メビウス製薬の社員があえてリモートワークせずオフィスに出勤する理由 「正しく恐れて、正しく対処すべき」 | キャリコネニュース
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メビウス製薬の社員があえてリモートワークせずオフィスに出勤する理由 「正しく恐れて、正しく対処すべき」

「Mebius Value Book」(手前)と「Corporate Culture Standard」(画像はメビウス製薬提供。以下同じ)

「Mebius Value Book」(手前)と「Corporate Culture Standard」(画像はメビウス製薬提供。以下同じ)

「SIMIUS」(シミウス)ブランドの化粧品事業を展開するメビウス製薬。オリジナルの自社化粧品を開発し、通信販売で顧客に届けている。

本社は東京・赤坂。コロナ対応について尋ねたところ、「当社は通常勤務を続けています」と回答があった。どのような考えに基づいた決断だったのか。同社人事部副部長の丸山有子さんに聞いた。(キャリコネニュース編集部)

「抗体検査」と「PCR検査」を会社負担で実施

メビウス製薬は最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月、在宅でのリモートワークの採用を検討したという。しかし最終的には、感染拡大防止策を徹底したうえで、通常通りの出勤スタイルを続けることに決めた。

これは緊急事態宣言が再発令された現在も変わらない。丸山さんは、背景には経営者の考え方と判断があると説明する。

「当社社長の小野(浩之氏)は新型コロナウイルスについて、”正しく恐れて、正しく対処すべきだ”とよく言っています。重要なのは自己防衛であり、いわゆる三密を避けつつ、うがいや手洗い、消毒や検温をするという、すでに世の中に広まっている正しい対応方法を採れば、必要以上に恐れるべきではないと。もちろん、全従業員が日々気を緩めず、やるべきことを確実にしていくことが前提となります」

会社は安全配慮・健康管理の観点から、従業員をサポートをする体制を整えている。オフィスへの消毒液の設置や体温計の1人1台配付のほか、昨年秋以降はオフィスの出入口にAIのサーマルカメラを社員用と来客用に設置し、体調不良の人がその場で分かるようにしている。

さらに無症状の感染者を把握するため、会社負担での検査を定期的に実施している。

「正社員はもちろん派遣スタッフ、業務委託を含め、全従業員を対象に新型コロナの抗体検査を月1回、会社負担で実施しています。加えて、社外からの来訪者の応対をするスタッフや採用担当者(全従業員の約1割)はPCR検査を月に3回、これも会社負担で実施し、より重点的に罹患チェックをしています」

「コミュニケーションの質」に徹底したこだわり

オフィスの出入口にAIのサーマルカメラを設置

オフィスの出入口にAIのサーマルカメラを設置

幸いにもこれまで陽性の人は出ていないが、検査後に陽性と確認できた場合の対応についてもマニュアルを作成しており、第一号の感染者が出ればそれに則って対処する。

仮に従業員が感染したとしても早期に対応できる体制をとることは、出勤による感染リスクに対する社員の不安を払拭することにもなる。事前準備としてここまでやっている会社は、意外と少ないのではないだろうか。

しかし、そこまでの準備をしてまで出勤にこだわる理由は何なのか。丸山さんは、会社がフェイス・トゥ・フェイスで業務を進めることに力点を置いているから、と説明する。

「私たちはスピード感をもって事業を進めるベンチャー企業です。コミュニケーションの取りやすさに力点を起き、会社の強みとしてこだわりをもってやっていますので、それを阻害し、質が下がるおそれのある在宅スタイルは採っていないということです」

メビウス製薬は、製造をパートナー企業のOEMメーカーに、電話注文対応や発送を協力会社のコールセンターに委託している。自社では委託業務のディレクションや、商品やプロモーションの企画、顧客対応の二次対応などを行っている。

見方によっては「どうしても出社しなければできない仕事」ではなく、「頑張ってリモートにすればできなくもない仕事」かもしれない。それでも正しく恐れつつ事業を継続し、社員の雇用とお客様へのサービス品質を確保するのが、会社の選択ということだ。

社員が常に手元に置く「2つの冊子」

コミュニケーションにこだわりを持つメビウス製薬の社員は、2つの冊子を手元に置いて仕事をしている。1つ目の「Mebius Value Book」(バリューブック)は創業者の小野社長の考え方をまとめたもので、「理念編」「LIFE編」「WORK編」など33項目で構成されている。

2つ目は「Corporate Culture Standard」(CCS)だ。組織横断的に選ばれた社員が話し合い、バリューブックの内容を掘り下げる形で作成されたものだ。現在では半年に1回ほど内容を更新し、更新場所を周知するようになっている。

「CCSは、メンバーの人財の競争力を向上し、より良い文化を作るためのツールです。会社の理念から業務マニュアルのようなレベルまで幅広くまとめられています。業務で迷いが生じたときには、まずはCCSを見るようにしていますし、求職者の方にも事前に目を通していただき、同意の署名をもらってから入社してもらっています」

CCSの項目は100近くにのぼる。バリューブックを踏まえた「理念」の整理からはじまり、ビジネスモデルや成長戦略、市場規模やポジショニングなどが書かれた「事業」編、役職ごとの役割・責任や、コミュニケーションのあり方などが書かれた「組織」編と続く。

さらには、メールの書き方や接客の方針、SNSマナーなどが書かれた「ルール環境(WORK編)」や「同(生活編)」など細かなところまで規定し、KPIの推移などの「データ集」も備えている。理念集から就業規則や業務マニュアルまでを、一気通貫させたような内容だ。

「社内では”メビウスの歩き方”とも言われているのですが、例えば中途入社の人が社員に聞かなくても、備品はどこに取りにいって、ないときにはどうやって発注すればいいかが分かります。中には社内チャットで気をつけるルールまであります。
そこまで言語化しなくても、と思うかもしれませんが、メビウス製薬の社員がチームの価値観の一定の方向性に沿いながら、自分をどうさらに活躍させていくかを考えるうえで、CCSは有効に活用されていると感じています」

ルールや理念が浸透すると「カルチャー」になる

CSRの一環で医療従事者に自社の「シミウスジェル」を寄贈した

CSRの一環で医療従事者に自社の「シミウスジェル」を寄贈した

メビウス製薬では毎朝10分間の朝礼を行い、その日の担当がバリューブックとCCSを1ページずつ読むことになっている。例えば「WORK編」には、次のような一節がある。

「一人でできる仕事には限界があります。より良い仕事をしようと思ったら、一人ではできません。(略)協力者の力を最大限引き出すためには、相手を知る必要があります」

小さなルールであれ大きな理念であれ、繰り返し確認することでカルチャーを浸透させ、社員の一体感や安心感につながる。丸山さんは「社員が一同に介した朝礼がリモートではやりにくいことも、出勤継続につながっているといえるかもしれません」と認める。

また、採用を担当する丸山さんは、求職者にバリューブックやCCSの存在を説明し、内容を読んでもらっているという。

「CCSには採用基準が明記されているので、面接する人の好みで決まることはありません。また採用では求職者を評価、品定めして見極めるというよりも、会社との”マッチ度”を見ることが大事だと思っています。当社がどういう会社なのか、求職者もあらかじめ分かった方がいいですし、会社側から開示していくためにもバリューブックやCCSがあることは大事だと思います」

なお、バリューブックには社会貢献のあり方が書かれている。この方針に沿って昨年はコロナ禍の最前線で活躍する医療従事者に対し、東京都看護協会などを通じて現金の寄附とともに商品(シミウスジェル)の寄贈を行っている。

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