いつも2人で、金色の花を咲かせる。めざすはバスケットボールWリーグと五輪の栄冠 | キャリコネニュース
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いつも2人で、金色の花を咲かせる。めざすはバスケットボールWリーグと五輪の栄冠

▲東京五輪を笑顔で振り返るひまわり(右)とさくら

バスケットボール女子Wリーグのデンソーアイリスをけん引する赤穂 さくらと、妹の赤穂 ひまわり。姉は中学校から親元を離れ、強豪校で自らを磨いて道を切り開きました。妹は姉がつくった道をたどって飛躍し、東京五輪で日本の銀メダル獲得に貢献。日頃から仲が良く、互いに支え合う姉妹が見据えるのは、Wリーグとパリ五輪の栄冠です。【talentbookで読む】

東京五輪で銀メダルの立役者になった妹。「姉が導いてくれたから、この舞台に立てた」

2021年8月6日、東京五輪のバスケット会場。女子準決勝で、ひまわりは日本の先発メンバーに名を連ねました。チーム最多の17得点、7リバウンドと躍動し、強豪フランス戦での勝利に貢献。五輪バスケット史上、男女通じて初となる日本のメダルを確定させた瞬間でした。

ひまわり:私のバスケット人生におけるベストゲームだと思います。楽しくバスケットをしている時が一番うまくいくな、と実感したんです。オリンピックでは出場した6試合すべてが楽しかったですが、中でも準決勝はチーム、個人共に最高の仕上がりでした。全員で共通理解ができて、やりたいことが全部できるというストレスフリーな状態。もう思い出したくないほどのきつい練習をしてきた成果を、大一番で発揮できて本当にうれしかったです。

国内開催の大舞台でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて無観客だったので、ある意味気負わずにプレーできました。初戦以外はまったく緊張することなく良いパフォーマンスを見せられたと感じています。

表彰台に立った日本の中心選手として、バスケット史に名を刻んだひまわり。大会に至るまでには、飛躍のきっかけがあったといいます。

ひまわり:身長が185cmあるので、当初は主にゴール下を担うポジションでしたが、トム・ホーバス日本代表ヘッドコーチ(当時)の勧めで外角を軸とするシューティングガードに転向したんです。外角のプレーヤーとしての適性を見いだしてくれて、ありがたく思います。未知のことをするのは大変ですが、やっぱり挑戦はわくわくするものです。

自らが本来持っていた機動力を生かし、ひのき舞台で名を上げた妹。その背景には、同じくデンソーに所属する2歳上の姉さくらのサポートがありました。

さくら:ひまわりが代表活動中は、こちらからはバスケットの話をしないようにしていましたね。あまりプレッシャーを与えたくなかったんです。それに、長時間競技に向き合う環境にいる妹に対して、さらに「あの部分はああだよね、こうだよね」とバスケットの話をしてもストレスに感じるだろうと思ったので。あえて、気分転換になるようなたわいもない話題のやりとりにとどめていました。そんな私に、ひまわりは感謝していると思います(笑)。

▲「私に感謝したいこと、いっぱいあるでしょ。すごく大きな功績を残してるなぁ、私」と冗談交じりにひまわり(右)に問いかけるさくら

ひまわり:感謝したいこと?ちょっと思い浮かばない(笑)。でも、たしかにさくらがいなければ、私が中学校でバスケットを選ぶこともなかったし、そしてオリンピックにも出ていなかったと思います。中学校から親元を離れて強豪校に進むという決断も含め、姉が先に道を切り開いてくれたから、私も同じ道をたどることができました。姉のおかげで、今の自分がいるのかなと。そこには感謝しています。

中学校で親元を離れ、自らを磨く決断をした姉。両親の陰の支えを受けて、道を切り開く

▲幼いころの記憶をたどるさくら(左)とひまわり

小学校時代から今に至るまで、同じバスケットチームで活動し続けている2人。まずは姉が地元クラブの門をたたきました。

さくら:父が実業団選手として出場していたバスケットの試合を見て、おもしろそうだと思い、私も小学校2年のころに始めました。両親ともに競技経験者ですが、技術面で厳しく教え込まれたことはありません。ただ、ディフェンス(守備)などをせず、やる気のない態度を見せた時には叱られましたね。

ひまわり:さくらのほか、私の双子の兄である雷太もすでに競技を始めていたので、背中を追うように私も小学3年でその世界に飛び込みました。実は当時、バスケットがあまり好きではなくて。それでも姉や兄がプレーしているので、その流れで私も続けていたように思います。

さくらが小学6年生の時。中学校から故郷の石川県を離れ、千葉県にある強豪・昭和学院に進学することを決断します。

さくら:強い中学校でプレーして、実力をつけたいと思いました。父が知り合いを通じて進学先を探してくれた中で、昭和学院に決めたんです。練習を見学して競技レベルの高さに惹かれましたし、中高一貫校なので高校生の練習に参加できる点も魅力的でしたね。

バスケットに対して強い思い入れがなかったというひまわりも、最終的に姉を追いかけることになります。

ひまわり:さくらの中学校の試合を見た時、チームのレベルが高くて「みんな、すごくうまい!」と目が釘付けになりました。しだいに「どうせやるならこういう強いところでやりたい」と思うようになって、一緒の道を選びましたね。

▲中学校進学の経緯を語るひまわり

さくらが競技人生で最も苦しんだのは、この中学校時代だったといいます。

さくら:今振り返ると、初めて親元を離れて精神的にきつかったと思います。当時は寂しさを自覚していなかったので、親から連絡があっても「大丈夫、大丈夫」と言っていたんですが、どうやら親は「さくらはホームシックにかかっている」と感じとっていたようで。中学校の先生とまめに連絡をとるなどして、間接的にサポートしてくれていたそうです。親は何でもお見通しなんだな、としみじみ思いました。

社会人でも、同じチームを選んだ姉妹。互いの存在を励みに、2人で描いた成長曲線

▲互いの存在について頼もしそうに語るさくら(左)とひまわり

高校も昭和学院に進んだ姉妹は、冬場の走り込みをはじめ、厳しいトレーニングに身を委ねます。取り組みは実を結び、全国大会では上位進出を果たしました。

ひまわり:3年生の時、夏のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)ではトーナメントの序盤で敗れてしまって。当時けがをしていた同級生たちが悔しさをばねにリハビリに励んだ結果、冬のウインターカップ(現・全国高等学校選手権大会)では3位に入賞できたんです。その大会では、苦しい場面で流れを変えるプレーをしたり、雰囲気を高めたりしたのは3年生でした。チームにおいて最上級生の力は大きいと実感しましたね。

名門校で活躍したことによって、Wリーグ界からも注目される存在になった2人。まずはさくらがデンソーアイリスに入団します。

さくら:憧れの高田 真希選手と一緒にプレーしたかったんです。そして、デンソーがどのチームよりも自分を必要としてくれていたことにも、心を動かされました。私をどのような選手に育て、試合でどう起用したいのかを丁寧に説明してくれたんです。いざ入団したら、メンバーの練習に対する姿勢がストイックで、チームの空気にも圧倒されて、気を引き締め直しました。

ひまわり:私の場合もデンソーが一番高く評価してくれて、入団の決め手になりましたね。高校時代は勉強などの学校生活がある上でのバスケットでしたが、「ここでは競技中心の生活になる。スポーツ選手になるって、こういうことなんだ」と思い知らされました。練習や選手個々のレベルが高くて体力的にもきつかったですが、同時にとても新鮮に感じて、胸が高鳴ったのを覚えています。

互いの存在を励みにしながら、共に成長曲線を描いてきた姉妹。やがて、周囲に誇れる武器をそれぞれに携えるようになります。

さくら:体の強さとジャンプシュートが私の持ち味だと思っていて、そこは妹を含めて誰にも負けたくないですね。ひまわりに関してすごいと感じるのは、185cmと長身ながら外角から攻め込んだり、小柄な相手に対しても守備ができたり、さらにはリバウンドなど、とにかく機敏な動きができることです。

▲シュート練習に励むさくら

ひまわり:私の武器はどのポジションでも守れるディフェンス力と、機動力を生かしたプレーかなと。とくにインサイドにドリブルで切り込むのが好きですね。リバウンドについては、参加する意志を持つのが大事。すると何回かに1回はボールをつかめます。さくらについてさすがだなと思うのは、試合で体を張り続けられることですね。臆することなく相手とぶつかり合ってボールを奪う姿勢は、なかなかまねできないと思っています。

▲練習で競り合うひまわり(左)

一方で、2人のプライベートに目を向けると、オフの日にはそろって映画や食事などに出かけているといいます。一緒にリフレッシュし、時にはさりげなく互いを気遣いながら、共に競技の第一線を走り続けています。

バスケット界の頂点をめざし、子どもたちに競技のおもしろさを伝えたい

▲第90回皇后杯で初優勝を果たしたデンソーアイリス

今季新たな戦力が加わり、2023年12月には第90回皇后杯全日本選手権大会で初優勝を遂げたデンソーアイリス。ひまわりは主将、さくらは副将としてチームを支えます。

ひまわり:新しい選手が来て、チームカラーがいい意味で変わりましたね。他チームでWリーグの優勝経験がある馬瓜 エブリン選手を見ていると、練習での声出しや盛り上げ方がとても新鮮です。私は全員が気持ちよくプレーできるように、目配りをしていきたいですね。とくにゲームをつくるガードの若手選手とはよく話し合って、円滑なプレーを心がけているところです。

▲第90回皇后杯で常に声をかけチームをけん引するひまわり(中央)とさくら(右から2人目)

ひまわりはリーグ初制覇と同時に、2024年のパリ五輪も視界にとらえています。日本は五輪の出場権獲得をめざし、同年2月の世界最終予選に参戦します。

ひまわり:東京オリンピックのような楽しいバスケットを、パリでもしたいです。銀メダルを取ってあれだけ楽しかった東京。それがもし金メダルだったらいったいどうなるんだろうと想像するだけで、心が躍ります。その夢に向かって、これからも頑張ります。

近年、代表チームの活躍によってバスケットの認知度が高まっている日本。姉妹はさらなる発展に向け、力を尽くしたいと語ります。

ひまわり:私たちの試合を見て競技を始めたいと思う子たちが増えれば、一番うれしいですね。そのためにも私は、「こんな選手になりたい」「どの試合を見てもおもしろい」と思ってもらえるようなプレーヤーをめざしたいです。

さくら:日本のバスケット界が盛り上がっている中、Wリーガーを志す子たちがもっとたくさん出てきてくれたらと願っています。たとえば私が得意とする体を張ったプレーは、誰にでもできる基本的なことです。なので「こういうプレーを頑張れば、私もWリーガーになれる」などと希望を見いだしてくれたらありがたいですね。

このたび、うれしい話題が舞い込んできました。さくらとひまわりの妹で現在大学生のかんなが、マネージャーとしてデンソーに加わることになったのです。

さくら:かんなと同じチームで活動するのは初めてで、とても楽しみです。かんなは、私たちのプレーに対するダメ出しが多くて(笑)。ただ、それが的確なんです。連絡が来るたびに私は笑顔になれるので、落ち込みすぎることなく心を保つことができています。

頼もしい妹も含めてワンチームになり、満を持してめざすのはWリーグの頂点です。

さくら:昨季はプレーオフで3位に終わりましたが、セミファイナルではファンの皆さんと一体になって、全員で戦えたという実感があります。コロナ禍を経て声出し応援が解禁になったので、声援が本当に力になりました。デンソーの過去最高順位は準優勝。今季こそ、ファンと一緒に優勝の喜びを分かち合いたいです。

4月生まれのさくらと、8月生まれのひまわり。バスケットを愛する姉妹がWリーグとオリンピックで満開の花を咲かせた時、その背景は金色に輝いているかもしれません。

※ 記載内容は2023年12月時点のものです

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