商品開発・統括が語る仕事へ真っすぐぶつかる熱い想い──100年続くブランドになるために | キャリコネニュース
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商品開発・統括が語る仕事へ真っすぐぶつかる熱い想い──100年続くブランドになるために

▲幼少期の高橋(左)。兄と

DEAN & DELUCA F&B部門商品開発チームの統括を務める高橋 伴樹。学生時代のアルバイトから飲食業界にのめり込んでいった高橋の、これまでのキャリアや仕事に対する想いについて紐解きます。【talentbookで読む】

初めての就職先は飲食店の店長──挑んだ飲食業界への一歩

大阪で生まれた高橋は親の転勤により、1歳から6歳までをアメリカのテネシー州で過ごしました。高橋は幼少期の海外生活についてこう語ります。

「わが家では母が日本食を作ってくれることが多かったです。しかし季節のイベントやホームパーティーのときはターキーを食べたり、日本の『たこ焼きパーティー』のような感覚で『タコスパーティー』をしたりして、アメリカの食文化も楽しんでいました。

物心がつくころにはアメリカで生活していたので、日本に帰ってきたときには文化の違いを感じ、環境の変化に慣れるのに少し時間がかかりました。しかし、両方の文化を経験しているからこそ、ナチュラルに人のことを受け入れられるようになりましたね。人がそれぞれ違うのは当たり前なので、この人はこういう人なんだというように多様性を受け入れられるようになったと思います」

高橋には「人生の師匠」と呼ぶ人が3人います。そのうちの1人との出会いが、飲食業界にのめり込む大きな転機になったと言います。

「学生時代はバーやレストランでアルバイトをしていました。大学3年生の時に近所の小さいショットバーで働き始めたことで、さらに飲食業界にのめり込みましたね。そこで出会ったのが人生の師匠の1人目です。その方のお客さまや仕事に対する姿勢を見て、『こんな大人になりたい、この人みたいに仕事をしたい』と思いました」

飲食業界に進むことを決意した高橋が大学卒業後、初めての就職先に選んだのは「カフェ」。そこで任されたのは、なんと店長としての店舗立ち上げでした。

「当時、働いていたお店の常連の方からのヘッドハンティングでした。店長として物件探しからデザインまでをすべて関わらせていただき、アパレル業界とのコラボや週末のライブイベント、若手アーティストの作品を店内に飾るなどさまざまなことに挑戦してみました。

当時は『とりあえず、やってみよう!』という勢いで、挑戦してみて足りないところがあればその都度、ギャップを埋めていくようにしました」

店長として一見成功しているように見える高橋でしたが、当時は自身の実力不足を感じていたと言います。

「当時の僕は原価率の出し方も知らなければ、棚卸しのこともよく知りませんでした。このまま飲食業界の基礎知識を知らずに過ごしていたら、これ以上の成長はできないのではないかと考え、自分の納得するタイミングで退職することを決意しました」

退職後は成長するために「たくさん苦労したい」と思い、関西のフレンチレストランでギャルソンのアルバイトを開始した高橋。想像を超える厳しい世界を経験し、働く人の「プロ意識の高さ」を学んだと語ります。

「仕事ではここまで高い基準が求められるんだということを痛感しました。大変でしたが、周りで働く人を見て興奮している自分もいるんです。『どうやったらこの人たちのようになれるんだろう』と常に考えて業務にあたっていました」

高橋は2年間ギャルソンとして勤務した後に、同系列のパン屋にて店長に就任します。

「前職で店長の経験があったことから、いきなり任されたんです。パン屋で働いた経験はありませんでしたが、前職は僕の中では失敗に終わったと思っていたので、リベンジするチャンスだと思い、引き受けることにしました。人間って不思議なもので、入社当初はわからなかった小麦の味も3カ月くらい食べ続けると違いがわかるようになってくるんです(笑)。

その店では1年間で前年比300%を超える利益を達成し、社内で表彰もされました。当初関西で勤務していましたが、『関東の店舗も見てほしい』と言われ、パン屋部門の全店を任されることになりました」

マネージャーとして成功を収め、見事リベンジを果たした高橋は全店舗のマネジメントとMD(マーチャンダイザー)をするため関東に転勤します。そこで、ウェルカムとの出会いを果たします。

売り込んだのは商品ではなく自分自身

▲DEAN & DELUCA 吉祥寺店メンバーと

関東に転勤した高橋はある日、DEAN & DELUCAに商品を卸していた知り合いから「DEAN & DELUCAが商品を卸してくれるパン屋を探しているそうだから、会ってみないか」と誘われます。

「ウェルカムとの最初の出会いは『パン屋』としての商談でしたが、会社のさまざまな資料を見ていくうちに次第に惹かれていきました。DEAN & DELUCAって他にどんなことをしているんだろうと、自分の中の知的好奇心がくすぐられたんです」

当時、自身の行く先を考えていたという高橋。商談の数日後に当時の担当者に店舗の前で「パンではなく、僕を雇ってもらえませんか?」と自分を売り込んだと言います。担当者にはかなり驚かれたと言いますが、その後面接へと進み、2008年に入社。3カ月後にサブマネージャー、約半年後にはマネージャーとして六本木店に配属されました。その後もさまざまな店舗を任され、そのたびに苦労を味わいますが、果敢に向き合ってきたと語ります。

「店舗によって需要や客層はバラバラです。そこにしかない条件のもと運営していくので、どのように成果を最大化していくかが大切だと思います。とくに大型店舗から小規模の店舗に異動した時は、マネジメントスタイルが変わってくるので気づきもありました。前の店舗でやっていたことが別店舗に行くことで客観的に見え、『あの業務ってもっと効率的にできたよな』と思い返すこともあり、その経験が強みになったと思っています」

マネージャーとして各店舗で課題を見つけ前向きに活動していくうちに、高橋の中で次のステージへ進みたい気持ちが大きくなっていきました。

「DEAN & DELUCAは商品からの発信というものをとても大事にしているんです。マネージャーは商品への想いをMDから聞き、それをもとに販売戦略を考えてきました。前職でMDもしていたこともあり、『もっとブランドの中心に近づきたい』と強く思うようになり、MD職へ異動を希望しました」

DEAN & DELUCAのMDに挑戦してみて「自分の天職はこれだ」と感じた高橋。しかし、その中でも忘れられないエピソードがありました。

「MDになって半年、1年で一番の繁忙期であるホリデーシーズンに向けて商品を選んだ時のことです。『売れる確率の高い商品』を選び、売り場を構成した結果、売上がバッチリ取れました!喜んだ矢先に上長からまさかの一言を言われました」

「つまらない売り場だ」。自分の中では成功だと思っていた企画に対しての一言に、驚きを隠せなかったと言います。

「正直、最初は頭の中が真っ白でした。うちへお買い物に来てくれるお客さまは『今日はどんな商品があるかな』というワクワクした気持ちで来てくれているのに、僕が作った売り場は『ただ売れる商品を集めた、魅力のない売り場』だということを伝えてくれたのだと思います。

MDの仕事はマネージャーの仕事とは異なり、『今ここにはない価値づくり』という観点で企画を作らなければならないということを学びました」

その経験を生かし「自分が伝えたい、ときめくもの」という想いから企画し、発案したのが「ツール・ド・フランス」というコンセプトの企画でした。

「食の王国フランスで、まだ見たことのない創業100年を越える地方の伝統的な作り手、日本未上陸の商品を全土から集めて紡ぎ、ストーリー仕立てに。最初は自分の信じたものを出すことが怖かったです。

でもそれが業績に結びつくと、自分が認められたようでうれしかったことを覚えています。自分が本当に伝えたいものを熱量をもって発信していくことが大切だと、あらためて認識する機会になりました」

しかしライフスタイルブランド「TODAY’S SPECIAL」の事業統括などを担当したその後、高橋は一度ウェルカムを退職することになります。

「当時、壁にぶつかることが多くひどくもがいていました。今思えばつまずいていたのは小さな小石程度のものだなと思うんですけど、それにつまずく自分が許せないし、不甲斐なく思っていました。

40歳を目前にしてその壁を乗り越える力をつけるために、外に出てみることにしたんです」

ウェルカムでの再挑戦──MDという仕事の魅力

▲NYでの一枚

2018年の退職後、2つの会社を経験した高橋。

飲食店を経営している会社でMD兼ブランド責任者として3年、飲食事業部の本部長として1年間を過ごしました。4年間で計20ブランドと携わり、会社を離れてみて気づいたことがあったと言います。

「離れてから4年間、仕事で伝えるノウハウや大切にしている根本的な考え方がすべてウェルカムで教わったことだと気がつきました。

当時勤めていた会社でより高みをめざす道も考えていましたが、やり切ったと思ったタイミングで考え直したんです。『もう一回やりたいこと、おもしろいことをやりたい人たちと一緒にしたい』と思い、ウェルカムに復職することにしました」

復職した高橋は現在、ブランド企画室 F&B部門の統括を務めています。

「ベーカリー、ドリンクやデリのMDをしつつ、部署全体の統括として商品全体の戦略や方向性を定めたりしています。僕たちブランド企画室の仕事は、『DEAN & DELUCA』というブランドの価値を創りあげる一端を担う仕事です。『ライバルは個人店』なので、海外のレストランや現地のケーキ屋さんなどもライバルです。そこを目線として世界に向けて発信をしていくのは、この仕事の魅力的なところだと思っています」

MDとして海外へ訪れることも多い高橋に、思い出に残っている作り手について聞きました。

「僕たちは早い段階から販売していく商品を選定しています。たとえば、バレンタインに関しては6~7月には方針が定まっていることが多く、この時期のMDは1年間の中で最もチョコレートを食べる時期でもあります。

日本でも世界的に有名な海外のショコラティエのところに実際行った際、『あなたのチョコレートが好きなんです』とお会いすると同時に伝えたときはとても驚かれました。通常、大体は『いつから販売で、原価率はこうで……』など取引の条件の話をするんですけど、お会いしたらまず想いを伝えたくて、そうなってしまいました(笑)。ショコラティエの方も初対面の僕がいきなり来て『好き』を連発したものですから熱量を感じてくださったようで、おもしろがってくださり契約につなげることができました」

チームの船長として目標に向かって舵を切る

これまでの取り組みを振り返り、高橋はブランドを作り創りあげていくために目標とする姿とチームへの想いをこう語ります。

「DEAN & DELUCAが誕生してもうすぐ50年経ちますが、僕は『100年続くブランドでありたい』と思い、仕事をしています。一人ひとり違う人間だからこそ、ぶつかることもある。そのためにチームの統括として多様性を受け入れ、みんなとフェアにそしてフラットでいるようにしています。

課題に対してロジカルに解決していくこと、お客さまをワクワクさせるクリエイティブを発揮することの2つを見失わないようにチームの舵を切っていくことが大切だと思います」

また未来のメンバーに対して、必要なのは「やりたいと思う気持ち」だと言います。

「やりたい!と思う気持ちの強さがあれば十分だと思っています。その想いの強さがある人と一緒に仕事をしていきたい。人それぞれ足りないところがあるのは当たり前で、だからチームだとやれることが増える。新しい人が入ってきたからこその発見や価値観がありますし、新しいことに対してチームで吸収し成長していきたいですね」

出会う人たちから常に刺激を受け、そのたびにめざすべきところを見つけ上へ上へと引き上げられてきたと語る高橋。彼の終わりなき探究心によって動く力でこれからもチームを引っ張っていき、ブランドを創りあげていきます。

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