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「データ利活用で卓越した海運会社に」商船三井が生み出す新しい風

執行役員でCDOの木村隆助さん

日本三大海運会社の1つとして名を馳せる株式会社商船三井は、デジタル技術を活用することで安全運航の徹底やサービス向上、環境対応を積極的に実施し、選ばれる企業となるべく邁進する。

世界中で運航する800隻以上の船。収集する膨大なデータはどのような活路を描くのか。新たな「商船三井」の価値創造を強力に推し進める、執行役員でCDOの木村隆助さんに話を聞いた。

サイロ化したシステムを刷新へ。データの収集・整理も注力。

――御社はICTを活用し、顧客向け情報提供プラットフォーム「Lighthouse」の運営および機能強化をはじめとした顧客満足度向上施策の実施や、安全運航を支えるツール開発等が評価され、東京証券取引所と経済産業省が選定する2021年「DX認定事業者」に選ばれました。
テクノロジーによる変革に積極的に取り組まれているのが伺えますが、社内の業務改革という側面ではいかがでしょうか。

商船三井は130年以上の歴史をもつ会社で、約800隻の船を運航し、グループ社員を8,500人程抱えています。社内には船の運航に関わる基幹システムをはじめとした各種システムがあるわけですが、そうした業務システムを「移行して改善しよう」といった発想がこれまではあまりありませんでした。業務がシステム化されたのは大体1970年代あたりですから約50年、自社で手組み構築してきたシステムを活用してきましたが、2022年4月に用船・運航・会計業務のパッケージシステムを導入します。
プロジェクト自体は2016年に発足しまして、Fit to Standardでシステムを導入していこうという方向性で進めてきました。

――システムのサイロ化や老朽化といった課題は、御社に限らず多くの企業が頭を抱えている問題ですね。御社独自の背景や課題があったのでしょうか。

プロジェクトを進めるにあたり、大きな課題となっているのは業務や情報の属人化です。
我々のような古くからある企業にはありがちですが、古来より前任者から受け継がれている仕事のやり方というのがあり、それを担当者が個々のPCで管理し、全体で共有できる形になっていないといったことが起き得ます。こうした面も、パッケージ化されたシステムを導入することで解消したいと考えています。

また、膨大なデータがあるにもかかわらず、生かしきれていない点も重要な課題です。
当社のようなビジネスは、お客様と情報をしっかり共有してこそ成り立つわけですが、情報があちこちに分散していれば、全体のデータを俯瞰しながら顧客とのビジネスの現状やこの先がどうなるのか?を共有することができません。

船の運航の面においても、当然ながらデータが重要な役割を担っています。1隻が1日に使う燃料は平均約50トン、これを金額にすると、1隻あたり年間9億円程の燃料費がかかります。800隻以上の船がありますから、合計するとすごい額になります。コストの観点だけではなく、温室効果ガス排出削減という環境負荷低減の観点からも、燃費節減がどれだけ実現しているのかをデータを用いて正確に観測していくことは重要です。

社内データの利活用への理解を深める「フェーズ0」を完了した

――燃費節減には非常に注力されているかと思いますが、そのためにもデータを利活用できる環境整備は重要に感じます。

そうですね。属人化やサイロ化された状況を変えるべく、2020年4月に私がCDOに着任しました。着任当初はITツールを導入してリモートワークができる環境を整備するといったところから始まり、本質的なデータ活用に向けては、2021年2月から社内横断の「商船三井(MOL) DXプロジェクト」を開始しました。

プロジェクトではまず、社内横断で全社員がビジネスインテリジェンスツール(大量に蓄積しているデータから必要な情報を集約し、ひと目でわかるように分析するツール)を使えるようにしました。全社員が同じダッシュボードを共有して、自分たちの事業評価やマーケット分析、意思決定も一部できるようにしました。
まずはこうした形でデータベースやデータの活用に馴染んでもらい、並行して現状どんな課題が存在してどう手を打っていくか?を考察してきました。これを当社デジタル変革の「フェーズ0」とし、2022年4月から「フェーズ1」に駒を進めていきます。具体的には、第一段階で全社のデジタル基盤を整備し、社員のリテラシーの更なる底上げを図り、第二段階で基幹システムに沿って業務プロセスの可視化と整理を行い、自動化を実現。さらに第三段階では、構造変革とデジタルでの新たなビジネス価値を創出していく。それを経て、デジタル技術利活用で卓越した海運会社となることを目指していきます。

データの利活用で商船三井に「新しい風」が吹き込む

――スムーズなシステム移行に向けた準備を着実に進めておられるのですね。一方で、収集したデータはどのように利活用される可能性があるのでしょうか。

船には非常に多くのデータがあります。例えば、機関の回転数だとか燃焼効率、航行速度・航行予定と実際の航跡もありますし、海流や波の高さ、風向きなど、運航にあたりさまざまなデータが生成されています。
そうしたデータを社内で分析する以外にも、データを活用して新しい何かを生み出そうとする企業と連携したり、社内の「社員提案制度」から新たな事業化のアイディアが生まれることも期待しています。

実際に、水中ドローンを扱うスタートアップ企業との連携では、先方の持つ海中の画像と、我々の持つ港湾情報のデータベースを掛け合わせることで、これまで以上に精巧でリアルな3D情報を作成することができるようになったり、海外の港で船体に取水した海水のデータを海洋生物の研究などに関わるベンチャー企業に提供するといったようにデータが活用されています。
データの使い方については、そういった方々と出会うまではそのような発想はなかったので、面白いなと思うところです。

――世界中を渡航する船が持つデータは多くの可能性を秘めているのですね。他企業様との連携のほか、「社員提案制度」があるとのことでした。どのような取り組みなのでしょうか。

社員による新規事業提案制度の「MOL Incubation Bridge(MIB)」は、社員が自らの能力を存分に発揮し、主体的にチャレンジできる場を提供すると共に、既存の枠にとらわれない事業やサービスのアイディアの受け皿となることを目的として、2019年9月より導入されました。その名の通りで新規事業を提案できる制度で、設立から3年目にしてすでに3つの事業が実現化し、すでに走り出しています。

選定されるにあたっては、我々の海運という事業、そして「安全」「環境」とのシナジーがあるような発案であること、そして当然財務的なリターンが見込めるか?も大事なポイントとなります。すでに走っている3つの事業の発案者たちはまだ30代、それぞれ突破力を求められる仕事ですが、やる気満々で進めています。こうしたMIBというチャレンジングな舞台、そしてDXによって変わっていく流れというのは、若い世代の社員への刺激になっていると感じています。

強いリード組織を構築し実現力を持って挑む

――膨大かつ有益な情報量を持つ御社と、尖ったアイデアを持つ人や企業とが掛け合わされることで生まれる、新たな価値に期待が高まります。今後の展望をお聞かせください。

まず社内の業務変革を強く推し進めるには、強いリード組織が必要です。今後は、CDO直轄でスピーディーにデジタルを利活用して会社を変えていけるような組織を作っていく必要があると考えています。

そして、当然ながら重要になるのは人です。旧態依然とした方法に染められてしまってはデジタルでリードしようという変革は起こせませんので、社員の意識から変えていかなければならないという思いから全社員の思考変革を進めていきます。

DXの取り組みは、これからの会社の形を作っていくための最も重要な取り組みであるといっても過言ではありません。今後もグループ一丸となってデジタル技術をしっかりと活用した会社の変革に尽力していきます。

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