新型コロナ不況を恐れる就活生へ 悪条件下の就活にもチャンスはある
新型コロナ対応が進行中の段階で未来予測をするのは大変気が引けますが、新卒採用がこのあと一体どうなっていくのかについて考えてみたいと思います。企業の新卒採用は2年がかりで行うものなので、本来であれば6月くらいから夏のインターンシップの募集が始まって2022年卒の採用がスタートします。
しかし実態としては、企業側は21卒採用で混乱しており、今のところ22卒のことはまだ考えられていないところがほとんどです。ただひとつ言えるのは、様々な調査をみると多くの企業が21卒は「予定通り行う」としており、投資した分はきちんと回収する予定ということです。(人材研究所代表・曽和利光)
21卒はやり切る分、しわ寄せが22卒に?
このことは21卒の学生には朗報ですが、22卒の学生には嫌な情報かもしれません。景気の悪化がほぼ確定している中で、「今年は採る」なら「来年は抑える」ことになるはずだからです。
本当は今年を抑えてもよいのですが、投資がもったいないので最後までやり切る。その代わり来年は最初から投資しない。この可能性がかなり高いのではないかと思います。似たような状況であったリーマンショック時にはどうだったか見てみましょう。
リクルートワークス研究所のデータによれば、リーマンショック直後の2009年の求人倍率は2.14倍と前年と変わらなかったのですが(まさに「今年は採る」)、翌年から1.62倍→1.28倍→1.23倍まで減少しています。単純計算では売り手市場の2009年を100%とした求人数が、翌年には約75%に減り、その翌年・翌々年は約60%になったということです。
100人採るところが60人しか採らなくなり、前年なら通っていた40人が不合格になるというわけです。志望企業にトップの評価で入るつもりなら関係ありませんが、なんとしてもすべりこもうとしているのであれば、この影響は大きいでしょう。
リーマンショック後も1倍を切ることはなかった
そういう可能性を考えれば、これから就職活動をしようと考えている学生の皆さんにお伝えしたいのは、シンプルに「就職活動を頑張ろう」ということです。例えば、昨年までは会社説明会の平均参加社数は十数社社ぐらいだったのですが、おそらく来年はそれでは少なすぎるのではないかと思います。
何社行けばよいのかということは断定できませんが、煽るつもりはないものの、行けるだけ行けばマッチングの確率が上がるということだけは言えます。感覚的なアドバイスで恐縮ですが、20社から30社ぐらいはアプローチしてみてはどうかと思います。とにかく就職活動を頑張りましょう。
その上で言いたいのは、結局、リーマンショック後でも求人倍率は1倍を切ることはなかったということです。人手不足もさらに深刻化しており、変に選ぶことをしなければどこかには入社できる可能性があるということです。
「入りたいところに入りたい」のはよくわかります。しかし、それにこだわっていては、ぜひあなたに来て欲しいというところがあるのに浪人してしまうことになります。前述した通り、翌年に事態が改善しているとは限りません。ある程度の妥協をしてでも、限られた若い時期に経験を積むほうがよいのではないかと思います。
不景気でも新規採用している会社は強い
事業が立ち行かない状況で採用を頑張ろうという企業はありません。好景気期にはどんな企業も採用を頑張ろうとしますが、現在のような景気低迷期に新卒採用をしている企業は明らかに優良企業です。
そういう意味では、このような世界的な危機の時期において募集しているところは強い企業です。就職活動をする学生は、どこの会社なら将来性や成長性があるかなどということは考えなくてもよいかもしれません。
また、このような時期に入社した人にはメリットもたくさんあります。端的に言えば、ライバルが少ないので、よい仕事機会をゲットできるチャンスが多いということです。
よいキャリアを歩む方法の一つとして、よく「逆張り」ということが言われます。多くの人が選ぶ選択肢とは違う方向を選ぶということですが、採用数を減らす不景気期に入った人は、ライバルが少ないので勝つ可能性は高くなるということです。
以上のようなことを考えると、不況をただ単にマイナスに捉えるべきではないのではないかと思います。ちなみに私もバブル崩壊後の氷河期世代ですが、それでよかったことはたくさんあります。皆さんも不安がらずにぜひ前向きに頑張ってください!
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。著書に『コミュ障のための面接戦略 』 (星海社新書)、『組織論と行動科学から見た人と組織のマネジメントバイアス』(共著、ソシム)など。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/