ネトフリ優勢で映画館の未来はどうなる? 笠井アナ「スマホでゴジラを観て、ストーリーがいまいちとか言わないでほしい」
中でも『マンク』は、映画史上最高傑作と称賛された『市民ケーン』の制作秘話を描く作品で、作品賞や監督賞など最多10部門ノミネート。笠井さんは、この作品はネトフリ会員なら今すぐにでも観られる、
「つまり劇場に行かなくて観れられる映画が、今年アカデミー賞で一番評価が高いということ」
と指摘した。その上で、新型コロナウイルスの影響で、ソニー、ディズニー、ワーナーなどメジャーな映画スタジオの困惑ぶりも解説した。
米国では、1月の映画館の稼働率が35%で、大作映画を公開しても利益が見込めないという。昨年2月公開予定だった「007」シリーズの最新作は、制作費が270億円。再延期を繰り返し、今年11月に公開予定だというが、
「巨額な制作費が、1年以上寝かせているから回収できない。お金借りてたら金利どれだけになります?会社が傾きかねない状況になっている」
と笠井さんは声を荒げる。この状況に、メジャーな映画会社は経営的判断からネット配信に舵を切った。例えばディズニーは、大作映画『ムーラン』の劇場公開を断念し、去年9月に「ディズニープラス」で独占配信。これは定額料金770円プラス追加料金で見られるが、『ソウルフルワールド』は月額だけで視聴可能だ。現在公開されている『ラーヤと龍の王国』は、劇場公開と配信が同時公開となった。作品によって対応がバラバラで、何がいいのか模索していたという。
「シネコンで、でかい画面で、大きな咆哮を聞いてほしい。それこそが映画なわけ!」
そんな中、ディズニープラスはサービス開始から1年4か月で有料会員数が1億人を突破。笠井さんは、
「770円ってことは、月に770億円はディズニーに入る。劇場で公開しなくても、お金が入ってくるってこと。制作費はまかなえる」
と解説。これに他も追随し、ワーナーブラザースは「新作映画すべてを劇場公開と同時に配信する」と発表している。しかし笠井さんは、「ゴジラをスマホで観るってどうなの?」と不満な様子だ。
「スマホでゴジラを観て、ストーリーがいまいちとか言わないでほしいわけ!シネコンで、でかい画面で、大きな咆哮を聞いてほしい。それこそが映画なわけ!」
と強い口調で力説。途中で立ち上がり、机を叩きながらの熱い主張だった。確かに、スマホの小さな画面では迫力は感じられないだろう。
映画会社が配信に力を入れるのは、コロナ禍の今、避けられない流れだ。しかし映画がネット配信にすべてシフトすれば、「劇場は、シネコンは潰れる」と笠井さんは憂慮する。今後が大事で、「会社も守りたい、劇場も守りたい」と、映画業界に対する複雑な思いを語っていた。
視聴者からはツイッターで、「か、笠井劇場開幕ですな……。熱量がすごい」「笠井さん熱い!」といった感想が寄せられた。中には、「笠井さん、お元気な姿を見られて良かったです」という声も。がん治療から復帰した笠井さんは、顔色もよく声にも張りがあって本当にお元気な様子だった。これから劇場で映画が観られるというときに映画館の危機を目の当たりにし、言わずにはいられなかったのだろう。