世間の注目集めた”名古屋のごみ屋敷”で突撃ボランティアをして気づいたこと | キャリコネニュース - Page 2
おかげさまで10周年 メルマガ読者数
65万人以上!

世間の注目集めた”名古屋のごみ屋敷”で突撃ボランティアをして気づいたこと

5年前のあの日、場所がわからなかったのでSNSを頼りに探すしか方法はなく、歩き回ったのちにあのおじさんを見つけました。その周りにはテレビで知ったという若者が7、8人、おじさんを囲むようにたむろしていました。

二人きりでじっくりと話をしたかった僕は、「東京から来ました」と挨拶したあと、おじさんが一人になるまでずっと待つことにしました。

著者提供

著者提供

結局、おじさんが一人になったのは深夜2時。正直、好奇心やボランティア精神とは別で「おじさんが自ら『片付けたい』と思えるようになる実績出したら売れるかな」なんていう欲があったのは事実。

でも、おじさんと話す中で、おじさんが経験してきたことの壮絶さや深さを知り、ど「これは大変な問題に足を突っ込んでしまった」という思いと、「相当な覚悟が必要だ」ってことに気づきました。

おじさんとの話は初日、深夜2時から朝8時くらいまで、そのあとさらにお昼から深夜まで話し込みました。15時間は話していたんじゃないでしょうか。それを2日ほど行い、いったん東京に帰り、2~3日後にまた名古屋に向かう。

そんな日々が続いたある日、どうしてごみ屋敷を生み出してしまったのかというおじさんの”内的動機”を引き出すことに成功しました。個人情報なので詳しくかけませんが、おじさんもきっかけがあって生活が破綻してしまっていたのです。

そして、一緒に片づけ始めるまでになりました。最終的に敷地外の部分をすべて片づけ、市の担当者とも話し、あとは大きなものを別の場所に運んで後日精査しましょうというところまでいきました。僕も安心して「次は2週間後くらいにくるから今度は家の中やろうね」なんて伝えて別れました。

しかし2週間後。そこには元の荒んだ状態に戻ったおじさんがいたのです。僕に会うやいなや胸ぐらをつかんできて「お前のせいでものがなくなった!」と叫びだし、警察に囲まれて強制終了。僕の読みが甘かった。まだずっと支え続ける必要があったんですよね。習慣がしっかり身に着くまで二人三脚で。

お互いの被害者意識がぶつかり合ってさらなる軋轢を生む

おじさんは、あの状態になる前はそれなりに名の知れた大学に通い、就職もし、いたって普通の生活を送っていたそうです。でも、家族間で起こったあることがきっかけでゴミ屋敷になった。

一般的に”ごみ屋敷”になる原因はさまざまあると言われています。寂しさの裏返し、元々片づけることができない気質、脳機能や精神疾患の問題……。本当にさまざまですが、人間は本当にびっくりするようなたわいもないきっかけから、簡単に”心が崩壊”します。

おじさんも本当に僕たちも日常生活でごく普通に起こり得ることがきっかけでした。例えば、親からの評価、兄弟のささいな行動の一つ。他人からすれば「そんなこと?」と思うことでも、本人からすれば非常に大きな出来事だったんです。

著者提供

著者提供

おじさんは、自身を”被害者”だと思っている。あの状態で迷惑をこうむっている人ももちろん”被害者”だと感じる。お互いの被害者意識がぶつかり合って、さらなる軋轢を生んでいました。

「ごみ屋敷って迷惑だよね」「最悪」 僕もそう思ったし、社会的にはみ出した異質な行為に対してそう思うのは当たり前のことだし仕方ない。でも、もっとその原因の裏側をみてみると、きっかけは周囲の人が作り出してしまっているのかもしれない。

そして、いじめ、DV、パワハラ、セクハラなど人間関係で深い傷を負った人は、自分で気づかないうちにいつの間にか誰かを苦しめているときがあります。自分を”被害者”だと思っているから、自分が”加害者”になっていても気づかないのです。

今あの家は、強制撤去という形できれいに片づけられました。でも、きれいになったとしてもおじさんの気持ちがきれいになっていなければ根本的な解決にはなりません。

著者近影

著者近影

【筆者プロフィール】ちばつかさ

合同会社komichi代表。柔道整復師、こころと体のコーディネーター、元プロ野球独立リーグ選手。東京と福井で投げ銭制の接骨院を運営しのべ10万人近くの心と体に向き合ってきた。野球経験とコーチングの経験を活かし都内で“野球を教えない野球レッスン”を運営。レッスン卒業生がU12侍ジャパンの代表に選出された。現在、心理学を学ぶため、アラフォーで大学在学中。【公式サイト】

【PR】注目情報

関連記事

次世代バナー
次世代バナー

アーカイブ