安田顕主演『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は正直キツいけど最後まで観た人の”お守り”になり得る映画だった | キャリコネニュース
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安田顕主演『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は正直キツいけど最後まで観た人の”お守り”になり得る映画だった

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

「あんなこと言わなければよかった」「こう言えばよかった」――日々後悔することは沢山あるが、この手の後悔は比較的多いはず。

2月22日公開の映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は宮川サトシさんが描く、がんと闘病する母を亡くした実話をもとにしたエッセイ漫画が原作となっている。ただこの作品は、決して家族を亡くした人だけに向けられた映画ではない。

主人公・宮川サトシを演じるのは演劇ユニット「TEAM NACS」の安田顕さん。母・明子を倍賞美津子さん、サトシの恋人・真里を松下奈緒さんが演じる。監督・脚本は、樹木希林さんが出演し話題となった『日々是好日』を手がける大森立嗣さんだ。

「闘病がんばって」「早く治して」は励ましというより、自分の願い

同作は胃がんを患った母・明子さんの闘病生活と、サトシの幼少時代から母の死後を丁寧に描いている。サトシ自身、学生時代に白血病で闘病生活を送っていた。当時、「絶対大丈夫」「なんも心配いらない」と明るくパワフルに励ます母親に、サトシは救われる。

そんな母親が突然がん宣告される。今度はサトシが「俺がいるから大丈夫。お袋は必ず良くなる。大丈夫だよ」と声をかける番になる。しかし病気が進行する姿を、ただ見ることしかできないというのもつらいものだ。

当然、最もつらくて頑張っているのは闘病者本人だと分かってはいる。でも少しでも本人が弱音を吐くと、ふと「治す気あるの?」と言ってしまうこともある。言われた本人からしたら「私なりに頑張っているのに」と思うだろうし、言ってしまった側には後悔が残る。

「闘病がんばって」「早く治して」といった言葉は励ましでもあるが、周りの人間にとって「そうであってほしい」という願望でもある。どうにもならない現状へのいらだちから、つい一番がんばっている人間にそう言ってしまうのだ。

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

筆者が中学生の頃、祖母ががんを患った。母が中心となってサポートしていたが、祖母は自分ががんだという事実に気が滅入っていて、そんな祖母を看る母もぶつけようのない不安やいらだちがあった。

だからこそ宮川一家の様子が自分には堪えた。サトシの心無い言葉や、「母のガンを治す」ためのお百度参りなど斜め上に行く努力も正直、観るのがしんどかった。

『ぼくいこ』はさまざまな後悔を丁寧にすくい上げる作品

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

でも救いはある。今まで行き場のない苛立ちから、言いたくない言葉ばかり出てしまっていたけど、最後の最後にサトシから「本当に言いたかった言葉」が出たときに、自分ごとのように安堵した。その一方で、言えなかった側の人間としては羨ましく感じられた。

言ってしまった言葉は戻らないし、相手を傷つけた事実は戻らない。逆に「言いたかった言葉」も言わなければ伝わらないし、言えなかったことで一生後悔することもある。そんな後悔をしそうな一歩手前で、この映画を思い出すのではないかと思った。

この作品には病人との向き合い方も描かれている。母の死を受け入れられないまま介護をする息子、妻が死んで生きる気力を失う父、母の世話を十分に出来なかった兄……人それぞれに後悔はある。

それでも「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」という衝撃的なタイトルと反して、とても温かいストーリーで、そのさまざまな形の後悔を丁寧にすくい上げる作品だった。

いつか迎える家族の死の際、それだけでなく言葉で人を傷つけてしまいそうになる一歩手前、この映画をふと思い出すのではないだろうか。そしてそのとき、お守りみたいに支えになってくれる作品ではないだろうか。

映画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』は2月22日(金)から全国順次公開。

(C)宮川サトシ/新潮社 (C)2019「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」製作委員会

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