部下が言い訳ばかりする…… 成果を出している管理職が使っている”良質な質問”とは?
先の見えない時代においては、ゴールイメージを明確に持てないことから、以下の様な”出来ない言い訳”が氾濫してしまいがちです。
「自分は、能力が低いので……」
「人手不足なので……」
「今は、コロナなので……」
「競合が強くて……」
「周りが協力してくれないので……」
しかし、このような時代でも成果を出し続けている組織はあります。以上のような言い訳が氾濫する組織には、あるフレームがかかっているのです。
質問がフレームをつくる
唐突ですが、
「皆さんは、本日の朝食に、何を召し上がりましたか?」
すると、皆さんは「朝は食べていないな~」とか「朝はトーストとコーヒーだったな」と考えていくはずです。
何をお伝えしたいかというと、質問は思考を支配していくということです。前述のような言い訳の多い組織の部下達は、自分自身に対して、「先の見えない時代だな……、上手くいかない理由は何かな?」といった質問を無意識に投げかけ、出来ない理由を生み出しているのです。
これを私は、”出来ないフレーム”に自らを入れていると表現しています。”出来ないフレーム”に、自分自身を入れると、無意識に出来ない理由を探していってしまうのが人間の心理です。
有名な逸話があります。2人の靴商人という話です。2人の靴商人が未開の地に派遣されてみると、その土地の人たちは靴を履いていませんでした。一人目の靴商人は、「こりゃダメだ、売れない」と思い、とっとと本国に帰ってしまいます。しかし、2人目の靴商人は、「こりゃ売り放題だ!」と、その土地に靴の文化を浸透させながら、ビジネスでの成功を勝ち取っていきます。これも自分自身を”売れないフレーム”に入れるのか、”売れるフレーム”に入れるのかで変わってくるということです。
これらの”出来ないフレーム”や”売れないフレーム”から抜け出すためには、”フレーム”を変える新たな質問が必要となります。
部下のフレームを変える質問をする
“出来ないフレーム”に入っている部下を、そこから抜け出させるためには、”出来るフレーム”に入れるための上司の質問が必要です。「先の見えない時代に、目標を達成するための方法は何かな?」といった質問を、部下自身が自らに投げかける状況を作っていかなければなりません。そのために使える上司の質問としては以下の様なものがあります。
「目標達成するために、やれることは何かな?」
「出来ることがあるとしたら、どんなことが出来る?」
「もし、半年後に目標が達成されているとしたら、何をしたから達成できたと思う?」
「先輩の○○さんだったら、この状況で何をすると思う?」
「これまでの経験の中で、参考になるものは何かな?」
といったものです。
また、質問の種類としてWhyの質問ではなく、Howの質問をするといったことも効果的です。「なぜ、目標達成がむずかしいの?」とWhyの質問をすると、部下の言い訳を導き出します。しかし、「どのようにしたら、目標達成できると思う?」とHowの質問をすると、部下の行動を導き出すことができます。
部下の成長を支援し組織の成果を獲得していくために、上司は良質な質問を自分自身に投げかけるとともに、部下にも投げかけていく必要があります。そのためには管理職として、良質な質問リストを作り、日々のコミュニケーションの中で使っていくことが大切なのです。
—–
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。