高4671m Laguna Estrellaniにて)

子どものころからクルマが好きだった齋木。とりわけ日産自動車には特別な思い入れがありました。

「父の仕事の都合で、大学に入学する前まで海外で暮らしていたのですが、ボリビアに住んでいたとき、日産自動車の品質の高さを痛感する出来事がありました。

当時、父が乗っていたのはSUV型のエクストレイル。世界一標高が高いボリビアの首都ラパスは標高約3650mで空気が薄く、当時未舗装で石畳の凸凹道ばかりでした。厳しい道路環境で2年間で約5万kmも走行したにも関わらず、1度も故障することがありませんでした。その経験から、『日産っていいクルマをつくる会社だな』と子ども心に思ったのを覚えています。

その印象は褪せることなく、自然と日産自動車への就職を志望していました。私の出身地である埼玉県から近い神奈川県で働けることや海外にも複数の拠点があり、さまざまな国籍の方が働いていることにも惹かれ、入社を決めました」

入社後に配属されたのは生産部門。約5年半にわたり工場で物流エンジニア技術員を務めました。現場では、コミュニケーションの大切さを学んだと言います。

「入社3年目に配属された栃木工場ではFAIRLADY ZやARIYAといった新車の立ち上げや物流設備の導入と保全を担当しました。新車の立ち上げや設備導入を現場スタッフと一緒に取り組む際、工事計画を理路整然と1回で伝えるよりも、足繁く現場に行き、関係性を築いた上で伝えるほうが、気持ちよく動いていただけると感じました」

1回の説明やメールだけで伝わるとは限らず、いくらお願いしても「協力したくない」と一蹴されてしまえば、工事は進まない。齋木が工場で学んだのは、そうした人との「三現主義」でのFace To Faceの関わり方の大切さでした。

「工場では、現場に集まり、対象の設備や部品である現物を見ながら、現状から現実的に考え、話を進める『三現主義』の基で仕事をします。新型コロナウイルス感染症が広がる状況下で対面で話ができなかったときも本当に伝えたいことはメールだけで済まさず、資料を準備しリモート会議できちんと説明することを心がけていました。

どうしても都合がつかないときは、3分でもいいので電話で話をして、お互いの声を聴き、意思疎通を図るようにしていました。この考え方は、法規渉外の仕事においても、政策や法規、要人の発言と言った事実をベースに分析を進める上で役に立っています」

工場時代、工場設備の保全にも取り組んだ齋木。入社4年目には、自動車に関わる研究をしたいとの考えから、社会人として大学院に進学しました。

「学生時代、都市での人の流動の解析をテーマに研究をしていたのですが、卒業後も研究を続けたいという気持ちがずっとありました。工場勤務時代に設備を見ていたことをきっかけに、設備の効率化をテーマにした研究ができれば、研究欲が満たされますし、学びを会社に還元できるとも思いました。そんな私の個人的な想いを職場は受けとめてくれ、仕事を続けながら大学院に通うことができました。

現在はコネクテッドや自動運転を担当していることから、研究テーマも、都市計画との関連性が強いコネクテッドと自動運転に変更しました。平日は会社で実務を積み、休日は研究する過程で論文を読みます。大学では勤務時間内では知りえないような研究内容を学ぶことができます。学んでいることで初見では理解することが難しい自動車の専門用語が仕事でもわかるようになりました。仕事と大学院の二足の草鞋を履くのは苦しいこともありますが、双方に相乗効果があり、学ぶことが楽しいです」

社内公募制度を利用した自動運転という新分野への挑戦。アンテナを高めて奮闘中


▲入学当初はリモート授業が主流で、発表会があるときや休日に大学に通っている

2022年10月にオープンエントリー制度(社内公募)で法規・技術渉外部門への異動をした齋木。異動に至ったのは、大学院で自動運転を扱う研究室に入り、仕事でも自動運転分野に関わって専門性を高めたいと考えるようになったからです。

「私は高校を卒業するまで英語・中国語・スペイン語を話す環境の国で過ごし、大学入学のために日本に帰国しました。技術渉外は外国語を使い、日産自動車の海外拠点や政府当局とやり取りをするので、海外経験と学んできた語学力から挑戦できるのでは、と思いました。

また、大学で専攻した都市計画は建築物だけでなくクルマやインフラなどを複合的に扱う学問で、都市交通の未来に深く関係するとされる自動運転にはもともと関心がありました。2021年から社会人として大学院で勉強していたのですが、異動を機に自動運転を扱う研究室にも加わり、仕事でも大学院でも自動運転に関わることで専門性を高めたいと考えました。語学力と都市計画、そして自動運転への興味から仕事に関われるという期待が応募理由でした」

このキャリア制度により異動を実現し、今は最先端領域を扱うチャレンジングな業務に奮闘中だと言います。

「私が担当するコネクテッドや自動運転は、世界中で政策や法規の検討や技術開発されている分野です。法規で規定すべき部分や倫理的な観点など議論途上にあり、とてもチャレンジングな領域だと感じています」

新たな仕事に就いてから、情報の見方が変わったと語る齋木。上司から「技術渉外は言葉で勝負をする仕事」と教わったこと。チームメンバーの情報に対する姿勢を垣間見たことが、その意識変革のきっかけでした。

「異動後は担当分野に限らず幅広い情報を読むようにはなりましたが、当初は漠然と政策文や法文を読んでいるだけでした。『仮説を立てて情報を読み、正確に言葉を読みとり、正確に言葉を使い情報を伝える』という基本を教えられていましたが、正直ピンと来ていませんでした。

しかし実際に先輩と一緒に法文を読み合わせする機会があり、そこで単語の一つひとつが与える微妙なニュアンスの違いや定義、印象を考慮して丁寧に読み解く姿を見て、上司からのフィードバックの本当の意味を少し理解することができたと思っています。

たとえば、政府の要人が発した内容を漠然と聞いているとただのニュースを聞き流しで終わってしまいます。しかし、仮説をもって具体的な発言内容がどの政策からきていて、将来的にどの法規に紐づくのかを考えていくと、点と点がつながり線になり、その国が成し遂げたいことが見えてくることがあります。まだまだ、情報の見方を学んでいる最中ですが、早く自分の言葉で勝負ができるようになりたいです」

オンリーワンの分野にチャレンジし、“齋木 亮作”個人の名で勝負できる存在をめざして

▲工場時代に立ち上げを担当したFAIRLADY Z(Z34)

齋木が技術渉外の仕事の醍醐味として感じているのは、世界中の自動車の政策、法規やその策定過程にある論議を通して、日産自動車の技術方針に触れられること。将来技術と社会動向といった世の中の動きをいち早く学べるのも魅力だと感じていると言います。

「理系からすると法規はあまり触れることのない分野のため、異動したてのころは自分が法規で何をしたらよいのか、いまいちわかりませんでした。しかし、法規論議やその政府の上位政策を紐解いていくことで、たとえば世界中で自動運転やコネクテッド領域がどのような方向で進んでいくかを垣間見ることができます。

技術者との論議も将来技術を理解する上で不可欠です。世界が注目している技術論議と社会動向を結び付けて理解できることは、技術渉外ならではだと感じます。私は新しい分野に関心を持ち知識と経験に裏付けられた個の名前で勝負ができる存在になり、自動車産業に貢献したいと思っています。

個の名前で勝負するためには、実績を重ねて周囲の信頼を得なければいけません。法規・技術渉外の基礎から徹底的に学び、できることを一つでも多く増やしていけるよう日々努力していきたいです」

齋木の強みは、クルマづくりの要である工場のエンジニアとして学んだ三現主義に基づいたマインドセット、海外で育った経験や都市計画というバックグラウンド、そして社会人になってからも大学での研究に取り組む好奇心。齋木は、その強みをこれからも発揮していく心づもりです。

2023年で入社6年目を迎える齋木。多方面の部署と関わりながら仕事をしてきた立場から、日産自動車の魅力について次のように話します。

「日産自動車には部門・部署が変われば別会社かと思えるほど、国籍や老若男女を問わずさまざまな人が働いています。自動運転の開発者、工場のエンジニアや車両組立作業者など、バックグラウンドが異なるアツイ想いを持った人たちが集まっており、こちらも強い想いを伝えれば、それぞれの立場からどうしたらより良いクルマをつくれるのか頭を抱えながら一緒になって考えてくれます。

私が所属するチームは、中途入社の人や他部門から異動してきた人で構成されており、私のような生産部門の物流エンジニアから開発部門の技術渉外というまったく異なる部署からの挑戦も歓迎してくれる懐の深さがあります。年齢や性別・国籍を問わず挑戦する機会を与えてくれるのが日産自動車の魅力です」

コネクテッド・自動運転技術を搭載した自動車が安全に走れる未来。その実現をめざして、齋木はオンリーワンへの探求と挑戦をこれからも続けていきます。

※ 記載内容は2023年6月時点のものです

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