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日本の製造業が「サブスクビジネス」に注目する理由 Zuoraのエバンジェリストに聞いた

Zuora Japan株式会社でプリセールスを担当するサブスクリプション エバンジェリストの谷内輝男さん

Zuora Japan株式会社でプリセールスを担当するサブスクリプション エバンジェリストの谷内輝男さん

消費者行動が”所有から利用へ”と変化する中、注目が集まる「サブスクリプション・ビジネス」。エンタメやメディアだけでなく、最近はメーカーがサブスクを取り入れる「製造業のサービス化」の例も増えている。

今後あらゆる業界に広がるといわれるサブスクだが、そもそもどういうモデルなのか。最先端のビジネスについて、サブスク向けSaaSプラットフォームを提供するZuora(ズオラ)Japanのサブスクリプションエバンジェリスト、谷内輝男さんに話を聞いた。

サブスクとは「顧客に価値を提供し続けること」

「全ての業界でサブスクリプション化が加速している」といっても過言ではない(Zuora提供。以下同じ)

「全ての業界でサブスクリプション化が加速している」といっても過言ではない(Zuora提供。以下同じ)

――Zuoraはサブスクビジネス支援のグローバルトップ企業ですが、日ごろ「サブスク」をどのように説明されていますか。

お金を払う側から見ると「繰り返し一定額を課金し続ける」という意味です。例えば日本でも有名なサブスク動画サービスNetflixは、ビデオレンタルのように1本あたりの価格を設けず、月額で定額見放題です。画質や同時視聴機器数によっていくつかののプランがあり、いつでも自由にプランの変更や解約ができます。

これを企業側から見ると、サービス内容や課金形態の選択肢を用意し、柔軟に対応しながら、お客様にとっての価値を継続的に提供し続ける「定期収益ビジネス」になります。サブスクビジネスのポイントは、繰り返し課金を前提としたサービスのパッケージングとプライシングであり、継続的な取引を通じてお客様を理解することですが、これを実現するのが当社のプラットフォームとなります。

――音楽や映画、ニュースなど、BtoCのエンタメやメディアの印象が強いサブスクですが、BtoBの領域にも展開可能でしょうか。

当社のZuoraもそうですが、いわゆるSaaS(Software as a Service)サービスは基本的にサブスクビジネスです。典型的な例はAdobeの「Creative Cloud」で、以前は利用者がPhotoshopやIllustrator、Premier Proといったソフトウェアを購入していたものを、現在ではサブスクリプションの契約で使えるようにしています。これによって法人契約を含む売上が大きく伸び、収益性も高まっています。

また、海外ではかなり進んでいますが、サブスクビジネスに移行する製造業の会社が増えていて、日本の有名メーカーでも成功例が出ています。分かりやすい例では、デジタル複合機メーカーのリコーさんが、当社のプラットフォームを利用して、複合機の売り切りモデルから、クラウドサービスと連携するサブスクビジネスへの転換に成功しています。

「販売管理システム」をサブスクビジネス向けに拡張

普通の会計システムではサブスクビジネスを収益化していくことは難しい

普通の会計システムではサブスクビジネスを収益化していくことは難しい

――「製造業のサブスク化」とは一種のサービス化ということになると思いますが、リコーでは具体的にどのようにビジネスを変えたのですか。

リコーさんの場合、デジタル複合機に各種クラウドサービスを連携させた「サブスクリプションのビジネスモデル」を構築しています。これにより、例えば複合機でスキャンした書類をOCRでデータ化し、RPAクラウド(自動化ツール)で請求書発行につなげることで、スタッフの作業時間を10分の1に短縮する、といったことが可能になります。

ただし、モノの売り切りビジネスは請求や回収は一回限りなので単純ですが、サブスクビジネスへの移行によってかなり複雑になります。例えば、購入量によって価格を変える従量課金やボリューム課金、ティア課金、アップグレードやダウングレードといった要素が新たに加わるからです。

――顧客に合った柔軟なサービスと課金の体系を作ろうとすると、従来の販売管理システムでは追いつかなくなるということですか。

そういうことです。従来の販売管理システムでは「繰り返し課金する契約」を管理できないため、顧客へ提供できる課金パターンが限定されます。

これを解決するため、Zuoraのシステムはフリートライアルを含む50以上の課金モデルをサポートし、さまざまなサービスや価格体系に対応できる「Zuora Billing」を中心に、見積から契約管理、請求、入金・回収管理、会計締め処理、レポートといった一連のプロセスをカバーすることで、サブスクビジネスを支えています。

特にグローバルに事業を展開するリコーさんの場合、多くの通貨をサポートすることが必要ですが、米国発の当社サービスにおいては、世界26カ国の1,000を超える顧客と取引し、180以上の通貨をサポートしていますので、その点は問題なく対応できています。

サブスクで企業は「将来を見通せるようになる」

サブスクビジネスは「年間定期収益」をベースに考えることができる

サブスクビジネスは「年間定期収益」をベースに考えることができる

――サービスと料金の選択肢が増え、支払額も平準化されるので、利用者としては嬉しい限りですが、サブスク化は会社側にもメリットがあるのでしょうか。

ひとことで言うと「将来を見通せるようになる」メリットが大きいです。サブスクは基本的に継続課金ですので、お客様がサービスを継続して利用し、不満足などを理由とした解約が起こらない限り、将来にわたって契約が持続するからです。

例えばサブスクでは、今年の売上高が10億円、仮に平均的なチャーンレート(解約率)が10%とすると、来年は9億円の売上高を見込めます。来年も10億円を維持するためには、売り切り型のプロダクト販売モデルだと改めて10億円分の販売活動が必要ですが、サブスクなら1億円分の上乗せでよいことになります。

それも新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客へのアップセル(追加販売)で実現できる部分もあります。また、サービスの機能改善やベストプラクティスの提供といった価値を継続的に提供することで、顧客との関係性が深まり、解約率の抑止にもつながります。

顧客と関係性が深まれば、さまざまな機能改善の要望を聴き取ることができます。実際、Zuoraの機能説明の段階で、お客様から「こんなことはできますか?」と質問を受けますが、ほぼすべてのことが対応可能な状態になっています。これは当社が1,000を超えるお客様との取引の中で、さまざまなご要望をいただき、それに応えてきたからといえます。

――ちなみに、サブスクビジネスにおけるプリセールスとは、どういう仕事になるのですか。

当社を例に取ると、営業に同行して技術的な専門性に基づく提案やアドバイスを行うところまでは、一般的なプリセールスと同じです。ただしZuoraの場合は、実務担当者との打ち合わせだけにとどまらず、経営層へのプレゼンの機会が圧倒的に多くなるところが異なります。

なぜかというと、サブスクシステムの導入とは、新しいビジネスモデルへの変革にほかならないからです。確実な運用につなげるためにも、部門の担当者だけでなく、経営方針の決定を行う層に理解してもらい、会社の組織体制を変えていく必要があります。

「世界のベストプラクティス」に触れられる外資系企業

サブスクビジネスを採用した会社の成長率は高い

サブスクビジネスを採用した会社の成長率は高い

――ところで谷内さん自身は、どのようなキャリアでいまの仕事に就いたのですか。

新卒で日本の企業の開発部門に入ってプログラミングをしていましたが、もう少し広がりのある仕事がしたくなって、外資系の大手SaaSのプリセールスの仕事に転職しました。外資系は4社目で、Zuoraは最も規模の小さな会社なのですが、他の会社とはだいぶ違います。

それは、経営者向けのプレゼンが増えたことのほかに、サブスク業界が成長のまっただ中であることもあり、常に新しい変化が起きている職場だという点です。新しいものに触れることが好きな私としては、自分に合った仕事だなと感じています。

もう一つこれまでの会社と違う点として、創業者兼CEOのティエン・ツォがダイバーシティにとても敏感という点です。社内にはさまざまなポジションを通じて、性別年齢問わず幅広い人種のスタッフがおり、敷居の高さを感じることなく世界中の同僚から知恵をもらうことができます。現在は完全リモートワークで、成果を上げていれば柔軟な働き方ができますし、プライベートを大事にしながら働ける環境にあります。

――今後のサブスクビジネスの将来性を、どのように見ていますか。

2012年1月を起点とした売上指標は、2020年末に米国の小売業全体で130%、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)500企業でも132%にとどまっています。これがサブスクリプション・ビジネスを導入済の会社だと、437%にまで大きく成長しています。

サブスクビジネスは、コロナ禍でも成長を続けているところが多く、当社の取引先を対象とした調査では、全体の約75%にあたる取引先で「コロナ禍でも成長が加速している、もしくは影響は限定的」と回答しています。

最近では、これまでサブスクビジネスに取り組んで来なかった業界からの引き合いも多くあります。今後サブスクビジネスが拡大することがあっても、決してなくなることはないですし、個人的には向こう10年くらいは確実に成長を続けていくと見ていますし、当面のエンプロイアビリティを高めていけると感じています。

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