「タラレバ娘」に見るアラサー女子の呪縛 「結婚しなければ幸せになれない」という強い思い込みに苦しめられ
作中でも、主人公たちが哀しい目にあうこんな場面に却ってスカッとしたくらいです。大衆酒場で酔っぱらい、道路でこけて倒れ込んだ3人に、若きイケメン・KEYが言い放ちます。
「酔って転んで男に抱えて貰うのは25歳までだろ」
「30代は自分で立ち上がれ」
「もう女の子じゃないんだよ?おたくら」
女も30歳過ぎたらいいかげん自立しろ、という意味にも響く厳しいセリフ。ごもっともとしか言いようがありません。これは、実は作者からのツッコミだったのです。
作者の東村さんは、一児の母。一度の離婚を経て再婚していますが、1巻のあとがきに、自分の女としての生き方に対する考えをはっきり書いています。
「別に私は『女は結婚しなきゃダメ』とか『女の幸せは男で決まる』とか『結婚できない女はかわいそう』なんて全く思っていません」
「できれば自分も結婚なんかせず、バリバリ仕事しながら何にも縛られず楽しく華やかに自由に独身貴族を謳歌して生きていきたかったと思ってるほうです」
「幸せ」というのは、結婚なんかで得るものではなく 自分自身の問題というか、結婚していても不幸せな人だっていっぱいいるし!!と説きます。つまり、タラレバ娘たちとは全然違う考えなのです。
東京オリンピックを控え、孤独に恐怖するアラサーたち
しかし、オリンピックが東京で開催すると決定した年、東村さんのアラサー飲み友達たちが、急に「いいかげん結婚したい!」と口々に言いだしました。推定15人。
オリンピックが開催されるとき、自分が40歳を超え、何をしているか想像してしまったアラサーたち。世紀の祭典に盛り上がる大都会で、1人ぼっちで過ごすことを考えてぞっとしてしまったのでしょう。この辺コミックの主人公たちと同じです。
いくら東村さんが、結婚しなくてもいいんじゃない?と言っても「イヤ!結婚したい!子ども欲しい!」と譲らない彼女たち。「じゃあ早く彼氏作りなよ!君らもう若くないんやから!」とゲキをとばすものの、「だって!いい男がいないんだもん!!」と毎回堂々巡りです。彼女たちの姿ははたから見ると滑稽かもしれませんが、そんなくだりに飽きて、だったらそれをネタにひどいマンガを描いてやろうと思ったのがこの「東京タラレバ娘」ということになります。
アラサーが直面する困難・仕事へ挫折感などもリアルに描きつつ、常にどこかにツッコミを入れて笑えるように仕上げているのはさすが。ドラマの主演は吉高由里子さんだそうで、これから楽しみです。