「人間なんて5分でわかる!」と豪語する人が危ない 「人を見る目がない人」が陥りやすい3つの罠 | キャリコネニュース
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「人間なんて5分でわかる!」と豪語する人が危ない 「人を見る目がない人」が陥りやすい3つの罠

組織を動かし、働きやすい職場にしていくためには、まず組織やそこにいる人に対するアセスメント(診断、見立て)が重要です。今がどうなっているか誤認したところから職場改善をスタートしても、間違ったゴールへと向かって進むだけです。

特に人事分野は、事業戦略や商品開発、マーケティングなどの領域よりも解決策の選択肢は少ないので、極端に言えば最初の見立てさえしっかりできれば、後はドミノ倒しのように半ば自動的に決まっていきます。

しかしそのような少ない選択肢でも、見立て違いによってよく間違ってしまうのが人事の怖いところです。「人や組織を見る目がない人」がいかに多いかということの証拠ですが、そういう人にはどのような特徴があるのでしょうか。(文:人材研究所代表・曽和利光)

人の認知は罠だらけ。評価を歪める「心理的バイアス」

人を拙速に判断する罪

人を拙速に判断する罪

人が何かを認知する際、その捉え方を歪めてしまう現象を「心理的バイアス」といいます。人を見る目がない人は、心理的バイアスの影響を強く受けやすい傾向があります。

例えば「確証バイアス」は、一度抱いた仮説や信念を検証する際に、それを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことを言います。古くはローマ帝国のシーザーからいろいろな人が言っていますが、要は「人は見たいものしか見ない」ということです。

自分と似たタイプの人を好む「類似性効果」もあります。いろいろな会社の人事考課を調べてみると、上司と同じタイプの部下は評価が高く、異なるタイプの部下の評価は低くなりがちです。組織の創造力を高めるために多様性の高い組織にしたいと努力している経営者や人事責任者からすれば、「似たような人ばかり評価する」ことはマイナスでしょう。

「ハロー(後光)効果」も人を見る目の精度を下げるバイアスです。ある対象を評価する際に、顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことです。抜群に優秀な側面を持っている人は、他の側面の評価も高まります。

卑近な言い方をすれば「※ただしイケメンに限る」、見た目の印象で仕事の成果も優れていると評価されることがあり、その逆もあるということです。心理的バイアスの種類には他にもたくさんありますが、とにかく人の認知は「罠だらけ」なのです。

思い込みの激しい決断型が「拙速な見立て」をする

それなのに、多くの人が「短時間で人なんてわかる」というようなことを言います。しかしそれは「わかる」の意味が誤っているのです。人は人と出会った時に、5分もあれば強迫的に何らかの印象を持ってしまいますが、それはあくまで心理的で主観的な「仮説」であり、客観的な「真実」ではありません。

この手の誤りをする人は「思い込みの激しい人」です。事業において大活躍している百戦錬磨の経営者や事業責任者などの偉い人たちの多くも「人は短時間でわかる」と言ったりします。彼らの中にはスーパーマンもいるので私ごときが意見するのは憚られるのですが、人間であれば世界中どこでも通用する心理学の理論は彼らにも通用すると思いますので、やはりどんな偉い人が言おうが、間違いは間違いです。

では、なぜそうなるか。彼らは日々十分ではない情報の中、素早い経営判断を求められているため、意思決定スタイルが少ない情報の中からスピーディーにビシッと一つに判断をする「決断型」であることが多いです。そうでなければ、その職責に応えられません。それを人に対しても適応してしまっているのではないでしょうか。

素早く判断を行うことが身につきすぎてしまって、じっくりと話せばしっかりと人を見抜くことができるような人でも、「今、この組織や職場はどういう状態にあるのか」「そこにいる人々はどんな状態にあるのか」ということには拙速な判断をしてしまうのです。

「自分の偏見」に対して自覚的であれ

このように、きちんとした「人を見る目」を持つためには、自分の中に生じる心理的バイアスの罠にどれだけはまらないようにできるかが重要です。心理的バイアス自体は消すことが難しいですし、そもそもその人の価値観や好き嫌いは消すべきでない、消す必要のないことでもあります。

つまり問題は、どうしても生じる心理的バイアスを自覚できるかどうかということです。自分が人に対して持っている偏見や価値観、好き嫌いをわかっていれば、そういう心理的バイアスがどこで生じそうかがわかり、人を注意深く見ることができます。

自分に生じそうな心理的バイアスを知るには、自分がどんなパーソナリティであるのかを知ることです。常日頃から周囲からのネガティブなフィードバックをきちんと受け止め、適性検査などで自分のパーソナリティを可視化したり、様々な方法で自分を知る機会を作ることで、自分の偏見に自覚的になり、結果として人をフラットに見る目が養われていく基礎ができるのではないでしょうか。

あわせて読みたい:曽和利光の「働きやすい職場とは何か」

 

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