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課題図書は読んだ。読んだのに、原稿用紙が一行も埋まらない。子どものころ夏休みなどの長期休暇に読書感想文の宿題を出され、困った経験がある人もいるのではないでしょうか。
ここで詰まっているお子さんは、決して文章が書けないわけではありません。「書くべきこと」が自分の中に見つからないだけです。学習塾経営者兼プロ家庭教師の視点から、読書感想文との向き合い方を解説します。(個別指導塾経営、プロ家庭教師:妻鹿潤)
感動しなければならないというプレッシャー
読書感想文がしんどくなる理由の一つは、「それっぽい感動」を期待されるからです。「命の大切さを学びました」「家族への感謝に気づきました」などがその典型です。 実際に感動したわけでもないのに、そうした感想を求められる。それでは手が止まるのも当然です。
本を読んで何も感じないことは普通にあります。大人だって、話題の一冊を読み終えて「まあ、こんなもんか」で終わることがあるでしょう。ましてや子どもに、自分で選んだわけでもない課題図書を与えて、毎回きちんと感動しなさいというのは無茶な話です。
そもそも課題図書は、ほぼ全員に読ませる前提で選ばれます。なので、極端な内容や賛否の割れる作品は入りにくく、当たり障りのない、いわゆる“いい話”が並びやすい構造になっています。本来は意見が分かれる本の方が退屈せず、書くことも多く見つかるものですが、選ばれた本を変えることはできません。
感動しにくい本を渡されて感動を書くことを求められている以上、手が止まってしまうのはごく自然な反応と言えます。
割り切っていい。宿題は宿題でしかない
ここで発想を切り替えます。「感動しなければ」と気負うのではなく、「感動しなくても書ける型」に沿って仕上げてしまうのです。無理に感動することは難しいのですから。
具体的には、以下の型を使います。
1.この本を読んだ理由(「表紙の絵が気になったから」「タイトルの◯◯という言葉が気になったから」でOK)
2.どんな話か(三行程度の要約)
3.印象に残った場面をひとつ
4.なぜそこが印象に残ったか
5.読み終えて思ったこと
2〜3は基本的に要約作業です。本の中に答えが書いてあるので、作業としてこなしましょう。考える必要があるのは1や4以降ですが、ここも決まったパターンで記述できます。
◯◯というセリフ(行動)が印象に残りました。自分も同じように思うからです。
◯◯というセリフ(行動)が印象に残りました。自分だったら、そうしないと思うからです。
理由を立派に仕上げようとする必要はありません。自分と同じか、違うか。その二択で記述します。
5は4を反転させるだけで成立します。
◯◯のように、△△したいと思いました。
◯◯のようには、なりたくないと思いました。
最も共感できた登場人物、あるいは最も共感できなかった登場人物を一人選んで当てはめるだけです。
これは手抜きの推奨ではありません。誰が何をして、どの場面が話を動かしているのか。物語の構造を客観的に捉える練習になっています。読書感想文で噓の感想を述べるよりも、むしろこちらの方が有意義です。
感動は、別のところで満たせばよい
学校の先生が選んだ課題図書という素晴らしい本を読んで、自分もしっかり感動しなきゃ、ではありません。そんな先入観は取っ払いましょう。
素晴らしい感動は、人それぞれです。ドラえもんの映画かもしれないし、ポケモンのアニメかもしれないし、ファイナルファンタジーのエンディングかもしれない。
大人の方々も、子どものころに心にぐっときた作品があったはずです。そしてそれは、必ずしも課題図書ではなかったのではないでしょうか。(課題図書で自然と心が動いた場合は、その気持ちをそのまま文章に書けば問題ありません)
課題図書を無理に読まなくても、お子さまは自分の好きな作品から自然と刺激を受け、感性を育てていきます。そして、感想を言葉にするのは、本当に心が動いたときで十分です。何も感じていない状態から言葉をひねり出そうとするから、苦しくなるのです。
ゲームのエンディングで感動したなら、「これすごくよかった、やってみてよ」と伝えるだけで十分ですし、たとえ誰にも言わなくても、ひとりで噛みしめてこそ深まる感動もあります。
切り分けることで、守られるもの
自然に生じる感情は、それだけで価値があります。うまく文章にまとめる必要もありませんし、大人の意図通りに心を動かす必要もありません。
提出しなければならない作文は、型を使って作業として処理する。心を動かす体験は、自分の好きな作品で得る。この2つを明確に切り分けることで、読書感想文の負担は大きく軽減されます。
そして何より、お子さまの「面白い」と感じる力を、宿題に巻き込まずに済みます。机の前で手が止まっているお子さまには、「型に沿ってサクッと書いて終わらせよう」と声をかけてあげてください。そして提出が終わったあとに、「最近、なにか面白いものあった?」と尋ねる。本当に大切なのは、その会話です。
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