部下の自立と成長を促すには? 管理職がワークショップを開催してみよう
会社の中で、従業員の成長を促すものとして以下3つのことが良く言われます。
(1)仕事を通しての成長
(2)上司や先輩からの薫陶
(3)研修や勉強会
この中で「研修や勉強会」が成長を促すウェイトは全体の10%だと言われています。
「たった10%か……、やはり仕事で成長させるのが一番だな!」
と思った方もいらっしゃることかと思います。勿論、仕事を通して成長させていくことが最も望まれますが、この10%という数字を甘く見てはいけません。
「たった数日の研修だけで10%ものウェイトを占めるのか……」
と捉えてみると研修や勉強会の可能性が見えてきます。
心理学者のN・R・F・マイヤーは組織が成果を獲得する方程式を「業績=やる気×能力」とあげていますし、京セラ創業者の稲盛和夫さんも「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」と言っています。このやる気・考え方・熱意のリフレクションと、能力向上の場を設計していくことが組織成果を出すポイントになります。
現在の若者が就職先を決める一番のポイントに上げているのが、”自己の成長”です。若手の定着率向上の面からも、自らの成長に繋がる研修や勉強会を企画することのメリットは大きいと考えましょう。
社長や専務といった上級管理職がワークショップを開催するケースも
研修や勉強会というと、少しハードルが高く感じられますが、高尚な学びを提供する必要はありません。管理職自身の想いを伝えて、皆で考えてもらうワークショップをファシリテーションしていけばいいのです。
社長や専務が自社のメンバー向けにワークショップを開催するケースも珍しくありません。千葉県の船橋にある”ピーターパン”という有名なパン屋さんの会長、横手和彦さんは、自社のビジョンやおもてなしの心等を従業員に伝える「タケノコ塾」や「社長塾」を開催していますし、家事代行サービスで有名なベアーズの副社長・高橋ゆきさんも専務時代から「専務塾」という勉強会を開催しています。
ワークショップという形をとって、管理職の想いを伝え、メンバーの成長に繋がる場を設けることのメリットに気付き、展開されている方は意外に多くいらっしゃるのです。
“仕事の目的”は自分たちで考えないと腹落ちしない
私も製薬会社の課長時代に、「ひよこ倶楽部」という、若手メンバーを中心とした勉強会を毎月2時間開催していました。この中で、以下の2つのことを実施していました。
まず、私達の組織は営業部隊でしたので、ケーススタディを用いながら成果のでる営業パターンについて解説するとともに、メンバー自らに考えてもらっていました。
そして、今やっている仕事の目的や、楽しく仕事をしていくために必要なことをワークショップ形式で、参加者同士で考えて発表する場を設けました。
特に後者が大切です。上司側から仕事の目的や、楽しく仕事を進めていくための秘訣などを伝えることは簡単ですが、人は自分の腹の中から湧き上がってきたもので無ければ納得できません。自分たちで考え、意見をディスカッションしていきながら腹落ちしていくことが必要なのです。
また、講師やファシリテーターを中堅メンバーや同僚に担当してもらうことによって、若手のみならず、ベテラン社員の学びの場とする工夫も取り入れました。一年ほど時間はかかりましましたが、結果を出す元気なメンバーの育成に繋がりました。
自ら動くメンバーを作り、組織成果を最大化していくためには、メンバーの自律と成長の場を上司自らが作り上げていく必要があります。メンバーの成長は上司自身の時間を作る事にも繋がります。管理職の皆さんは忙しいとは思いますが、勉強会がうまく機能しだすと、思いがけない成果をもたらすこととなります。右腕メンバーと企画してみませんか。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。