来年2月に解散する「わーすた」、ラストツアーでも圧倒的な完成度 観られるうちに、観ておいたほうがいい
まずはエースの三品瑠香。この日も彼女は冴えていた。特に印象に残ったのは『スタンドアロン・コンプレックス』というミドルテンポのバラードだ。
ゆったりと歌い上げる系の曲なので、歌い手に解釈の余地が生まれる。三品の場合は、リズムの取り方も、しゃくり上げ方も、ロック的で泥臭い。前回の記事で「アイドル界のスティーヴン・タイラー」と書いたが、三品がバラードを歌うとアイドルの曲なのに『ミス・ア・シング』のような壮大さを感じる。
今回の公演では、アップテンポのエレクトロポップ『アンバランス・アンサーズ』で、ラストのがなりからロングトーンにつなぐ流れも聴けた。これを生で聴けたのはよかった。
MCも面白かった。彼女のイメージカラーはピンクなのだが、ペンライトを掲げるファンに対して「見えてるし大丈夫だから。薄い色も、ピンクか紫かどっちか分からないけど両方見るようにするわ」とステージから語りかけた上で「緑と青は見ない」とキッパリ。緑は廣川、青は小玉のイメージカラーである。他のメンバーのファンに対して、まさかの塩対応宣言だ。しかも、その後もフォローはなし。
ハロプロのお行儀のいいMCに慣れている自分は、わーすたのこうしたラフなMCを聞くたび、「そんな言い方して大丈夫なのか!?」と今でも少しハラハラするのだが、会場は大ウケだった。こんな軽口を叩けるのも、ファンとの長年の信頼関係の証なのだろう。

※終演後、会場で勢い余って購入した三品瑠香のぬいぐるみ(3500円)。最初は値段に躊躇したが、瞳部分の刺繍に5色も使われていたり、衣装のディテールまで再現されていたりと、これで3500円ならむしろ安いと感じた。ちなみに三品は、今年3月に第1弾が発売された際、『わーすたのにゃんだふるラジオ!』で、自身がぬいぐるみになることを「魂の分割というか、いざ人の手に渡ると思うと怖くなるね」と語り、捨てたくなった場合は「袋に詰めて塩かけて捨ててね」と呼びかけていた。食卓塩でもいいそうだ。今のところ、塩の出番はない。
廣川奈々聖はブレない
リーダーの廣川奈々聖は、言うなれば王道的なエリートアイドルだ。ダンスも歌もメンバーの中で最も正統派で、他のグループのセンターにいたとしても馴染みそうだ。このスタイルはデビュー時から一貫している。
私は前回の記事で、2024年にリリイベを観て本格的にわーすたにハマったと書いたが、実は2020年ごろにも少しだけ動画を観たことがある。『PLATONIC GIRL』のスタジオライブバージョンだ。当時の印象は「メインボーカルが2人いるけど、黒髪ぱっつんの子が可愛くて結構上手い、もう片方はなんかエキセントリックだな」というものだった。前者が廣川で、もう一人が三品だ。
そのときはそこから深追いすることはなかったが、わーすたの現場に通うようになった今も廣川の印象は変わらない。現在の三品が歌もダンスもさらに男性的でかっこいいスタイルなので、その対比がやっぱり面白い。
廣川は芯が強い人だと思う。わーすたは、ファンに対して熱いメッセージを頻繁に発信するようなグループではない。廣川も、周囲を強く引っ張っていくタイプのリーダーではない。それでも、彼女のアイドルとしての軸がブレないからこそ、わーすたは10年以上続いたのだと私は思っている。
MCで、「売り切れたので、最近は外のイベントに出たときも告知をすることなしにここまで来ることができました」と話していて、この日のソールドアウトを心から喜んでいる様子が印象的だった。
そして公演の最後には、「(今回披露した)楽曲たちはまだまだ一部に過ぎないんですけど、それでも私たちの人生を一緒に生きてきた、わーすた人生を生きてきた楽曲たちなので、みんなも私たちの人生の一部を見ててもらえてたらいいなと思うし、今日がみんなにとっていい東京公演、一日になっていたらいいなと思います」と語っていた。
松田美里は解散発表後、さらに可愛くなった
松田美里は、この日はツインテールだった。改めて見て、すごく可愛い人だなと思った。アイドルの感想で「可愛い」というのは陳腐すぎるのだが、松田に関しては解散を発表してから特に磨きがかかっているように見えた。
私が長年見てきたハロプロでは、卒業発表後に肩の力が抜けるのか、そこから一段ときれいになるメンバーがよくいるのだが、松田にも同じ現象が起きているような気がする。リラックスして、いい表情をしていることが増えたようにも感じる。
ダンスはいつも通り、指先まできれいだ。そして松田は、実は歌も上手い。わーすたはメインボーカルの三品と廣川の印象が強く、楽曲もトリッキーなものが多いため、松田の歌が前面に出る場面はそれほど多くない。それでもソロパートはいつも安定していて、声にもきちんと表情がある。他のアイドルグループだったら普通に歌唱メンだと思う。
YouTubeには、いきものがかりやaiko、大塚愛の楽曲を松田が一人で歌ったカバー動画もある。こうしたメロディーを素直に聴かせるJ-POPでは、松田の持ち味がよく分かる。何より、声がいい。可愛くて、愛おしい。
本人も歌うことが好きなようだ。最近はソロでアコースティックライブも行っていて、11月にも開催を予定している。10月30日には、松田の個人チャンネルで前回のアコースティックライブの動画も公開していた。
今回のライブで披露された三品と松田のユニット曲『きゅんビート』は、8月の松田のバースデーライブでもセットリストに入っていた。この日も、テクニカルにバキバキ歌う三品と、素直な発声の松田という組み合わせが良かった。
小玉梨々華は確信犯なのか
そして小玉梨々華。MCではセミファイナル公演と蝉をかけて、「私は蝉はNGなんですけど、みなさんはセミファイナルは好きですか?」などと、終始意味のわからないことを言って会場を沸かせていた。
彼女は言うなれば「様子のおかしい美人」キャラだ。そして、いつもファンの期待を裏切らない。たとえば、小玉のバースデーイベントでは、本人が手掛けるカオスな映像のお披露目が恒例になっている。
※2024年のバースデーイベントで披露されたカオスな映像(15分21秒ごろから)
このライブの2日後に行われた今年のバースデーイベントでも、いつもの映像のほか、ナンセンスなミニゲーム(歌割りを賭けて、明らかに小玉が有利な条件でメンバーと対戦する)をやったり、ヘタウマすぎる自作イラストを会場に展示したりしていた。他のメンバーのファンでも十分楽しめる内容だった。
さらにその2日後の個人配信では、イベントの衣装から映像、演出、企画まで、すべて自分で考えていることを明かしていた。自らを「準備の鬼」と呼び、「流れと意味」を考えて構成を組み立てているのだという。変な話、セルフプロデュース力はメンバーの中で一番あるんじゃないかとも思う。
それでも正直に言うと、今でも小玉のことは掴みきれないでいる。ビジュアルに関しては、大人になってからはファッション誌のモデルのような雰囲気が強く、可愛いというより美人すぎて、あまりアイドルっぽくない。しかも、普段のライブでは変なことしか言わない。なのに、ステージではわーすたの難しいダンスをさらっとこなし、裏ではイベントを緻密に作り込んでいる。だからいつも最終的に「梨々華ちゃんは意味不明だけどすごい」という身も蓋もない感想になる。
一方で、外仕事でバラエティ番組などに出ると、メンバーの中でも小玉が結構上手く立ち回っていることもある。最近は、確信犯なんじゃないかと思い始めている。
わーすたはいつ観ても最高
改めて書くと、わーすたは上手い。ただ、“一糸乱れぬパフォーマンス”のような精密さを突き詰めるタイプではない。歌にもダンスにも余白や遊びがあり、その中で一人ひとりが自由に表現している。だからこそ、各人のクセや持ち味が見えてくる。ロックバンドでいえば、第二期ディープ・パープルみたいな面白さがある。
ビジュアルにも華がある。高身長メンバーが多いので、4人が立っているだけでかっこいい。楽曲もクオリティが高い。喋りも面白い。つまり、いつ観ても最高なのだ。
最近、一部のファンから「わーすたは解散するのやめたほうがいい」なんて声も出ていた。それは、「解散しないでほしい」という願いでもある。メンバーの決断に水を差したくないから大っぴらに言わないだけで、同じような思いを抱えているファンは少なくないのかもしれない。
それでも時間は過ぎていく。今できるのは、残りの活動を楽しみながら見届けることだけだ。そして、まだ観たことのない人に、その面白さを伝えることくらいだろう。
ちなみに私は「推し活」という言葉が好きではない。企業のマーケティングの匂いが強いし、手垢が付きすぎている。そもそも、すでに輝いているアイドルを自分が「推す」というのはおこがましいと思うからだ。だから、ほかのグループのファンにもわーすたを「推してほしい」とは思わない。ただ、観たら結構楽しいかもよ、とは伝えたい。
先日、昨年8月の生バンドライブでの『KIRA KIRA ホログラム』の映像が公式YouTubeで公開された。わーすたを観たことがない人は、まずはここから観てみてほしい。
これから年末にかけて各種イベントへの出演も多く予定されている。11月にはわーすた主催のアイドルフェス「にゃんぽこらフェス! Vol.3」(これもすごいネーミングだ)もある。そして、来年2月14日には有明のSGC HALL ARIAKEでラストライブが控えている。現場で観られるうちに、観ておいたほうがいい。
断言!「わーすた」は現代アイドル界の最高到達点 スキルを誇示しない圧倒的な余裕と上質すぎるステージング


