単身ベトナムへ渡り8年。苦悶の末、事業を成長へと導いた支社長の奮闘 | キャリコネニュース
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単身ベトナムへ渡り8年。苦悶の末、事業を成長へと導いた支社長の奮闘

▲エヌアセットベトナム 代表取締役社長 西村 武将

▲エヌアセットベトナム 代表取締役社長 西村 武将

エヌアセットグループがベトナムに初の海外拠点を構えたのは、2011年。その際、駐在員第一号として赴任したのが西村 武将です。日系企業や日本人を対象とした不動産賃貸仲介を起点にシェアオフィス運営、プロジェクト仲介など事業領域を拡大。2020年には支店開設へとこぎ着けました。そんな彼の歩みをたどります。【talentbookで読む】

渡航経験は1度のみ。けれど、不安よりもワクワクが勝った海外での事業展開

少子高齢化でどんどん先細りしていく国内需要。本拠地である川崎市や溝の口にどう外国人を呼び込んでいくかが今後の課題──エヌアセット代表・宮川 恒雄のこうした考えが発展し、起案されたのがベトナムの拠点設立でした。

しかし、2011年当時は創業からまだ3年しか経っておらず、基盤固めに注力していた時期。東日本大震災が起こったタイミングとも重なり、社内は決して歓迎ムードではありませんでした。そんな中、当社初の海外駐在員に立候補し、まったく新しい環境へと踏み出したのが、当時28歳だった西村です。

西村 「エヌアセットでは賃貸物件の管理業務を担当していました。不動産管理会社にとって不動産オーナーとの関係構築は重要な任務。

常に使命感を持って取り組んでいましたが、そのかたわらで学生時代からずっと『自らの判断で大きなお金を動かしてみたい』という想いや起業願望があって。

ちょうどそうした気持ちが再燃してきたころにベトナムの話があり『これはチャンスだ!』と真っ先に手を挙げました」

それまで、渡航経験は一度きり。とても海外慣れしているとはいえない状況でしたが、不安よりも、ワクワク感のほうが大きかったという西村。渡航3カ月前から準備室へと配属となり、ベトナムの現地法人のライセンス申請などの業務からスタートしました。

そんな彼の姿を陰ながら見守っていたのが、代表の宮川です。

宮川 「西村から『ベトナムに行きたい』と言われたとき、心配半分・応援半分というのが正直な気持ちでした。今振り返ると、このころの彼はおそらく、管理という難しい業務を担う中で、自分が思う理想になかなかたどり着けないジレンマがあった。

それを私も肌で感じていたから、きっと心配してしまっていたんですよね。一方で、『やりたい』という気持ちはひしひしと伝わってきました。何をやるにしても、その想いに勝るものはない。だから、思い切って彼に任せてみることにしたんです」

会社の方向性は自分次第、裁量と責任の大きさを現地で初めて実感する

▲エヌアセット本社の2019年の社員旅行先はホーチミン。エヌアセットベトナム社からプレゼントしたロゴ入りポロシャツを身にまとって記念撮影!

▲エヌアセット本社の2019年の社員旅行先はホーチミン。エヌアセットベトナム社からプレゼントしたロゴ入りポロシャツを身にまとって記念撮影!

2011年9月。エヌアセットグループはベトナム最大の都市・ホーチミン市にてエヌアセットベトナムを設立。西村は要所要所で宮川と事業の方向性について確認しながらも、基本的には自らの意思決定を軸に、会社の土台を築き上げていきます。

西村 「人材採用、提携先企業の決定から備品の購入に至るまで、ほぼすべて自分ひとりでこなし、事業をイチから立ち上げる。日本での業務内容とは比較できないほど、大きな裁量権を与えてもらいました。

それに充足感がある一方、会社が軌道に乗るかそれとも立ち行かなくなるかもすべて自分次第なので、責任の大きさもひしひしと感じていました」

不動産領域における外資系企業に対しての制限。日系企業・日本人を対象とした事業からなかなか領域を拡大することができない。当初思い描いていたスピードで事業がスケールしない。日本本社との距離感や空気の違い。

──初めてわかる、海外赴任者、そして経営層ならではの悩みでした。

苦しみ悶えながらも、西村が常に大切にし続けたのはエヌアセットのDNAともいうべき「ひと」への想い、そして企業観でした。

西村 「エヌアセットの企業文化で私が最も影響を受けているのは、売上よりも目の前にいる『ひと』を第一に考えていること。もちろん営利企業である以上、無償でサービスを提供するわけではないです。

お客さんが納得して対価を支払いかつリピートしてくれる。企業活動を応援してくれるファンを増やす。そのことを意識せずとも自然と体現しているスタッフが多いのがうちの特徴だと思います。

ベトナムでも同じ企業文化を根付かせたく、まずは現地のスタッフからエヌアセットのファンになってもらうことを意識しています」

すべてを投げ打って、日本に帰ってしまいたい。そう思ったことは、一度や二度ではなかったと振り返る西村。潮目が変わったのは、会社設立から4年経った2015年のことでした。

追い風が吹き始めたのは、設立4年目。信じて任せてくれたから頑張れた

▲エヌアセットベトナム社のメンバー。左から2番目が2018年から駐在員となった杉本

▲エヌアセットベトナム社のメンバー。左から2番目が2018年から駐在員となった杉本

2015年7月にベトナムで施行された改正住宅法では、外国人や外資系企業に対する住宅の所有制限が一部緩和されました。日系企業や日本人を主なターゲットとしていた、エヌアセットベトナムにとってはまさに商機。売買仲介の領域への本格参入に舵を切ります。

西村 「売買仲介は、賃貸以上に大きな金額が動くため、成約手数料が大きくなる一方で、いわゆる資産運用の意味合いも出てきます。

このことから、これまで以上に細心の注意を払わなければ、培ってきた信頼性を損なうことになりかねません。そのため、物件情報だけではなく、不動産に関する法律や税金、税務処理方法、その他関連の知識を蓄えながら、目の前のお客様へ誠意ある対応を心がけました」

同じころ、川崎市にある本社には初の外国人社員が入社。社内の、海外に対する距離感がぐっと縮まったことで、エヌアセットベトナムとの距離も近付きました。

西村 「それまで、目立った成果を挙げていなかったし、幹部社員の中でも少なからず『地域密着をうたっているのに海外拠点なんて意味あるの?』という感じだったかもしれません。

しかし、取り巻く環境が徐々に変わり、ある程度の売上も見込めるようになった。そのときに初めて会社に認められたような手ごたえがあって、すごく嬉しかったですね。励みになったのは、いつも宮川が味方でいてくれたこと。

このことは、間違いなく『続けることへのモチベーション』につながっていました」

2018年には、当時新卒入社5年目の杉本 朗が本社より出向。エヌアセット仕込みの、目の前の「ひと」を大切に考える彼の存在は、西村の大きな支えとなり、さらなる追い風となってくれました。

新支店を開設。今後もアジアに“エヌアセットイズム”を広めたい

▲新支店を開設したビンズオン省は、国内外で注目される急発展中の地方都市

▲新支店を開設したビンズオン省は、国内外で注目される急発展中の地方都市

2020年4月。エヌアセットベトナムは国内2拠点目となるビンズオン支店を開設。社員も増員し、新たな成長フェーズへと突入しました。

西村 「ビンズオン省は、ホーチミン市同様、政府の管轄を直接受ける中央直轄市になることが予定されている、今注目のエリアです。その地に日系不動産仲介会社として初進出することで、不動産情報と不動産ニーズをいち早くキャッチし、マッチングをさせていきたい。

2021年には、ベトナム北部ハイフォン市にも新支店を開設し、さらに不動産サービスの提供エリアを広げていくつもりです」

こうして会社を成長させていくことは、社員一人ひとりの活躍の場を増やし、彼らのキャリア形成にもつながっていく。西村はここ数年の間に、こうした気付きを得たといいます。

西村 「これまで、せっかく縁があってうちの会社に入社してくれたのにも関わらず、私が原因で、早々に去ってしまった社員も何人かいました。『もっと一人ひとりに配慮すればよかった』と後悔しても遅い。

このことに気付いてからは、彼らの働きやすさやキャリア形成について、より意識するようになりました。

プレイヤーとしてのキャリアステップのロールモデルや新しい業務に対する責任者への抜てきなど、ルーティン業務だけでなく、取り組むことでモチベーションの上がるタスクを与えられるよう日々考えています。

私自身の今の課題は、プレイングマネージャーからの脱却です。立ち上げのフェーズではほぼひとりで動き、信頼を獲得するよう努めてきましたが、これからの成長フェーズではみんなで業務に取り組み、会社を大きくしていきたい。ひとりでできることには、やはり限界があるんですよね」

一方、宮川はこの8年間の西村の成長ぶりをこう見ていました。

宮川 「会社を設立して3、4年目ぐらいから、現地スタッフが私ではなく、西村を見るようになったんです。『代表取締役という肩書をしっかりと“もの”にできたんだな』と思えた瞬間でした。

マネジメント面だけでなく、お客さん一人ひとりに対する接し方にも柔軟性が出てきたし、信頼関係を築けている。その証拠に現在、多くの大手企業から引き合いがあります。今では、部下ではなく、ひとりの経営者としてリスペクトする存在です」

半ば強引に実行したエヌアセットグループの海外進出は、新たな経営者を育て、国内では考えられないような多様なリレーションを築きました。「ベトナムを軸足に、他のアジア諸国にも拠点を置き、“エヌアセットイズム”を広めていきたい」と語る西村。彼の、海を越えた挑戦はまだまだ続きます。

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