働く場所・時間を自由にし、成果のみを問えば結果は出る? 問題はリーダーシップだ
テレワーク導入を機に、人事制度を変えようとしている企業は多いようです。実際、個人の役割(ジョブ)を明確にして、成果のみを問う「ジョブ」型の制度を入れたいというお問い合わせをよくいただきます。
成果重視のため途中経過は問わない、テレワークに留まらずロケーションフリーで働いてもらう。一見素晴らしい取り組みなのですが、そこには落とし穴があります。(文:People Trees代表 東野 敦)
成果を問う前に個人の能力を見極めよ
個人やチームで結果を出すため、それぞれのジョブを明確にして成果を問う。ざっと言うと最近ではこのような流れになっているように思います。個人の自主性を重んじるという方針は正しいと思います。
ただし、個人が成果を上げるには、持てる能力と専門性が最大限に発揮できるようなポジションへの配置(アサイン)が重要なポイントとなります。企業はこれまでも「個人を重視する」と言いながら、それを怠ってきました。今回のジョブ型への流れでも「個人にどんな仕事を任せるべきなのか」という部分が置きざりになったまま、「成果」だけが問われようとしており、「個人を活かす」という発想が薄いように感じます。
マネジメントの判断は、時に”阻害要因”となる
仮にこれらの問題がクリアされたとしても、それで成果が上がるわけではありません。仕事をしていく上で最大の阻害要因となりうるのは、マネジメントの判断と決断力です。はからずもコロナ禍で正しい判断・決断ができるかという点において、リーダー達の優劣が明確になりました。
いくら働き方を整備し、成果重視の人事制度を取り入れても、マネジメントの判断や決断が雑音となり、個人から上がってきた提案が活かされなければ成果は上がりません。本来、リーダー達がリーダーシップを持ち、会社をよくしようという気概をもって適切な判断と決断をしていくことが最も重要です。にも関わらず、仕事の成果がマネジメント個人に委ねられているのは、非常に危険な気がします。
個人の成果だけでなく、リーダーシップの質も問おう
現在、多くの企業では、企業理念や経営理念に基づくミッションやビジョンがあり、その実現によって社会課題を解決していこうとしています。これを更に加速させるには、リーダーが理念やビジョンの実現に向け、判断や決断をどのように行ったのか、個人の成果を促すためにそれぞれの特長をどう捉え、多様性を活かそうとしたのか、実際の行動を見る必要があるでしょう。個人の成果を問うだけでなく、リーダーシップの質を問い、結果としてチームで成果を上げて社会課題を解決していく。そのような循環を作っていきたいと思います。
<まとめ>
・個人の特長を活かした仕事の付与が重要なポイント(個人の能力に焦点)
・人事制度で社員に成果を問うならば、上司の判断力・決断力も問うべき
・働き方の整備と同様に仕事の阻害要因の解消(業務プロセス整備)も重要
People Treesでは、100%の適材適所をめざしたプログラム「Latenta (ラテンタ)」をリリース致しました。
【東野 敦】
SUBARU・本田技研工業・江崎グリコにおいて人事を担当。主に海外進出や現地法人・国内グループ会社の人事部門の支援を行い、担当した国は20か国以上に上る。2019年にPeople Trees合同会社を設立。大手企業の副業メンバーを束ね、企業の経営者と共に志の溢れる人・組織を作るべく奔走中。【企業サイト:https://peopletrees.co.jp/】