メンバーの成長機会を増やしたい──プロフェッショナルとして活躍する女性エンジニアリーダーの想い
塚原 沙耶香は、入社以来一貫して大手自動車メーカーのランプ設計開発を担当。現在は、アビストを代表する「主席技術者」として複数のチームを統括するポジションで活躍しています。 入社を決めた背景や3年目でグローバル車種を担当したことによる成長 、現在のチームにかける想いに迫ります。【talentbookで読む】
信頼と妥協しない姿勢を軸に──プロジェクトを担い、ランプ設計開発チームをリード
トヨタ支店の自動車部品のランプ設計開発は、約40名の技術者が各チームに分かれてプロジェクトを進めています。現在、塚原は複数のチームを統括しつつ、同時に新車種のランプ設計開発プロジェクトも担当しています。
「新しい車種のプロジェクトは、約3年かけて進めていきます。主にデザイナーとランプメーカーとの間で業務を行っているのですが、デザイナーがイメージするものとメーカーが対応できる技術には、ときにすれ違いが生じることがあります。
その際、私たちは双方の意見を調整し、より良い製品を創り上げるための調整役を担っています。最初に、デザイナーが提案したアイデアにもとづいて、コストや設計面での提案を行います。同時にメーカーの製造性とデザイン性の両立を考慮し、仕様を決定した後に3D-CADを使った検討に移ります。その後は車両全体のバランスや法規制への対応といった追加要件を考慮しながら、設計者としてデザイナーのイメージする意匠の実現に向けて提案を進めていきます」
2007年にアビストに入社して以来、新車種だけでなく既存車種の不具合改善やマイナーチェンジも担当してきた塚原。どのプロジェクトも社内外の多くの人と連携しながら進めてきましたが、その上で常に大切にしていることは「信頼関係」と、「妥協しない姿勢」だと語ります。
「入社してから5年目までお世話になった上司は、社内だけでなく、お客様とのやり取りでも名前が出ていて周囲の人たちからとても信頼されていることを感じました。そんな上司の背中をみて、私も同じように信頼される人材になるためにはどうしたら良いのか考えるようになりました。
そこから、レスポンスの速さや丁寧な接し方を意識するように。今では過去のプロジェクトで関わった関係者からもいまだにご連絡をいただくことがあり、信頼関係を築くことの大切さを実感しています。
また、どんな状況でも仕事に対して妥協しないことを大切にしています。自動車部品の設計開発は、自分自身が携わった自動車を街でよく目にするからこそ、中途半端に妥協してしまうと世に出た際に後悔することがあります。『あのランプの光り方、もう少し明るくしたり、きれいにしたりできなかったかな』と思いたくないんですよね。『本当にやりきったか?』と自問自答して、納得できるまで情熱を持って仕事に取り組み、プロフェッショナルな意識を持つことを心がけています」
テレビでみた父の仕事の魅力と、図面を描く楽しさから──設計開発エンジニアの道へ
今ではランプ設計開発チームをリードする立場にある塚原。しかしながら、学生時代は設計開発の分野とはまったく異なる経営情報学を専攻していました。
「たまたま受けた講義で、教授が開発したソフトを使って部品の図面を描く機会があり、やってみるととてもおもしろく、自分に向いているのではないかと思いました。
さらに、父が船のエンジンを設計する仕事をしていたのですが、私が大学生のころ、あるドキュメンタリー番組で父が所属するプロジェクトチームが特集されたことがありました。その番組で父の仕事内容を知り、とてもかっこいいと思ったんです。私も父のような設計開発をする仕事に挑戦したいと強く思い、この道に進むことに決めました」
そして設計開発の分野をめざして就職先を探す中で、アビストに出会います。
「アビストに入社した決め手は、自分のやりたい設計開発ができること。そして、一番の決め手は大手の自動車メーカーの自動車部品に関われるということです。当時は自動車にはあまり興味はなかったのですが、自動車は誰しもが身近に感じられるもので、自分が大規模なプロジェクトに関わることで、やりがいをもって働けそうだと感じたので、アビストに入社を決めました」
努力を認めてくれる人は必ずいる──成長につながったグローバル車種プロジェクト
入社後、塚原はトヨタ支店の自動車ランプ設計開発チームに配属され、念願かなって大手自動車メーカーの設計開発に携わることができました。仕事の中でとくに印象深いのは、入社3年目から6年目にかけて担当したグローバル車種のランプ設計開発だと語ります。
「このプロジェクトは、とても貴重な経験でした。当時は、タイや台湾、オーストラリア、アメリカといった国々の担当者と毎日のようにミーティングを行っていました。
英語は得意ではなかったものの、必死にミーティングについていきました。グローバル車種は、国内向けの車種とは異なり各国の工場で製造するため、国ごとに異なる規制や要求事項に対して共通に対応できる設計を行う必要がありました。各国の要望を把握し、共通の設計で生産するために、試行錯誤しながら進めることがとても難しく感じました。
また、これは私が設計者として未熟だったことも関係していたかもしれませんが、当時は職場に女性が少なかったこともあり、工場を訪れた時などは私ではなく同行した男性社員と主にコミュニケーションをとる傾向がありました。しかし、海外の担当者は私を一人の設計者として対等に接してくれて、嬉しく感じたのを今でも覚えています」
そして、もう一つ印象に残っている経験があると続けます。それは、比較的大きな不具合が発生した時に塚原自身で解決策を見つけて対処したことでした。
「不具合が発生すると、実際に起こり得る状況を再現しなければなりません。この問題は海外で起きた事象だったため、日本で同様の状況を再現し、不具合が発生した条件を見つけ出すことにとても苦労しました。他の車両との違いや海外環境の特性を理解するために、データを分析し、専門家に相談しに行くなどして積極的に取り組みました。
また、消費者の安全性に関わる問題であったため、2カ月以内の迅速な対応が求められていました。他の開発プロジェクトも進行しながらだったので時間的、内容的にも苦しい状況ではありましたね。それでも、結果的に対策方法を見つけ出すことができ、たくさんの知識を得られた大変貴重な経験だったと感じます。今では、この経験が仕事に対する自信に大きくつながっていると実感しています」
塚原はさまざまな経験を重ねながら、あらためてこの仕事のおもしろさややりがいを感じています。
「自身が関わった製品が世の中で多く目にされるため、その成果に対するやりがいはとても感じます。また、技術の進歩が著しいので最新の技術をいち早く経験できることもおもしろいと思います。私がこれまでに当社で働いてきて感じたことは、努力すれば評価される機会が多いという点です。
社内外問わず多くの関係者との連携が求められるこの仕事は、努力してきた過程を見守ってくれる周りの人たちがたくさんいます。認めてくれる人たちがいたことが、私自身がここまで成長できた理由の一つだと感じています」
アビストを代表する「主席技術者」のひとりとして、メンバーが成長できる環境をめざす
2022年10月、塚原はトヨタ支店のランプ設計開発チームを統括するひとりとして「主席技術者」に任命されました。
「主席技術者になる前から感じていたことですが、指導やまとめ役を担うようになってから、チームメンバーに対する社内や顧客からのお褒めの声をよく耳にするようになりました。多くのメンバーが真摯に取り組んでいる姿を見ているので、そのような声をたくさん聞くたびに、みなさんには感謝の気持ちでいっぱいになります。
だからこそ、チームメンバー一人ひとりが長く当社で働きたいと思っていてほしい。彼ら、彼女らが成長できる環境を提供できるよう、努力していきたいと思っています」
具体的には、今後若手メンバーにも自身が経験したような大きなプロジェクトの機会を提供していきたいと語ります。
「自動車のランプには、車の顔となるヘッドライトなどの大型ランプからナンバープレートを照らすような小さなランプまでさまざまな種類があります。現在、大型ランプを経験しているメンバーは限られているため、若手にはそうした経験を積んでもらいたいと思っています。主席技術者として、その機会を増やすことをめざしています。
当社は、現在『デジタルソリューション企業』をめざしていますが、不要な作業や時間を排除してデジタルソリューションを活用した効率化を推進しつつ、若手が大型ランプ設計にも挑戦できる環境を整えていきます」
最後に、塚原はこれから入社する社員に向けて次のようなメッセージを送ります。
「入社後、自分の仕事に対する判断力を育んでほしいです。今のメンバーにも、自分の意見をしっかりと伝えられるコミュニケーション能力を身につけてもらっています。仕事を自分事として捉え、理由を持って自分の意志を周囲や上司に伝えられる人材を育成したいです。それが設計における重要なスキルだと感じていますので、ぜひそのような人になってくれるといいなと感じています」
学生時代に設計開発の道に進むことを決意してから信頼と妥協しない姿勢を大切に、努力を重ね成長してきた塚原。
主席技術者としてメンバーが成長できる環境づくりをめざすその先に、アビストの未来が待っています。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです