『どうする家康』家康が信長暗殺を決意した理由がガッカリだった
『どうする家康』で正室である瀬名(演:有村架純)と息子の信康(演:細田佳央太)が処分されたのは、家長である家康に内緒で勝手に敵である武田や、関係性も微妙な今川に内通して、戦の無い世を作ろうとしていたからである。もちろんこれはドラマオリジナルのお話で、実際の処分の経緯とは話が異なる。
戦のない世、争いもなく物の行き来が出来る世作りというのは立派なお題目だけど、それはまさに信長も天下統一という形で目指しているわけで、ここに違和感をおぼえた視聴者は多かったのではないだろうか。
これ、普通に考えれば家康にしても身から出た錆って思うだろうし、この一件をずぅっと恨んでいるってのは、どうにものちの天下人らしくない。
家族を殺さなければならなかった過去に関して、信長を恨む一心で精神を保ってきた、といったような話もあったけども、それは時代的にしょうがない話なんじゃないかと。第一義は血を絶やさないこと。そのために妻を何人もかこって、子供だってガンガン作るわけだし。
徳川だって今後、天下泰平を目指して散々戦もするし、相対した武将を処刑するわけで、結局血で血を洗う合戦の連続はまだ続くのに、自分だけは、自分の家族だけはって、そりゃ通らないよ……。
だから信長をあそこまで恨むのは本当に筋違いだよなぁということを考えながら、本放送をぼんやり眺めていた。で、来週退場になるからか、いきなり信長も過去に帝王学を叩き込まれたトラウマがあるみたいな描写もあったけど、そういう弱さを退場前に見せるのってちょっと卑怯だよね。なんか可哀想に思えてしまうので。
でも、可哀想とは思えても「退場してほしくない」とまではいかないのが、正直な話この大河の特徴というか。前作『鎌倉殿の13人』でも、似たような要素はあった。退場間近になった人物が、ある側面ではいい人であるとか、人間的な魅力も有するということを改めて提示し、そこから殺されるのだ。
あれは本当につらかったが、効果的だったと思う。そしてここが肝心なんだけど、そういう描写も別に退場前ににいきなり見せつけられるわけではなく、ちゃんと過去に描かれていたし。
一方で本作。退場を惜しまれる、憐れに感じるキャラクターは、今のところそんなにいないような……。
本作の家康って妻子さえ存命なら天下獲り目指さなかったの?
まあ、詳しいことは来週放送回を観ないと分からないけど、この話では信長の襲撃を入念に準備している徳川方の動きが描かれている。本能寺の変については、いわゆる家康黒幕説なんてのがあるようで、そこからインスパイアされたのかもしれない。斬新。
服部党を効果的に使うなど、この辺りの描写はかなり入念だった。にしても女大鼠(演:松本まりか)は潜入任務中に絡んできた通行人をねじ伏せていたが、なんであんなに目立つ姿で目立つ動きをしているんだろう。もうちょっとこう、丁寧な作り込みもお願いできればうれしいかな。
「本能寺の変」は史実では光秀が信長の逗留する本能寺を襲撃するという一大事件。予告を見る限りでは本作では任を解かれてしまった光秀が、史実をなぞる形で反乱を起こすみたいだが、多分ここにもう一つ捻りがあるのだろう。そこら辺は来週のお楽しみ。
しかしどうしても気になったのは、羽柴秀吉(演:ムロツヨシ)が、信長に対してそろそろいなくなってくれないか、とぼやくシーンである。食えない男ではあるけれど、これまで別にそんな腹を見せてなかった秀吉がいきなりそんなことを口にするものだから「そういうセリフが出てもおかしくないシーンが過去にあれば」と思っちゃう。
それこそ殿を務めた金ヶ崎の戦いとか、ちゃんと描いていれば説得力もあるんだけど、がっつり省略されてたもんね。なんかこう、本作って掘り下げが足りないまま視聴者が予想もしないタイミングで、いきなり思いがけないセリフを口にするキャラがいるから、やっぱり馴染めないなぁ。
そして相変わらず視聴者が見たことのない回想シーンも流れるし、”大きな河”の流れがごちゃっとしてて気になる。今回のストーリーなんて、話の流れとしては本来わかりやすいはずなのになぁ。
あと、先週腹の内を見せなくなったと信長に褒められてた家康が、ちょっと妻子のことで煽られたらすぐ激昂しちゃったけど、そこもなんか「え、じゃあ仮に妻子を殺されてなければ信長に従ってたんか?」という感想しか浮かばないよ。人物造形が浅い。視聴者の皆さんはあのシーン、どう感じましたか?