いきなりだけど、先日5ちゃんねるに「ちょっとまって、スロットって動体視力と目押し完璧に出来れば負けないのでは？」というスレッドが立っていた。スレ主は「ずっと7を揃わせればいいのでは？」、「すげぇ動体視力と目押し力があること前提なら可能なのでは？」と持論を展開している。

恐らくパチスロをやったことがない人なんだろう。可愛い発想である。実際にはパチスロは通常時と大当たり時で制御が違うので、通常時にボーナスフラグである7揃いなどを意図的に狙えるわけではない。

目押しができる人でも、ボーナスが揃わない状態ではいくら狙っても7がリールに3つ揃わないようになっている。その代わりテンパイまではさせることが可能なので、目押しの練習をすることはできる。

これはまあ、パチスロをする人にとっては当たり前の常識だ。でも、やらない人からすると「なんで毎回7を狙わないんだ？　7を3つ揃えれば大当たりなのに」と思っちゃうんだよね。これは普通の感想だろう。

昔々、僕がパチンコホール企業に入社して、横須賀の新店舗に社員として配属された時の話。そのホールにバイトで入った石井さんという男性は、最初の頃はパチスロに対して一切知識がない状態だった。そのため、前述のスレッドを立てた人物のように「毎回7を狙えばいいのに」と思い込んでいた。

そこで実際に営業時間外にパチスロ機を触らせて、通常時の制御とボーナスフラグ成立時の制御についての説明をすることに。

この説明でもって石井さんは認識を改めたんだけど、「ボーナスフラグ成立を左右するのが設定であって、その設定に加味して打ち手のヒキも大事だ」と社員さんに教えてもらった途端「じゃあパチスロなんて勝てないのが当たり前なのか」と落胆をしていた。目押し力さえあればめちゃくちゃ勝てると思っていたようだ。

もっともこの話は20年ほど前のことなので、実際には当時目押し能力さえあれば、今よりも相当簡単にパチスロで勝つことはできた時代ではある。石井さんは残念ながら目押し力は上達しなかったが、他のバイトの中にはビタ押しが得意なのでガメラとか花火とかを打ってバイト代以上の小遣いを得ている者はいた。

目押しができたらおトクだった時代は過去のものに

翻って現在では、目押しがバッチリな人でも、その恩恵を得ることは難しい時代である。
目押しミスがない遊技。いわゆる完全攻略を可能とする人であっても、昔ほど機械割を高めて打つことはできない。

機械割というのは全てのパチスロ遊技機が6段階の設定ごとに、どのぐらいのメダルが出るかの目安として表記している数字である。この数字は100％がプラマイゼロのラインとなる。

昔は最低設定でも完全攻略時には割が104％と、ミスなしで打てば微妙な勝ちで終わる台も結構あった。ボーナス中にはリプレイ外しという技術介入を使うことでボーナスゲーム自体を延命できたので、腕次第で獲得枚数そのものを増やすこともできたのである。

しかし今はそういう台はそう多くないし、あるにはあるが1回のボーナスで獲得できる枚数自体がかなり減ったので、まとまった勝ちを得るのも難しい。

そのうえ、そんな台で結果を出すにはほとんど毎日長時間打たなければならんわけで、冒頭で書いたように「働いた方がマシ」となっちゃうわけだ。今でも完全攻略時の割が100を超える機種もあるものの、そういう台を打っている人たちの人生の機械割はせいぜい80％ぐらいだろう。いくら目押しが上手くても出世もしなきゃ恋愛もできないし。

当該スレッドにも、今のパチスロで完全攻略を可能とする目押し力があってもさっぱり儲からないと主張する声がある。最後にこれを引用したい。

「上級者がディスクアップ2（103%）を7000G回すと630枚平均増える。中級者が新ハナビ（102%）をたまにミスしながら101.5%くらいで7000G回すと315枚平均増える。稀に等価交換があるが全国のほとんどの店は交換率ギャップで1割ほど削る。俺等がネットで知識を得て12時間くらい懸命に目押しして5000円平均くらい増える。遊びながら5000円貰えると考えるか時給416円と考えるか」

ね？　長時間拘束されて学生のバイト代程度しか貰えないのが基本となると、いかに現代のパチスロで本気の攻略をしても自分の人生において一切のメリットがないって分かるよね。