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田中精密工業が自社開発のAIで生産計画の属人化を解消 更なるコスト削減を目指す

田中精密工業 事業開発部事業開発ブロックリーダーの久世健二さん(左)と
取締役執行役員の山田勝也さん(右)(同社提供。以下同じ)

自動車部品メーカーの田中精密工業株式会社が、製造業の枠を超えた挑戦を始めている。

自動車産業を取り巻く環境が刻々と変化していくなかで、自動車やオートバイの部品製造を主要事業としている田中精密工業は、生産効率の向上を実現するAIを開発した。

持ち前の技術力を駆使して開発するAIとは一体どんなものなのか。取締役執行役員の山田勝也さん、事業開発部事業開発ブロックリーダーの久世健二さんに話を聞いた。(文:千葉郁美)

大きな岐路を迎えた自動車産業と部品メーカーの苦難

田中精密工業株式会社は昭和32年に創業以来、長年にわたり自動車部品の製造や部品の設計、販売、メンテナンスといった事業を展開し、自動車産業を支えている。富山県を拠点として県内5か所の製造工場と海外3か国にも自動車部品製造販売の拠点を置く老舗の部品メーカーだ。

昨今、自動車業界は環境負荷低減に向けて電動化や環境対応型エンジンへの移行が進んでいる。さらには衝突防止システムや自動運転など、自動車に求められる価値の多様化が加速する一方で、自動車部品の製造を主要事業とする田中精密工業への影響は大きい。

「昨今の情勢を鑑みるに、部品メーカーとして自動車産業に一本足打法で取り組んでいくことは難しいと感じています。品質を保持しながら、製造コストの削減を実現していくことに課題感があり、経営の安定を図る上でもリスクが大きいと考えました」(山田さん)

また、製造する部品が多品種少量生産に変わってきたことも部品メーカーとして苦慮するところだ。生産する部品が多品種にわたれば、それだけ生産計画が複雑化するという。

「生産計画は大変緻密な作業で、設備がどんな部品を製造できるのかであるとか、製造時の人員配置、納期などあらゆることを考慮して計画を立てなければなりません。そのため難易度の高い作業で、ある種”職人の仕事”。感覚的なところもあり、属人化されているのも課題の一つでした」(久世さん)

複雑な生産計画を担うAIを開発

開発の様子

自動車業界の変化に伴い生まれた管理費用の増大や生産計画の担い手不足という課題だが、田中精密工業は生産計画を担うAIを自社開発することで課題解決を図った。

「(前述のとおり)生産計画には考慮することが膨大にありますが、すべては計算でありコンピューターにもできることです」(久世さん)

生産計画のAI開発は2017年にスタートし、2020年までの約3年で完成。部品製造設備に取り付けたIoT機器が取得するデータを再利用し、納品計画や設備の稼働情報なども考慮することで在庫や設備の稼働率を最適化した生産計画をAIが立案する。こうして管理コストの削減に成功、製造する部品の品質を損なうこともない。

自動車部品メーカーとAIの開発。一見接点のない2つの事業だが、田中精密工業はIoT機器の開発やAI開発に積極的だ。これまでにも生産情報を取得する「IoTゲートウェイ」や、部品の画像検査を担うAIの開発を自社で行ってきた実績がある。

「生産計画には感覚的な部分があるといいましたが、そうした部分のアルゴリズムには当社が70年以上にわたり培ってきたモノづくりのノウハウが詰まっています」(山田さん)

培ったノウハウを生かし新たなビジネスへ

開発したAI技術は自社の生産計画を担うだけにとどまらない。自動車部品製造を担う田中精密工業のグループ会社で、設備の開発・製造販売を行う「タナカエンジニアリング」において製品化し販売される予定だ。

「タナカエンジニアリングではすでに生産設備や自動化・省力化装置を販売し、実績を上げています。さらにAI技術やIoT技術を付加価値として加え、売上規模の拡大を目指しています」(山田さん)

日本のモノづくりを支えてきた田中精密工業のノウハウ。AIという新たな分野で、その価値が発揮されるに違いない。

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