管理職「ずっと忙しい」「誰にも仕事が任せられない」 No.2が育たないのは”保身”の気持ちがあるからだ
皆さんには「管理職の自分ばかりが忙しい」「自分の仕事が任せられるメンバーが育っていない」という思いがありませんか?
なぜ、ずっとこのような状況なのでしょうか? そこには多くの管理職が抱える “ある問題”があります。
今回は、その隠れた問題に焦点を当て、解決方法をお伝えします。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
「あなたのNo.2は誰ですか?」という問いに答えられるか
管理職の職務は、安心して仕事が頼めるNo.2を育てることでもあります。家事代行サービスを提供する株式会社ベアーズの取締役副社長・高橋ゆきさんは、人材育成に関するインタビューで、入社して2年以上経つ社員には次のように話すと語っていました。
「いつも言っているのは『あなたのNo.2は誰ですか?』ということ。自分が次のステップに進もうと思ったら、自分の代わりを任せられる”No.2″の存在が必要です」
同社では、自分のNo.2を育てた先で次の役割が与えられる仕組みがあり、そのおかげで人材の成長が早いといいます。
皆さんは「あなたのNo.2は誰?」「自分の仕事を引き継げるメンバーを育てていますか?」と聞かれて、すぐに「ハイ!」と言えるでしょうか。なかなか答えられない人もいるのではないかと思います。なぜならNo.2育成を阻む “ある問題”がそこには隠されているからです。
No.2育成を妨げるのは”保身”の気持ちだ
なかなかNo.2を育てられない理由、それはズバリ”保身”です。人は誰しも自分を大切な存在だと思いたいし、人からも大切な存在だと認められたいと願っています。心理学の世界では、このような思いを「自己重要感」と呼びます。仕事で努力したり、いい時計やスーツを身に着けたり、高級車を乗り回したりするのは、これを満たすためです。逆に、自己重要感が脅かされるような事態は避けようとします。No.2の育成はまさにそれです。他の人でも同じ仕事が出来るようになれば、自分の立場が危うくなります。そのため、無意識のうちにブレーキをかけてしまうのです。
次の目標を持ち、自己重要感を更に上げる
このような状態から抜け出し、No.2を育てるには、無意識のうちの保身に気付き、自己重要感の満たし方を変えていく必要があります。
まずは今やっている仕事を「自分でなければならない仕事」と「メンバーでも出来る仕事」に分けていきましょう。さらに「自分でなければならない仕事」を、なぜ自分でなければならないのか、1つにつき最低3つの理由を挙げてみましょう。本当に自分でないと回らない仕事は意外と少なく、保身のためにやっていた仕事が見つかります。
次に、それらの仕事をNo.2に引き渡しても、自己重要感が満たせるようにしましょう。方法は意外と簡単です。次の目標を持てばいいのです。「そんなに簡単に見つからないよ!」と思った時は、次のようなポイントを念頭において考えてみるとよいでしょう。
(1)現在のキャリアや組織運営で避けたいことは何か?
(2)これまでのキャリアで諦めてきたことは何か?
(3)目標とする先輩は、どのような事をやっているのか?
どうでしょうか。自分の仕事を整理したら、No.2を育てながら次の目標に向かって進み、自身と企業の成長を同時にもたらしていきましょう。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。