【若手社員の早期離職を防ぐ】エーピーコミュニケーションズが設置した「キャリア相談室」の効果とは | キャリコネニュース
おかげさまで6周年 メルマガ読者数
65万人以上!

【若手社員の早期離職を防ぐ】エーピーコミュニケーションズが設置した「キャリア相談室」の効果とは

APC-01

2019年3月、株式会社エーピーコミュニケーションズが「第4回ホワイト企業アワード」(JWS/日本次世代企業普及機構 主催)で「人材育成」を受賞した。

エーピーコミュニケーションズは、お客様にIT技術を提供するシステムインテグレーター。「エンジニアとお客様を笑顔にする」を会社のビジョンとし、社員の個性・多様化を尊重し、社員一人ひとりの強みを伸ばすことで、組織のパフォーマンスを最大化することを目指している。

今回の受賞は、同社が「若手社員の早期離職」を未然に防ぐ施策として設置した「キャリア相談室」という取り組みが評価された。その具体的な取り組み内容や効果について話を伺った。

若手社員のキャリア実現をサポートする「キャリア相談室」とは

――「キャリア相談室」の具体的な取り組み内容をご紹介ください。

社員のキャリアビジョンと当社内の多職種・多業務とのマッチングをはかり、中立的な立場で社員のキャリア実現を支援することーーこれが「キャリア相談室」を設立した目的です。取り組みとしては大きく2つ。1つは若手社員向けの「キャリア面談」と「キャリアデザイン研修」。もうひとつは管理職向けの「部下育成支援」を実施しています。

「キャリア面談」では、専門資格(国家資格キャリアコンサルタント)を持ったカウンセラーが、現状の課題や周囲に言えない悩み、将来のキャリアビジョンなどをヒアリングし、本人が自分自身でキャリアプランをたてていくことをサポートしています。面談をしていると「やりたいことを実現するために何をしたらよいかわからない」「なんとなく仕事に対して前向きになれない」という若手社員は少なくありませんでした。

そこで企画したのが「キャリアデザイン研修」。強み診断ツール(ストレングスファインダー®)を導入し、診断結果をもとにグループで話し合いながら強み・弱みを整理し、強みを活かす行動計画を立てるワークショップを行っています。

若手社員のキャリア実現のためには、日々彼ら・彼女らと接している管理職のコミュニケーション能力の向上も必要でした。そこで、全社員に対して管理職の日頃の振舞いについてアンケートを行い、日頃の振る舞いについて部下からのリアルな声を管理職にフィードバックしました。これによって管理職自身が気づいていないコミュニケーションの課題に気づいてもらおうと。また、キャリア相談室に寄せられたリアルな事例をもとに管理職と部下の対人関係の質を向上させるための研修も開催しています。

若手社員の離職リスクを未然に防ぐ!若手&管理職にみられた変化

「キャリアデザイン研修」でグループディスカッションを行っている様子

「キャリアデザイン研修」でグループディスカッションを行っている様子

――その施策、取り組みの効果について教えてください。

2018年度の一番大きな効果としては、若手社員26人の離職リスクを未然に防ぐことが出来たことです。

「キャリア面談」では、相談者の同意を得た上でキャリアコンサルタントが面談の内容を踏まえて、相談者の上司や所属部門長に働きかけを行います。働きかけは様々で、ジョブローテーションを推進したり、上司との関係性や仕事上の問題を解決したりと多岐にわたります。もしキャリア相談室がなければ、彼らは誰にも相談出来ずにキャリアに悩み、最悪の場合離職につながる可能性もあったかもしれません。

また、「キャリアデザイン研修」を受講した若手社員にアンケートをとったところ、87%(93人)が「自己理解が深まった」と回答してくれました。また65%以上(60人)は更に自身の強みを活かす行動計画を立てるまでになりました。「今後のビジョンが見えていなかったが、強みを活かしてどのようなキャリアを描いていきたいのかを明確にすることが出来た」「失敗を恐れて一歩踏み出せずにいたが、具体的な行動がイメージ出来るようになった」という声も届いており、若手社員が自分でキャリアを考えて行動に移す力が向上していると感じます。

管理職にも変化が生まれています。部下との関係性の改善を目的とした管理職向けの研修を開催した結果、管理職の行動が変化し、80%の社員が「上司が自分を尊重して話を聞いてくれるようになった」と答えました。

キャリア相談室の仕組みについて語っている様子

キャリア相談室の仕組みについて語っている様子

――社内・社外から感じられた効果はありますか?

若手社員の変化を実感しています。もちろんこの変化は若手社員が自己の課題と向き合い行動した結果です。

例えば、キャリアデザイン研修後、ある若手社員は「一人で仕事を抱えてしまう傾向があるため、周囲と協力して仕事を進める必要があることを再認識した」と言っていました。

「自身で目標を立て、行動したことで成長を実感出来た」「視野が広がり、言われたことだけでなく、仕事全体のゴールを考えて行動出来るようになった」というような声もあります。将来に対して漠然と不安を抱えていた若手社員は、前向きな気持ちに変化し、未来のキャリアに向けて一歩踏み出し始めています。

また、お客様からも「キャリア相談室」の取組についてぜひ教えてほしいというお声がけもいただきました。中小企業の中で「キャリア相談室」を組織化し、「セルフ・キャリアドック」を導入した当社の事例を多数の人に知ってもらうことで、企業内キャリアコンサルティングを推進していきたいと思っています。

中堅社員へのキャリア面談を提供し、多様な社員が安心して強みを発揮できる会社に

――今後の課題やこれからの取り組みについて教えてください。

今後取り組んでいきたいことのひとつは、「キャリア面談」の適用範囲拡大を実施です。キャリアに悩むのは若手社員だけではありません。ですので2019年からは専門資格を保有するキャリアカウンセラーを増員して、当社の中で一番多い30代の社員に対してもキャリア相談を提供していく予定です。

もうひとつは「社員の生の声の活用」。キャリア開発を進めるためには、社員個人と環境(管理職・組織等)への両軸のアプローチが必要です。先にお話ししたとおり、本人の了承を得たケースに対しては上司などの関係者に対して働きかけを行っているのですが、組織の仕組みを変えたり新たに作ったりする必要があります。

現状は相談内容の守秘義務を保つために情報の機密性を高めているので、キャリア面談に寄せられた「社員の生の声」を関係部署に共有していません。情報の機密性を高めた結果、全社施策としての対策が打ちにくいという新たな課題も見つかっています。今後は守秘義務を担保しながらも「社員の生の声」をもとに組織課題を分析し、制度改革に活かしていきたいと考えています。

当社は、社員のキャリアを一緒に考えながらも、個人と組織の共存を目指すことが重要であると考えています。組織が社員に対して一方的に何かを与え続けていては、本当の意味で自律的な社員には育ちません。

与えられた環境に依存するのではなく、自分の人生(キャリア)を主体的に考え行動できる社員を育成することこそが、組織の成長を促進するのだと考えています。

今回の受賞をきっかけに、当社の取組を多数の人に知ってもらうことで多様な社員が安心して働き強みを発揮出来る環境をSIer業界全体に広めていきたいです。

※本記事は、受賞当時(2019年3月)のインタビューをもとに作成しています。

ホワイト財団のインタビューページ

アーカイブ