育休をキャリアや人生を見直す機会に──誰もが違和感なく選択できる組織をめざして | キャリコネニュース
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育休をキャリアや人生を見直す機会に──誰もが違和感なく選択できる組織をめざして

▲写真左から 浜名 冬樹  田中 大輔  本多 雄輔

社員一人ひとりが、自身の価値観で選択ができる組織をめざす北國FHD社員組合。その選択の一つが男性社員の育児休業取得。しかし、普及しはじめたところで戸惑う声も聞こえてきます。育休を経験した浜名 冬樹、田中 大輔、本多 雄輔が、育休を取った理由や育休期間の過ごし方、価値観の変化について語り合います。【talentbookで読む】

出産時や妻の帰省時など、それぞれのタイミング・期間で育休を取得

──まずは、自己紹介も兼ねて現在の仕事内容とこれまでのキャリアを簡単に教えてください。

浜名:現在はリース事業を担当しています。北國銀行リース部リースグループマネージャーと、関連会社である北国総合リース株式会社企画部マネージャーを兼任していて、リース業務の事務効率化や商品企画、リース事業に関する社内外への情報発信を行っています。

入社は2007年で、複数の営業店を経験した後、2018年4月から本部に異動。事務統括課で業務効率化などを担当していた経験が、現在のリース事業での業務に活かされています。

田中:私は2017年に入社しました。営業店を5年経験した後、デジタル部デジタルグループに配属され、現在はデジタルマーケティングを活性化することがミッションです。

キャンペーンの企画や、ネットバンキングとデビットカードがセットになった「HOKKOKU LIFE+(北國ライフタス)」などの商品サービス企画、プロモーションの推進を行っています。

本多:私は労働組合の仕事をしています。社員のキャリア自律支援やエンゲージメント向上への取り組みが主な業務です。より社員目線で会社と地域に貢献できるように職場訪問をしながら、日々の業務に取り組んでいます。

2012年に入社してから営業一筋でしたが、今年の8月から専従で組合の業務に携わっています。

──皆さん、育休はいつ、どのくらいの期間で取得されましたか?

浜名:2023年に第3子が生まれたタイミングで、まず5日間取得しました。北國FHDでは10日間付与される育休の分割取得が可能なので、2024年に妻が仕事に復帰するタイミングで、再度5日間の育休を取得する予定です。

田中:私は、2021年に第1子が生まれたときに1カ月、2022年に第2子が生まれたときは1カ月半取得しました。どちらも妻が里帰り出産していたので、金沢に戻ってきたタイミングで休みを取りました。

本多:私も浜名さんと同じく子どもが3人います。初めて育休を取ったのは2022年で、第2子が1歳を過ぎたころに5日間取得しました。

ちょうど育児・介護休業法の改正で、育休の「個別の周知・意向確認」が義務化されたタイミングでした。組合の業務に携わりはじめた私に、当時の支店長が「ロールモデルとなって発信してみたらどうか」と勧められたことがきっかけです。

その後、2023年に第3子が生まれた際には、出産時と妻が実家から自宅に帰ってくるタイミングで5日間ずつ取得しました。

価値観の変化が育休取得のきっかけ。迷いなく選択するためには制度、理解、配慮が必要

──育休を取得しようと決めた理由を教えてください。本多さんは、自らがロールモデルになるためとのことでしたが、浜名さんはどのような理由からですか?

浜名:第1子、第2子が生まれたのは10年以上前なので、まだ男性が育休を取るという選択肢はありませんでした。早朝の出産に立ち会って、24時間営業の牛丼店で牛丼をかきこんで、その足で出社したのを鮮明に覚えています。

でも、子どもたちが成長する過程で、私自身もPTA活動に参加して組織改革をしたり、高校野球の審判員をしたり、地域に貢献する経験をしてきました。仕事以外のフィールドでも自分の成長を実感しながら社会に価値を提供できることを知り、価値観が大きく変わったのです。自分の人生の幸せを左右するのは、仕事だけではなくて、仕事以外でも地域の一員として社会に貢献することや、何より、家族と過ごす時間を大切にすることだ、と強く思うようになりました。

その中で、2022年4月から制度として育休が有給で取れるようになったこともあり、3人目が生まれるとわかった時点で取ろうと決めました。

──田中さんは2021年が最初の育休なので、制度ができる前に育休を取っていますよね。

田中:そうですね。もともと「仕事以外のことも大切にしたい」という働き方をしていたので、以前から育休を取ろうと思っていました。別の会社に勤めている友人たちが半年や1年といった期間で育休を取っていることもあり、私としては普通のことだったんです。

でも、やはり会社の制度として設けられていなければ取りにくいし、選択肢としても出てこないという人が多かったのではないかと思います。

浜名:確かに、部署での前例もなく、聞ける人もあまりいないという状況で、正直どうしたらいいかわからないという不安はありました。

本多:私は組合の仕事をする中で、何をどのように発信していくべきかを考えています。自分をロールモデル化したときは、それはあくまで私の価値観のはずなのに、どこか正解を示しているように見えないかと悩みました。育休の取り方はもちろん、取らないという選択もあると思います。それはそれぞれの家族の価値観であって、この記事はあくまで選択するための参考になればいいなと思っています。

──その選択をする上で、周囲の反応が影響することもあると思います。実際に、どのような反応があったのか教えてください。

田中:まだ制度がなかったときも、上司には前向きな言葉で送り出してもらいました。同僚たちは「おもしろいな」という反応で、それは私には褒め言葉なので、嬉しかったですね。

当時は営業担当だったので、お客さまの反応も印象的でした。「さすが、地域を引っ張る企業だね」と言ってくださる方が多くて。とくに、女性のお客さまは心から歓迎してくださっていたと感じますし、復帰後も熱心に話を聞いてくださいました。

本多:私も、お客さまや職場のメンバーと仕事以外の話をするきっかけになりましたね。

私の場合は上司の勧めで育休を取ったこともあり、周りのメンバーが自然と受け入れてくれました。組織のリーダーがそのような発信をすることもポイントなのかなと思います。

浜名:2人がポジティブな話なので、あえてネガティブなことを言うと、職場での何気ない会話で育休が取りづらくなることもあると思うんです。

たとえば、「自分のときは育休なんてなかった」「奥さんの実家が近いから協力してもらえるでしょう?」「3人目なら慣れているよね」などと言われると、「育休を取ってはいけない」という意味ではないとわかっていても、決心が揺らぐ人はいると思います。

会社の制度として整備されているとはいえ、迷いを抱かせてしまうような会話が生まれないような心配りは必要なのかなと感じます。

家族の絆、選択肢がある安心感、周りへの感謝──育休を経て変化したこと

──育休期間は、どのように過ごしましたか?

本多:最初の育休では家事を全部やると決めたので、朝のゴミ出しから洗濯、料理、お風呂の掃除など、妻と相談しながら1週間のスケジュールを立てました。その間、妻には両親や友達と遊びに行ってもらって、普段できないことをしてもらいました。

2回目は第3子が生まれたときだったので、私が上2人の子を連れて実家にも頻繁に寄って私の両親にもかなり甘えました。とにかく子どもたちと向き合う時間にしたかったんですよね。

田中:私も最初の育休の際は、本多さんと同じことをしました。今振り返って見ると、かなりいっぱいいっぱいでしたが……。

2回目は、出産が大変だったこともあり、新生児の健康の不安がなくなった段階で2週間ほど家族で北海道へ旅行に行きました。「みんなで頑張ったね」というご褒美です。

実は2人めの出産時は、妻が自宅を空けている期間が長かったので、3カ月ほど仕事をしながらワンオペ育児も経験しました。すごく大変だったのですが、最初の育休で家事を経験していたことでなんとか乗り切れたので、はじめに育休を取得したときの決断は間違っていなかったなと思います。

浜名:私は、家事全般についてできるだけ妻に負担がかからないようにするにはどうしたらよいか、を考えました。新生児を育てながら日常生活も成り立たせていくために、私だけではなく家族みんなでどう役割分担するか、を意識しました。育休初日に、レンタルを予約していたベビーベッドを受け取りに行くのを忘れそうになってしまって、少し気まずいスタートでしたが(笑)。

また、妻とともに市役所へ出生届を提出しに行ったときのことが印象に残っています。出生届にある「届出人」の欄に、今まで自分の名前を書けていなかったことに、このときはじめて気がつきました。3人目にして夫婦2人の名前を書けて本当に良かったと思っています。

──過ごし方や新たな気づきもそれぞれあり、興味深いですね。育休をとったことで価値観が変わったと感じることはありますか?

浜名:家族それぞれが「この子のために何ができるか」を考える雰囲気が生まれて、絆が深まった気がします。小学4年生の子と、兄弟をテーマにしたある映画を観に行ったのですが、「弟のために頑張らなくちゃ」と、何気なくつぶやいたんですよね。

仕事をする上でも、まずは自分自身が幸せであることが大事で、その幸福感は仕事だけでは充足できないとも感じるので、大切な時間を過ごせたと思います。

田中:私の場合、価値観が変わったというより、「自分が大黒柱として家計を担っていかなければ」という精神的な重しを下ろすことができました。妻と私のどちらが家事や育児、仕事をメインでしても生活できるという選択肢が広げられた安心感を得られたのです。

あとは、子どもの性格も状況も一人ひとり違うことを実感したので、今までよりも想像力を働かせて人に接することができるようになったと感じています。

本多:私は、女性に対する尊敬の気持ちが強くなりました。結婚した頃、妻は家事と育児に専念したくて、私は家事が苦手なのでWin-Winだと思っていました。

でも、日々支え合って生活していることが当たり前ではなくて、お互いに感謝しなければいけないとあらためて思いました。出産と育児は本当に辛い時期があることを認識したのと、働きながら家事も育児もして、さらに勉強もしている社内の女性たちを見ると、本当にすごいなと思うようになりました。

一人ひとりの価値観で選択できることが、キャリア自律にもつながっていく

──実際に経験された視点から、育休を活用するにあたり、社員本人や会社全体にどういった考え方や風土が必要だと感じていますか?

浜名:人生や生きる上での価値観を見直すきっかけになることですから、「会社に言われたから」ではなく、家族で話し合って、自分たちの意思で決めることが大事ですよね。

たとえば、私が妻の仕事復帰のタイミングで育休を取得するのは、妻にとって勇気が必要な時期をサポートしたいと考えたからなんです。どれくらい支えになれるかわかりませんが、2人で話し合った選択なので、それが最善だと納得しています。

本多:そうですね。育休はライフサイクルの中にあることなので、それぞれの選択が尊重されるべきだと思っています。その人の価値観で違和感なく選択できて、それを周りが自然に受け入れられることが理想だと思います。

浜名:それを考える上でも情報が必要です。でも、その情報を会社からの一方通行で発信するのではなく、社員組合からの発信や、1on1の場、社員同士の世間話など、社員主体で伝え合うことが大切ではないでしょうか。

これは育休に限ったことではなくて、今“キャリア迷子”になっている人も多いと感じています。もっと自分の価値観を発信して、いろいろな選択肢を広げていくことが必要なのかなと思います。

田中:育休取得に限らず、自分の中から出てくる「これが答えだ」という選択肢を主張できるようになるといいですよね。「現行のルールではダメでも、やりたい」という自己主張がたくさん出てきたら、いろいろな選択肢が当たり前に認められると思います。

本多:一人ひとりの価値観そのままに選択できることがキャリア自律にもつながっていくと思うので、組合としてはいろいろな価値観を可視化して会話のきっかけになるようなことを地道にやっていきたいです。

田中:私たちは多様性から生まれる価値を大事にしている会社なので、そういった風土ができることで事業としてもおもしろいことができるようになるし、地域にも新しい価値を提供できるのではないかと思っています。

※ 記載内容は2023年11月時点のものです

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