今からでも遅くない! 折返し突入の『麒麟がくる』やたら面白いので全力でおすすめしたい
今期の大河ドラマ『麒麟がくる』が面白い。放送直前には当初収録に参加していた帰蝶役の沢尻エリカがまさかのスキャンダルで降板。しかも本来では今年予定されていた東京オリンピックのために話数は44話に削減されるという憂き目に遭っていた本作。
その時点で「なんか不遇だな」と思っていたら、返す刀の新型コロナ。これによって3か月弱の放送中止を余儀なくされ、やっと8月30日に放送が再開されたかと思えば、まだ終わらない。
今度はその翌週に上陸した台風10号のために放送休止となった。なんともめぐり合わせの悪い本作だが、それでも唯一の救いは、めちゃくちゃ面白い作品に仕上がっているというところにある。(文:松本ミゾレ)
今年の大河は観ないと損!舞台もキャストも素晴らしい。
本作は放映スタート時点で大河ファンからも高評価だった。毎週日曜の放映時間からはSNSでハッシュタグ付きで実況・応援する視聴者もかなり多い。
もともと戦国の世を舞台にした作品は人気もあるが、本作の場合は主役が明智十兵衛光秀(演:長谷川博己)ということもあって、知名度も高い人物が活躍するという時点で、ある意味成功も約束されている。だって主役が著名人であれば、自然とその主役を取り巻く面々も、人気と知名度の高い人物だらけになるからだ。
一部を挙げるだけでも、明智十兵衛の周りにいる人物は斎藤道三(演:本木雅弘)、織田信長(演:染谷将太)、豊臣秀吉(演:佐々木蔵之介)と錚々たる面々である。加えて本作では室町幕府を治めた13代将軍足利義輝(演:向井理)や第106代正親町天皇(演:坂東玉三郎!)までもが登場する。
戦国の時代にしのぎを削った名手たちが次々に登場する、まさしく大河ドラマなのだ。既に退場したが斎藤道三と息子の斎藤高政(演:伊藤英明)の親子対決はかなりの力量と迫力で描かれていたし、今川義元(演:片岡愛之助)が登場から討たれるまでを華やかに走り切った描写も珠玉であった。
このドラマ、とにかくキャストが素晴らしい。その上で時代背景が血沸き肉躍る戦国の世。毎週見逃せない山場が盛り込まれている。地味に合戦シーンもセットではなく、野外ロケばっかりでかなり贅沢だ。
大河に欠かせぬキャストも続々登場 オールドファンも納得か?
『麒麟がくる』のキャスト選定は、個人的にもかなり注目してきた。そしてこのキャスト選びについては、未だにほとんどの人物がうまくハマっているように感じている。それこそ帰蝶役として急遽代役出演となった川口春奈に至るまでも。あの子美人だし。
本作は、これまで大河ドラマではあまり顔を見ることのなかった役者が登場することが目立つんだけど、それも目新しい。坂東玉三郎が出るなんて、予測すらできていなかったなぁ。
かと思えば、過去に幾つもの作品で熱演していたキャストも少なくない。そしてこの傾向は今後も続く。朝倉家の家臣・山崎吉家役には榎木孝明が。堺の豪商・今井宗久役には陣内孝則が。室町幕府の官僚・摂津晴門役には片岡鶴太郎が……といった具合に、過去に何作かの大河ドラマで癖の強い登場人物を担当した面々が続々登壇することが決定している。
くわえて主人公の明智十兵衛自身の、特に若年期の動静が謎めいていることを逆に利用し、様々な勢力との接触も図るというドラマの作り方が奏功しているのも面白い。結果的に、かつての大河ドラマでも活躍した、歴史上の主要人物。あるいはその血族にあたる面々と上手い具合に知り合いになっていたりもするのだ。
創作部分が多過ぎるとお気に召さないという方も多いかもしれないが、その点は僕自身はあんまり気にならない。とにかく、『麒麟がくる』というドラマは、これまで戦国の世を舞台とした大河ドラマに親しんだ人にとっては、色んな意味で懐かしいと思える演者や役柄も登場するため目にも楽しいはず。
それに「まだ大河をちゃんと観たことがない」という人にとっても、キャストが豪華だし、登場人物が実に多くの勢力から選ばれていることもあって、観ているだけで自然とこの時代の有力な家柄の人物たちの名前を把握しやすい。歴史に興味がないという方であっても、無理なく色んな知識を得ることができる(もちろん創作部分もあるけどね)。大河ビギナーにとってもオススメなのだ。
既にドラマは折り返し地点を過ぎたが、ここからまた新しく登場する人物、台頭する勢力もある。今から観始めても全然遅くないはずだ。
それに、放送休止中にちょっと興味が薄れたという視聴者さんも多いだろうけど、まだ20話以上は残されている。ここからがきっとさらに面白いのだ。脱落したまま来年の大河を待つのはもったいないぞ!