4種類の定義は、次の通りだ。
アイスクリーム 乳固形分:15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上
アイスミルク 乳固形分:10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上
ラクトアイス 乳固形分:3.0%以上
氷菓 上記以外
(厚労省・乳及び乳製品の成分規格等に関する省令より)
まず、「乳」を原料とするアイスクリーム類と、それ以外の氷菓(シャーベットなど)の2つに分かれる。
そして、アイスクリーム類は、その乳固形分・乳脂肪分の「濃さ」で、アイスクリーム・アイスミルク・ラクトアイスの3段階に分類されている。
有名な製品名でいうと、
アイスクリームは「ハーゲンダッツ バニラ」や「ピノ」など
アイスミルクは「雪見だいふく」や「チョコモナカジャンボ」など
ラクトアイスは「エッセルスーパーカップ 超バニラ」や「爽」「クーリッシュ」など
氷菓は「ガリガリ君ソーダ」や「あずきバー」など
「アイスクリーム」と比べると、「ラクトアイス」は乳脂肪分が含まれなくてもOK。高価なクリームの代わりに、比較的安価な植物性脂肪を使うことも多い。そのため、あっさりした味わいになるのが特徴だ。店でパッケージと値段を見比べてみるとわかるが、「アイスクリーム」に比べて「ラクトアイス」はだいぶ安価となる傾向がある。
この分類の利点は、これを見れば「味の濃さ」が大まかに把握できる点だ。ようは、アッサリ気分なら「ラクトアイス」、こってり気分なら「アイスクリーム」、その中間ならアイスミルクを選べばいいのだ。
昔はもっと大雑把だった。
ところで、アイスが現在の分類方法になったのは1971年で、それまでは次の2つしかなかったそうだ。
冷凍乳菓 乳脂肪分:3.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上
氷菓子 乳脂肪分:3.0%未満
なぜ、アイスクリーム類を細かく分けたのか? 業界団体の「日本アイスクリーム協会」に取材してみたところ、こんな回答がもらえた。
「(1971年より前の分類では)さまざまな製品に『アイスクリーム』という言葉が用いられ、品質への疑念・懐疑があったと聞いています。そのころの諸外国は乳脂肪分8%以上を『アイスクリーム』とするのが一般的だったようで、食品衛生の向上と諸外国に比べて見劣りする規格であるとの声から、国際基準に準拠した現在の規格が省令として制定されたようです」(同協会)
ようは「日本のアイスクリームはやけにアッサリしてる」などと言われないよう、当時の国際基準に合わせた分類がなされたのだろう。
売上の違いは……。
さて、そもそも冷たいボウルの中で乳製品を攪拌して作る「アイスクリーム」は、17世紀頃にヨーロッパで誕生したとされる。19世紀になり酪農と冷凍技術が発達すると、安定した生産や保管が可能になったもの。
では、植物性脂肪を利用した「ラクトアイス」は、いつごろ誕生したのか。残念ながら誕生時期がハッキリわかっているわけではないようだが、アイスクリーム協会では、1900年代初めにはすでに植物性脂肪がアイスクリーム類に使われるようになったと考えているようだ。
「アイスクリームの原料としては、生乳・牛乳だけではなく、バターも古くから使われていました。一方、バター代替品であるマーガリンは19世紀末には製品化され、日本にも1887年に輸入され、1908年には国産化されています。このことから鑑みると、世界的には20世紀初頭に、そして日本においても、大正年代には乳脂肪分と組み合わせる形で、植物性脂肪の利用がなされていたのではないかと思われます」(同協会)
そうなると、ラクトアイスも既に100年以上の歴史があるということになる。
ちょっと贅沢なアイスクリームと、手に取りやすいラクトアイス。筆者は勝手に「既に主流はラクトアイス」と思いこんでいたのだが、同協会によるとそれは誤解らしい。
「現在でも乳脂肪分だけで作られ支持を得ている製品、植物性脂肪分を利用し支持を得ている製品の双方があります。一般的には植物性脂肪分(パーム油やヤシ油が一般的です)の方が乳脂肪分より安価であるため、普及品に利用される傾向が高いかと思います。ただ、オーバーラン(製品中の空気の含有量)が低くなれば使用原料(コスト)も増えますので、一概にはいえません」(同協会)
販売金額ベースでも、2021年度は「アイスクリーム」が1570億円、「ラクトアイス」が1698億円と、ほぼ互角の勝負をしているようだ(ちなみにアイスミルクは1131億円、氷菓は859億円だった)。一概にどれがいいとか悪いとかではなく、それぞれ魅力があるのだ。
確かに、言われてみれば、たまにはご褒美アイスが食べたいし、逆にあえてアッサリアイスがほしいときもある。さて、今日はどっちにしようかな……。