「男は29歳までに子どもをつくるべき」で議論 年齢で「○○すべき」と言うと社会が住みづらくなる?
生涯未婚率が増え、30代後半や40代で第一子を持つ人も珍しくなくなった現在、20代で子どもを持つのが「夢」みたいなことになりつつあるのかもしれません。
6月18日に投稿された「男は29歳までに子どもをつくるべき、3つの理由」という記事に賛否両論が集まり、2日後には700以上はてなブックマークがつきました。投稿者は、元博報堂社員で現在「コンテクストデザイナー」として活動している高木新平さん。
高木さんは24歳で「20代のうちに子どもを持つべき」と気づき、26歳で長女を授かりました。周囲(都心部)のコミュニティの中では早いほうで、病院のパパママ講座では、自分以外は30代後半だったことに驚いたといいます。(文:篠原みつき)
「仕事のピークは33~38にくる」「40歳前後で新しい自由を獲得」
子育ての大変さを「人生から土日がなくなってしまうこと」と表現し、自分の自由な時間がとれなくなったことの辛さをまず挙げています。それでも、「僕は、仕事が忙しい男性こそ、20代のうちに子どもを持つべきだと思っている」という持論を披露しました。
1つ目の理由は「仕事の第一次ピークは、33~38歳にやってくる」です。要約すると、人生の勝負時になるような大きな仕事のピークは、周囲を見ていると大体33~38歳くらいなので、子育てが大変かつ重要な3歳までの時期がそこに重ならないようにしたほうがいい、としています。
2つ目は、「20代の遊びなんて大体同じ。40になればもっと面白い遊びができる」。男が子どもをつくろうとしない大体の理由は「自由を謳歌したい」だが、具体的には友達と際限なく飲んだりしているだけ。それなら、先に子育てしてしまい、まだまだ現役の40歳前後で新しい自由を獲得している方がよくないか。
3つ目は、「父親ではなく、我が子の年齢でコミュニティが形成される」。父親本人の年齢に関係なく、子どもの年齢で付き合うため、10歳くらい年上のパパ友ができる。仕事を含めてなんでも相談できて非常に有益、という自らの経験にそった説明です。
「自分もほぼ同じ年齢で育児したので同意」という声も
筆者は34歳で子どもを授かったため、内容的にほぼ同感でした。20代は20代で仕事が大変かも知れませんが、やはり若くて体力、気力的にも余裕があるときに子どもを作っておくメリットはたくさんあります。
しかし、寄せられた多くのコメントは賛否両論で分かれています。「悪気ないかもしれないけど、傷ついてる人いっぱいいるよ」を始め、不快感を表すコメントも数多く見られました。
「個人的な体験とか信条を『××歳で○○するべき』と敷衍(ふえん)する人たちが社会を住みづらくすると思ってる」
一方で、「自分もほぼ同じ年齢で育児したので同意。メリットたくさん」という賛同も。
「自分が30代で子供ができ、体力的にもかなり苦労した経験から思うに、圧倒的に正しい」
また、批判を諭すような冷静なコメントも目立ちます。筆者が同感だったのは、「この内容で傷つく人に配慮しろとか言われたら、何も率直なこと書けなくね」という、こんな意見です。
「『20代までにみるべき映画』『10代で読みたい小説』とかと同じで、自分が当てはまらないなら受け流せばいいだけでは」
この記事は、基本的に20代の時点で家庭を持つことができるだけの安定した収入があり、「子どもは欲しいけどまだ遊びたい・仕事に集中したい」という男性に向けて書かれたものと思われます。あくまで一部の層を対象にした提案です。
しかし、不快表明の多さは、それがしたくても出来ない人の多さでもあるような気がして辛いです。サラリーマンの平均年収も1990年代後半から大きく減りました。非正規雇用で働く人の割合も一向に減る気配がありません。結婚を作って子どもを持つ、ということのハードルがそれだけ上がっている、ということなのでしょう。
ただ、個人的には、男性も自分のライフステージに「子育て」を組み込んでものを考え出したという点が画期的といいますか、時代が変わったような気がして感慨深い記事でもありました。