社員の当事者意識を高める「1on1」ミーティングにはコツがある:YOU THE OWNER岡野求さんに聞く「経営者マインドセット」の育て方(前編) | キャリコネニュース
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社員の当事者意識を高める「1on1」ミーティングにはコツがある:YOU THE OWNER岡野求さんに聞く「経営者マインドセット」の育て方(前編)

YOU THE OWNER岡野求さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

YOU THE OWNER岡野求さん(左)とグローバルウェイ取締役の根本勇矢

リモートワークで部下の働きぶりが把握できない、ウェブ会議でコミュニケーションを取ろうにも目の前にいないと議論しにくい、そもそもどんなやり方で面談を進めればいいのか分からない――。そんな悩みを抱えるマネージャーも少なくないだろう。

「自分の人生の経営者に」を掲げるYOU THE OWNER代表の岡野求氏は、「全員経営者マインドセット」というコンセプトを通じて、社員の当事者意識を高める「1on1」ミーティングを指導しているという。どのような方法なのか、グローバルウェイ取締役CHROの根本勇矢が聞いた。(構成:キャリコネニュース編集部)

「何のためするのか」明確にして臨むべき

組織の状態を可視化し組織戦略・人材育成戦略を立案するための「MSマトリクス」

組織の状態を可視化し組織戦略・人材育成戦略を立案するための「MSマトリクス」

――岡野さんは、元ガリバー(現IDOM)の取締役だった吉田行宏さんの下で、「全員経営者マインドセット」による企業コンサルティングをしているそうですが、どのようなコンセプトなのでしょうか。

文字どおり、経営者と同じ意識やスキルを持った人材を社内にできるだけ多く増やすことで、社員一人ひとりが自立して動ける組織を作り、会社の成長を促す手法です。

具体的には、思考様式や心構え、価値観といった「マインドセット」を軸に、さまざまな「スキル」を兼ね備えた人材を育成することで、組織力や戦略力を高め、ミッションやビジョン、中期目標を達成していきます。

経営者や優れた経営幹部は、高いマインドセットとスキルを持っています。一方、社員の中には、意識は高いがスキルはまだ高くないメンバーや、反対にスキルはあるがチーム行動や全体最適に課題がある層もいるでしょう。

そのような課題のある人材に働きかけて、高い当事者意識を持ち、かつ戦略志向やマネジメントスキルの高いリーダーに育ってもらうことは、会社の人材力や組織力を高めるうえで重要です。当社は、クライアントの課題を確認したうえで、さまざまな手法を組み合わせて「経営者マインドセット」を持つ社員を増やすメニューを提供しています。

――具体的には、どんな手法があるのでしょうか。

課題によって本当にさまざまなものがあるのですが、一例としてリモートワークで活用が増えた「1on1ミーティング」(以下1on1)の進め方について紹介してみましょう。

1on1は、人材育成などを目的に1対1で行う対話のことで、リモートワーク下において上司と部下の面談をそう呼んだりしているのですが、なかなかうまくいかず、やめてしまったという話も数多く聞きます。

失敗例を聞くと、単に部下から報告・連絡・相談をする場や、上司から目標の未達について詰める場として使ってきたようです。しかしこれでは、何のために何をするのかを明確化できておらず、やりやすさや効果がまったく上がらないと思います。

成果を上げるためには「マインドセット」も必要

成長とは「自身のアイスバーグ(氷山)を大きくすること」

成長とは「自身のアイスバーグ(氷山)を大きくすること」

――では、どのような点について気をつければいいのでしょうか。

それを説明する前に、「全員経営者マインドセット」で使う「MSマトリックス」についてお話しします。このマトリックスは、縦軸を「マインドセット」、横軸を「スキル」として、個々の社員がどのあたりに分布するのかを把握し、全体を、できるだけ右上に引き上げていこうとするものです。

縦軸の「マインドセット」には、当事者意識や覚悟、オーナーシップ、全体最適・ミッションフィット、バリュー体現といったものが、横軸の「スキル」には、戦略思考力、コンセプチュアルスキル、組織マネジメントスキル、テクニカルスキルといったものが入ります。

――なぜスキルだけでなく、マインドセットまで踏み込む必要があるのですか。

個人の「成果」を組織として上げていくには、それを生み出す力を注視する必要があります。私たちはこの隠れた部分の要素を「アイスバーグ(氷山)」で整理しています。

「成果」の下には「能力・スキル」、その下には「ふるまい・習慣・行動」や「意識・想い・人生哲学」といったものがあります。そして、成果の下の要素を整え、大きくしていかないと、成果も大きくならないと考えています。

――理屈は分かるのですが、個人の「ふるまい」や「想い」にまで、こうすべきだと会社が関与していくことはできるのでしょうか。

すべてを会社や社長の考えに揃えろ、ということではありません。氷山の下にはこのようなものが隠れており、それを変えることで個人が成長し、その結果、組織力につながっていくものだ、ということが理解できればいい。

逆にいうと、これらの要素が「悩みブレーキ」となって、社員の成長を阻害することが非常に多いのです。ですからスキルだけでなく、マインドセットも重要なのだ、という意味と捉えていただければと思います。

最初にやるべきなのは「信頼関係の構築」

1on1にも「育成ステップ戦略」が必要

1on1にも「育成ステップ戦略」が必要

――話を戻すと、「MSマトリックス」や「アイスバーグ」と「1on1ミーティング」には、どういう関係があるのでしょうか。

1on1で何を話すのか、1on1によって上司が部下の何をどう高めていくのかについて、MSマトリックスの要素を使って整理してみましょう。まず多くの職場では、1on1で仕事やスキルの話、つまり「戦略・事業・業務系」の話をする場合がほとんどだと思います。

しかし、これまで話してきたように、業務の話だけをしても成果は大きくならない。そこで、当事者意識やオーナーシップ、全体最適などの意識を高めていく「マインドセット向上系」の話を入れていく必要があります。

――この2つの要素の比重を、社員の課題に合わせて変えていき、マインドセットも欠かさず高める必要があるということですね。

ええ。ただし、それだけでは足りません。コミュニケーションのベースとなる「信頼関係構築系」の話も重要で、これをおろそかにする上司は、1on1がうまくいかなくなることが多いのです。実は見逃されがちですが、何よりも先にやらなければならないのは、信頼関係を構築することです。

例えば縦軸に「マインドセット」、横軸に「信頼関係」を置いたマトリックスを考えると、それぞれの象限の人とは、話の内容を変えなければなりません。例えば左下の新入社員の人たちと、いきなり高度な業務の話をしても伝わらないですよね。

信頼関係が低くてマインドセットも低い相手とは、その人のプライベートを知ったり、こちらも自己開示をして知ってもらったり、ときには相手を褒めてあげたりして(笑)、まずは人間同士の基本的な信頼関係構築に時間を割きます。信頼関係ができてきて「この上司は自分の話をちゃんと聞いてくれる、自分の強みをちゃんと認めてくれる」と部下が心を開くようになってから、マインドセットの話題も少し入れた話をしていきます。

信頼関係が十分構築できた人には、多少痛いところを突いて、厳しいダメ出しをしても理解してもらえます。「これだけちゃんと自分のことを理解してくれる人が、敢えて耳の痛いことを言ってくれているんだから、ちゃんと受け取らなきゃ」という感じですね。しかし信頼関係ができていないのに、いきなりダメ出ししても、そういう人の話には耳を傾けたくない、となってしまいます。

マインドセットが上がればダメ出しも受け入れられる

――確かに上司側としては「ダメ出しをすることがマネジメントの役割」と考えて、嫌でもやらなきゃならないと思い込んでしまうんですよね。

わかります。でも、第1ステップでは「人間関係」、それができたら「マインドセット」をしっかり上げると。人間関係ができた後であれば、的を射たアドバイスに対して「この人は一緒に結果を出したいから甘やかさないんだな」という関係が成立します。

――確かに「マネージャーはきついから嫌だ」という人も、そういう関係を先に作ってからだと負担が減ると教えてあげるといいかもしれません。しかし、それでもマネージャーはやりたくないという人は、どうしたらいいんでしょうか。

それは別に構わないのではないでしょうか。マネジメントではなくスペシャリティ(専門性)で貢献してもらう道もあると思います。

ただし、マネジメントはチームを動かしてパフォーマンスを発揮するのに対して、スペシャリティーは基本的に自分一人でパフォーマンスを発揮する必要があります。一般的には他者を動かして成果をレバレッジする方が大きな成果を出しやすいです。いずれにせよ、給与に見合った成果を出すことが問われることになるでしょう。【後編はこちら

岡野求(おかの・もとむ):株式会社 YOU THE OWNER 代表取締役。早稲田大学理工学部卒業後、新卒で旧ガリバーインターナショナル(現IDOM)の関連ベンチャー、および本体の中古車販売を経験。その後、テラモーターズの創業メンバー、FiNCの取締役CHOを歴任し、LIFE PEPPER執行役員を経て現職。

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