慶應義塾大学三田キャンパスにある学食「山食」が新型コロナウイルスの影響で資金難になっていることがわかった。クラウドファンディングで支援を募ったところ、1日で支援額が1000万円を突破した。
同店は12月14日、クラウドファンディングサービス「キャンプファイヤー」で「創業83年、慶應義塾大学の学生食堂『山食』を救ってください」というプロジェクトを開始。
翌15日には1000人以上からの支援があり、目標額500万円を突破し1046万円に達した。山食は1937年の戦前に創業した食堂だ。プロジェクトページによると、新型コロナウイルスの影響で大学の授業がオンラインになり、売上は昨年比8割減だという。
「これまでの83年間が、途絶えてしまうのは寂しい」
学食を運営する「山食」の谷村忠雄代表は、キャンプファイヤーのサイト上で、「山食の経営を立て直すため、お力添えをいただきたく初めてこのプロジェクトを立ち上げました」と説明する。
経営を続けるために銀行から借入を行ったが、今の状態が続けば資金は半年以内に尽き、これ以上の借り入れも難しい。また、例年であれば1か月に5~6件、年間で60~70件のパーティーがあったが、今年は0件だ。
「一つ一つの利益が少ない代わりにできる限り安い値段で、たくさんの方に食べてもらう。というのが、山食のやり方です。コロナ禍では、それが叶いません」
現在、代表を含め10人が働いているが、「1人も解雇することなく、どうにかして持ちこたえたい」「これまでの83年間が、途絶えてしまうのは寂しい」という思いのもと、クラウドファンディングを立ち上げた。
500円の支援だとリターンは500円分の食券。カツカレーが530円なので、そこで使えそうだ。1万円だと「レトルト山食カレー」3パックと非売品の「山食カレー皿」、3万円だと「レトルト山食カレー」3パック、「山食カレー皿」に加えて、「山食ボールペン」「山食×野球部コラボタオル」の4点セット。5万円だと3万円のリターンに加え山食内に支援者として名前が掲載される。
名物は「山食カレー」 塾員思い出の味
谷村代表は1955年に集団就職で山食に入社。初代代表から「後を次いで欲しい」といわれ、1990年に三代目代表に就任した。今年で勤続65年になるという。ラグビー部、アメリカンフットボール部、サッカー部、自転車部など体育会各部の合宿の食事を作るため、山中湖の山荘にも出張していたという。
「山食は『歴史と伝統』を守りながら塾生にとって『第二の家庭』でありたいと思っております。そして大盛でも、超大盛でも。野菜増しでも。メニューに無いものでも。塾生のわがままにできる限り応えていきたいと思っております」
と述べ、「これからも塾生やOB・OGのみなさんをはじめ、多くの方から愛される山食を目指し存続させていきたいと思います。どうか応援のほど、よろしくお願い申し上げます」と呼びかけた。
同大OBの30代男性は「山食は本当に昔ながらの学食といった感じで、とにかく量が多い。看板メニューの『山食カレー』が懐かしいですね。慶應には学食はいくつもあるけど、古い食堂の雰囲気が好きな人とか、体育会系など愛校心が強い人が利用しているイメージ」と語る。塾生に愛される食堂のようだ。