採用担当者が頑張っているのに「成果が出ない会社」が増えている理由
人材研究所代表・曽和利光氏の連載「採用担当者があなたの会社を魅力的にする」。今回は、就活に熱心だからといって、優秀な学生とは限らないという話。そのうえ優秀な学生は、人気企業に流れてしまいます。普通の会社の採用担当者は、就活に熱心ではなくても優秀な学生をターゲットにすべきでしょう。
早期からたくさん人を集めていたのに
採用に力を入れようとして、就職活動の早期からインターンシップやら会社説明会やらをバンバンやって、たくさん人を集めて、口説いていたのにもかかわらず、最終的に入社に結びつかず、採用に失敗してしまう企業が増えています。
採用担当者の方は熱意にあふれ、大変な努力をしているのに……。原因のひとつは、少子化や好景気などの環境要因に伴う「売り手市場」です。しかし、その中でも成功している会社もあるわけで、すべてを環境のせいにはできません。
間違っているのは「ターゲット」
採用意欲の盛んな「がんばっている会社」で成果が出ないのは、なぜでしょうか。それは「間違ったターゲットに採用活動を行なっている」ことです。
本当ならターゲットにしてはいけないような、なかなか採用につながらない対象をターゲットにしているのが最大の理由。その間違ったターゲットとは「就職活動を頑張っている人」「就活意欲の高い人」です。
就活初期から頑張っている学生の特徴
なぜそれが間違ったターゲットなのか。就職活動初期から頑張っている学生がいる理由は、みんなに「すごいね!」と言ってもらえるような、入社難易度の高い人気企業、有名企業に是が非でも入社したいからです。
入社難易度の高い企業にどうしても入りたい思いが強くなければ、この売り手市場においては、そこまで頑張る必要はないでしょう。
つまり、企業が早期に採用活動を始めることの一番の落とし穴はここです。採用活動を張り切って早く始めてしまうと、人気企業に受かれば最終的にそちらに行ってしまうような学生にばかり出会ってしまうということです。
狙うべきは「就活意欲の高くない優秀な学生」
採用競合に先んじて、早くから採用活動を頑張ること自体は悪いわけではありません。ただその場合は、できるだけ「就活意欲の高い学生」には会わないようにし、むしろ就職活動にまだあまり関心がない人に出会う工夫をすることが重要です。
例えば、マス広報よりもリファラル(内定者や社員からの紹介)で母集団形成を行うとか、自社の職場体験的なインターンではなく、どんな学生でも興味を引くようなネタ(地方創生系とか大学生向け事業開発とか)でインターンをするなどです。
入り口のところで就活意欲があまり高くない人を集めて、その中から自社に合う人を見つける。それができれば、人気企業と競合せずに自社への入社までこぎつける人を比較的容易に確保できる確率は高まるのではないでしょうか。
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/