番組ではSNS上でパタハラを訴えた人たちを紹介した。4年前、二男の誕生を機に育休を取得した Aさん(36歳)は、1か月の育休取得後、上司から無視され続けた。一番ショックだったのが「お前、誰だよ」という言葉だという。Aさんは2年後に転職した。
育休を10か月取得し復帰したKさん(40代)は、「君がやってた仕事、ほかの人が頑張ってるから」と他部署へ異動に。「君のキャリアのため」と言われたが、業務内容が違いすぎて仕事が無く、やる気もなくなり退職。現在は違う会社で働いている。
育休自体を取れないケースもある。教育関係で働く入社3年目のTさん(当時27歳)は、第一子誕生の際に育休を申請したが 、「勤務年数が足りない」と受理してもらえなかった。 育児・介護休業法では、育児休業は入社1年以上で取ることが認められている。他の同僚は取れたことや、社内規定でも「1年以上」とされていたことを後から知ったTさんは激怒。Tさんの妻は、上司が仕事の調整をするのが面倒だったからだと考えている。
事例に対して加藤さんは、「ひとつの側面として、育休とハラスメントの問題が一緒になってます」として、
「ハラスメントがあることによって、(育休の)本質が見えなくなっちゃう。実際の育休というものはどういうもので、どういう形にして行ったらいいかという流れが見えなくなっちゃうんだよね」
と懸念を示した。確かに、「酷い目にあった」という多数の声によって、制度の改善・浸透よりも育休取得のデメリットばかり広がり、育休の取得そのものを委縮させてしまう恐れもある。どうしたら会社も個人も育休を利用しやすくなるかに、もっと意識を振り向けたほうがいいだろう。
「育休にはいろんな側面がある。取得が会社や個人、子どもや社会にどう影響するか検証しなきゃいけない」
ネット上では、パタハラ経験を明かす人のほか、パタハラをするのはマネジメントができない無能上司、会社側の責任、といった批判が上がっている。その一方、独身や子どものいない人に負担がかかる「逆パタハラ・逆マタハラ」を訴える人、運営側の苦労を訴える声も出ていた。
ブランクのフォローや戻る部署がなくなる問題に対して、折り合いを付けることは難しいが、こうした言い争いで終わってしまっては残念だ。加藤さんは、「なかなか難しい問題なんですけどね」として、
「実際、育休というのは大事だと思う。でも取れない場所もある、働きたいという欲求を無くさないようにしなくちゃいけない。いろんな側面があるから、ちゃんと育休を取って、どういう形になるんだ、会社にとって、個人にとって、子供にとって、社会にとってどうなんだということを、ちゃんと検証しなきゃいけない。そのためにはハラスメントをなくす、ということがまず第一のような気がしますね」
とまとめた。
そもそも育休は女性でも取りづらく、育休後にやりがいのない仕事に回される「マミートラック」問題はかねてよりある。厚生労働省が掲げる男性の育休取得率の目標は、2020年度までに13%だ。加藤さんが言うように、多くの人が育休を取り社会的な影響を検証するためには、ハラスメントで躓いているわけにはいかない。