いったい何回言えば分かるんだ!? 一人ひとりは大人でも、組織は「子ども」で「分からず屋」になる
組織変革論の第一人者J.P.コッターは、著書「企業変革力」(日経BP社刊)において、組織変革を進めるためには、次の8つのステップがあると述べています。
1.危機意識を高める
2.変革推進のための連帯チームを築く
3.ビジョンと戦略を生み出す
4.変革のためのビジョンを周知徹底する
5.従業員の自発を促す
6.短期的成果を実現する
7.成果を生かして、さらなる変革を推進する
8.新しい方法を企業文化に定着させる
言い換えれば組織を変えるためには、8つの壁があるということ。しかも彼は、それぞれのステップを一つも飛ばすことなく、丁寧に進めなくてはならないと言っています。
組織への浸透には「子どもっぽいこと」も避けられない
コッターが述べているのは主に大規模な組織におけることですが、小さな組織であっても、程度の差こそあれ同様の丁寧さが必要です。人にモノを伝えて分からせて、行動に移してもらうのは、ことほど左様に難しいものです。
ですから職場のマネジャーは、手を替え品を替え、日々メッセージを工夫して伝えていかなくてはなりません。そのためには朝礼もするでしょうし、垂れ幕や掲示板も使うでしょう。分かって欲しいことをカードにして掲示させたり、毎日全員で唱和したりもします。
分かった人を表彰したり、その栄誉が分かるように赤いブレザーやバッジなどの分かりやすいブツで表現したりするかもしれません。1人でも500回、組織全体では8つの壁。これを超えるためには、あらゆるチャネルを通じてメッセージしなくてはいけないのです。
ただ、私もそうでしたが、組織に入ったばかりの人は、これらの活動を子どもっぽいと思うものです。「いい歳の大人たちが何を小学生みたいなことをしているのか」と。しかし、実際にマネジャーになり、人に動いてもらわなくてはいけなくなったとき、これらの重要さにようやく気づきました。
白けさせずに徹底することが成否のカギに
振り返ってみれば、社員を大人扱いし、一度言えば分かるだろうと思って、くどくど言うことを避けていた頃は、人は全く動きませんでした。理解するということが即行動につながるとは限らないし、一度理解したらずっと記憶しているとも限らないからです。結局、何度も何度も伝えるようになり、ようやく徐々に人が動いてくれるようになりました。
組織を変革するためには人事制度も変える必要がありますが、大事なのは社員を「白けさせない」ことです。このことの重要性は、サイバーエージェントの人事を担当する曽山哲人さん(現取締役)も強調していました。
正直言って、我に返れば「子どもっぽい」ことをするわけですが、一人一人は大人でも、組織は「子ども」のような「分からず屋」だから仕方ありません。だから、いかにうまく白けさせることなく、子ども扱いされていると思わせず、繰り返し伝えてメッセージを浸透させるかが成否のカギなのです。