「いや、いくらなんでも、攻めすぎでしょ!」と叫びたくなるような博物館が、岡山県津山市にある。その名も「つやま自然のふしぎ館」という。(文:昼間たかし)
そのヤバさが、ついにツイッター民に広く知られてしまった。「つやま自然のふしぎ館はかなり特殊な博物館で入館すると初代館長のホルマリン漬けが出迎えてくれる」という写真付きの感想ツイートが、3万回以上も拡散されたのだ。
この博物館、実際に訪れてみると、切符売り場の傍らには「世界の珍奇動物絶滅危惧種館内多数」のキャッチコピー。入り口には恐竜が戦っている壁画。そして、巨大なセントバーナード犬の剥製がある。そして、一歩中に入ると、そこにいるのが初代館長だ。
いや、正確には死後に解剖されて展示物になった初代館長が……である。(館長の展示画像は関連記事から)
館内は薬品臭がすごい
この博物館の目玉は膨大な数の動物の剥製と標本だが、中でも珍しいのが人間の臓器のホルマリン漬けだ。この標本は、なんと、博物館をつくった森本慶三氏(1875〜1964)のもの。なんでも「自分の臓器を展示して」という遺言があったのだという。
森本氏は、津山市の豪商の家に生まれた。内村鑑三の影響でキリストに入信、私財を投じて「津山基督教図書館」「津山基督教図書館高等学校」などを設立した。
そんな彼が「目で見て神の創造物である生物の素晴らしさを知ってほしい」と設立したのが、この博物館だ。情熱がすごすぎたのか、最後は自分も展示物になった。
館内の「岡山県知事展示許可済」と記された解説には、
人体内ぞう諸器官の実物標本展示は我国の博物館に於ては最初の事であり岡山大学医学部の御好意に対し深く敬意を表す次第であります。
と格調高く記されている。
館内は、どこにいっても薬品の匂いが漂っている……のだが、筆者は小学生の遠足に来た時、館内で弁当を食べた。その日は急な大雨が降り、特別なはからいで館内での飲食を許可されたと記憶しているのだが、よくも人体標本とホルマリンの薬品の匂いのなかで食事をしたものだ。みんなかなり無頓着だったな。
ん、シロクマ vs アザラシ?
さて、他の展示物もかなりキワドイ。食べた魚が詰まって死んだ巨大サンショウウオとか、さすがに写真だけだが「ヒグマに食べられた人」の展示まである。
シロクマの標本も気になる。なぜかファイティングポーズで、アザラシの標本と対になるような形で展示されている。きっと野生の雰囲気を再現しようとしたのだと思うが、見ているこっちの脳内には「え、戦うの?」しか浮かばない。
などなど、不便な場所だが、「ここでしか見られない」展示ばかり。もしチャンスがあったら一度は足を踏み入れてほしい。