おしゃれだけど昔ながらの飲み屋も多い街、三軒茶屋。東急田園都市線と世田谷線が通り、住みたい街ランキングにも上位に位置する街だが、他の街にはない特殊なマウント事情があるという。
鉄道事情にも詳しい恋愛コンサルタントの鈴木リュウ氏は三軒茶屋に集う人々について「渋谷へは急行電車で5分程度なので、渋谷で遊んだり買い物をしたりすることの多い人が住んでいます」と話す。
「その一方、三軒茶屋はおいしい居酒屋が多く、渋谷からほぼ同距離にある代官山・中目黒、代々木上原より家賃が安いため『コスパがよい』『暮らしやすい』と言われることが多いです」
小さなバーで「どこ住んでる?何年くらい?」とマウントをとる40代男性
そのため、「渋谷好きだけど、渋谷まで出なくても気軽に飲みたい」「毎日フルのおしゃれをするのはきつい」「近所でジム、病院、飲み、デートを済ませたい」「UberEatsで美味しいものを食べたい」といった、自分が住む街ですべてをカバーしたい人におすすめだという。
三軒茶屋住民の特徴をさらに掘り下げていく。鈴木氏は「ひとり暮らしなら20~40代までまんべんなく。高齢者も多く住んでいます」と話す。
「比較的年収の低いアパレル系から渋谷に本社のある大手IT企業社員も多いです。社内で三茶に住む人だけを集めた『三茶会』と名乗るグループをつくっているケースも多い。つまり街への愛着心や帰属意識が高い」
この”帰属意識の高さ”に三軒茶屋のマウント事情に通じるという。
「そもそも三茶民は中目黒や代官山、代々木上原に対して『コスパが悪い』『物価が高すぎて生活ができない』『オシャレ過ぎて合わない』と思っている人も多く、これらの街を勝手にライバル視している人も。逆に桜新町や駒沢など神奈川寄りの人に対しては『三茶に住みたかったけど家賃が高いせいで妥協して住んでいるんだろう』と邪推しがちです」
また一駅渋谷寄りの池尻大橋に住んでいる人には「お店少ないよね?なんで三茶にしないの?」と迫る人もおり、周辺地域に住んでいる人に”三茶に住むことが正解”という価値観プレゼンをしがちのようだ。
「おいしい飲食店の話題になると『それ三茶にあるよ』『似た店が三茶にあるよ』と三茶の話に持っていきがちです。さらに三茶に長く住んでいるほど威張れるという自意識をもっている人が多いので7~10席程度のバーでは『どこ住んでる?何年くらい?』という住んでいる長さマウンティングをとる、主に40代男性が多いです」
引っ越しもあくまで三軒茶屋内で
住む場所を具体的に特定したがる人が多いのも特徴だ。例えば、通常なら「どこ住んでるの?」「三茶です」「俺も!どのへん?」「下北のほう」「ってことは茶沢通り?」「そうです、よく知ってますね」で終了する。
「でも、三茶民はそこから『茶沢、どこまで行く?サミットまで?』『そこまでは……郵便局らへんです』『じゃあ太子堂だ。俺、そのへん前住んでたよ。今は昭和女子大のすぐ裏らへん』『じゃあ逆ですね』と詳細を聞きがちです」
さらに引っ越すときは三軒茶屋内にすることも。理由は、「長く住めば住むほどマウントを取れる街なので、わざわざ引っ越して離れる理由がないです。引っ越した先ではこんなマウントを取ることも出来ません」とのことだ。
長く同じ場所に住んでいると、三茶で「地元」型コミュニティの友人ができるケースも多く、せんべろ居酒屋好きも多い。行きつけの店ができればそこで交流することも増えるだろう。
結果的に自意識の強い人が三軒茶屋に住み続ける傾向がある。そうなると関係性が地元型で閉鎖的になり”マウントおじさん”を生むことにつながっているようだ。