写真家。音楽とアートの会社を経営。 大阪在住。東京生まれ。香川、ニュージーランド、フィリピン育ち。 趣味が多すぎて時間が足りない:スイーツ、カフェ、B級映画、ロック、ギター、ベース、テニス、モータースポーツ、ジャグリング、フレンチブルドッグ1匹、猫2匹、子供2人、など。 日本語/英語。
なぜ写真の構図は重要なのか
■構図を意識することで「何を伝えたいか」が明確に
——写真撮影には「構図」を作ることが大切だとよく聞きますが、なぜでしょうか。 写真で大切なことは、その写真を見た人が撮影者の意図を理解できるかどうかという点です。 何を主役として撮っているのかわからない写真は、撮影者が何を見せたいのか、何を伝えたいのかよくわかりません。 写真の構図を作ることで、撮影者が写真を通して何を伝えたいかが明確になります。 何を伝えたいかを明確にするためには、構図に加えピントの位置も重要です。一眼レフで撮影すると背景がぼけた写真が撮れますが、ピント位置が正しくないと本当に見せたいものがボケてしまうということになりかねません。 構図とピントの意図がうまくいって初めて、いい写真を撮ることができるのです。
■被写体を引き立たせ、迫力あるダイナミックな写真に
——構図は写真にどんな効果を与えるのでしょうか。 構図を意識して写真を撮ることによって、大きく次の3つの効果が得られます。 ・被写体を引き立たせる
・安定感や迫力が出る
・ダイナミックな写真になる 撮影した景色がどんな絶景でも、どんなに色合いが美しくても、地平線が斜めに写っていると収まりが悪く感じらます。基本の構図に沿って撮影することで、画像が引き締まったプロっぽい写真を撮ることができます。 構図は写真だけでなく、アート全般で意識されています。絵画も写真と同じような構図に沿ってデザインされることが多いんですよ。 たとえば、葛飾北斎の富嶽三十六景に含まれる「神奈川沖浪裏」という作品には、三分割法という構図が使われています。右下のクロスポイントに富士山、左上のクロスポイントに大きな波が配置されているのです。 葛飾北斎が現役で絵画を描いていた当時に三分割法という言葉があったかは定かではありません。恐らく、本能的に三分割法を用いて構図を作りあげたのだろうと思われます。
写真の基本の構図とは
■【基本編】写真撮影の初心者が覚えておきたい6つの構図
——写真撮影の初心者が覚えておきたい基本の構図を教えてください。 写真撮影の初心者が覚えておきたい基本の構図は次の6つです。1つずつ解説していきます。 ・日の丸構図 ・三分割構図 ・二分割構図 ・三角構図 ・対角線構図 ・S字構図
■日の丸構図
画面中央に女の子の顔が置かれています。
日の丸構図とは、写真の真ん中にメインとなる対象物を持ってくる方法です。人物など撮りたいものがはっきりしている場合に適した構図です。 一般の人でも取り組みやすい構図なので、写真撮影を始めたばかりの初心者はまず日の丸構図から覚えるとよいでしょう。 日の丸構図で注意しなければいけないポイントは、対象物を確実に真ん中に置くという点です。真ん中から少しでもずれると、何が伝えたいのかよくわからない写真になってしまいます。
■三分割構図
画面を縦・横に三分割した下横線上に機体が、左下交点に太陽の光が置かれています。
三分割構図とは、写真の縦と横を三分割した線上、または縦線と横線がクロスした4つの交点いずれかに対象物を置く方法です。 この方法に従って写真を撮れば、誰でもプロっぽい写真を撮ることができます。機種にもよりますが、スマホカメラにはグリッド線を表示させる機能があります。ガイド線や交点に対象物を置いて写真を撮ってみてください。
■二分割構図
縦・横を二分割する線上に桟橋と地平線が置かれています。
二分割構図は、写真を縦・横に二分割した構図です。二分割構図も、三分割構図と同じように分割した線上に対象物を置いたり、風景を上下左右に切り替えたりします。
■三角構図
対象物が画面上に三角形をつくり出しています。
その名のとおり、対象物を三角に配置するのが三角構図です。景色や建物などを撮影するときに用いられることが多いです。
■対角線構図
天の川が対角線上に置かれています。
対角線構図は、対象物を対角線上に配置する方法をいいます。たとえば、夜空を撮影するときに天の川を対角線上に置いたり、森の中の木の枝を斜めにおいて撮影したりといった使い方をします。 応用編になると、人物写真の背景に対角線を取り入れてシャープに見せるといった使い方もできます。
■S字構図
川の流れがゆったりとしたS字カーブを描いています。
S字構図はテーブルフォトの奥義ともいわれています。テーブルの上に並べられたお皿やカップの形状を組み合わせてS字を描くことで、いわゆる「映える写真」を撮ることができます。
基本の構図の中でも、三分割法を覚えれば脱初心者にぐっと近づきます。対角線構図やS字構図は撮影に慣れてきたら挑戦してみてください。
■【応用編】初心者からステップアップしたい人が覚えておきたい写真の構図
——基本の構図を覚えて、初心者からステップアップしたいという人は、どんな構図を覚えるとよいでしょうか。
写真の構図にはほかにも、黄金比構図、黄金分割構図、放射線構図などがあります。このうち、放射線構図は初心者からステップアップしたい人におすすめです。
■放射線構図
建造物を中心に、橋の欄干が放射線を描いています。
放射線構図とは、中心から外側に向かって放射状に対象物を配置する構図です。
たとえば、街並みを撮影するときに道路やビルといったパースで遠近感を作り、放射状の構図をつくり出すことができます。
構図とセットで覚えたい「ピント位置」のセオリー
近景、中景、遠景のうち、近景にピント位置が合っている状態です。
——先ほど、写真を撮影する際には構図だけでなくピント位置も大切な要素だと言っていました。ピント位置について、どんな点に注意したらよいか教えてください。 写真を通して「何が伝えたいか」を明確にするためには、ピント位置も大切です。ピント位置の調整では、次のような点に注意しましょう。 ・人物や動物を撮るときは手前側の目にピントを合わせる
・花を撮るときはめしべまたは中央もしくは一番手前の花びらの先にピントをあわせる
・草原や野原などを撮るときは、目立つ草葉の先にピントを合わせる
・テーブルフォトは手前3分の1にピント位置を置く
・景色は近景、中景、遠景の3つのレイヤーでとらえ、近景または中景どちらかにピントを合わせる ほかに、近景から遠景まで全体にピントが合ったパンフォーカスという状態もあります。F値を大きくすることで全体にピントを合わせ、ボケのない写真を撮ることができます。
写真の構図を作る上で注意すべきポイント
——上手に写真の構図を作るポイントはありますか? 構図を作る上でのポイントはいろいろありますが、その中で人物を撮影するときのポイントを挙げてみましょう。 三分割構図を使って人物写真を撮るときには、顔の位置が三分割構図の交点に来るように配置します。この時、被写体の目が向いている側に余白を作るとよいでしょう。 たとえば、被写体が向かって左側を向いているのだとしたら、被写体の顔を右上の交点へ置き、被写体の左側に余白を作ります。逆に、左を向いているのに被写体の顔を左上の交点へ置くと、窮屈感のある写真になってしまいます。そのようにして構図を決めていきます。 ——写真の構図を作るうえで一番大切なことは何でしょうか。 何を撮るか、何を主役にするかをはっきりさせることです。特に初心者は、何を撮りたいのかを1つだけ定めて構図を作るとよいでしょう。 子どもがペットとたわむれているシーンであれば、主役を子どもにするのかペットにするのか、それとも両方にするのか。人物が5人いて全員が主役なのであれば、5人を1つの対象物ととらえるのも1つの手段です。 主役にする対象物を増やせば増やすほど、写真の難易度は高くなります。たとえば、蝶と花で考えてみましょう。蝶は蝶でヒラヒラと動いています。そして花も風に揺られて動きます。両方ともが動いている対象物をそれぞれ交点に置くのは至難の業です。 写真コンテストで入賞するような写真は、こうした難易度が高いシチュエーションでも構図とピント位置が巧みに合っていますね。
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